焦ることはない!相場は明日もやっている
ゴールドマン・サックスの資産配分調査責任者であるクリスチャン・ミューラーグリスマンは、「米利下げの織り込みと利回り曲線(イールドカーブ)に大きな変化が生じている。これは潜在的な景気後退リスクを示唆する傾向がある」と述べた。
米国のイールドカーブとS&P500の推移

米国の10年国債と3カ月国債のイールドカーブ

出所:Bravos Research
S&P500種指数と歴史的なイベント【我々は2000年代初頭にハイテク・バブルを救済したが、その結果は住宅危機として返ってきた。
私たちは2008年に住宅を救済したが、その結果は通貨危機か国債危機のどちらかになるだろう。心理的には、FRB(米連邦準備制度理事会)が介入して株価が再び上昇する日が来るかもしれないが、平均的な投資家は苦難の日々を送っている。多くの低・中流家庭は、多額の金融資産すら持っておらず、むしろ純資産がマイナスになっている。このような層への打撃は、これまで経験したことのないようなものになるだろう。
間違ってはならないのは、私たちは岩と岩の間にはさまれて身動きがとれなくなっており、出口はスタグフレーションしかないということだ。これは1970年代以来一度も経験したことのないことであり、現在の金融政策と財政レイアウトは、1970年代の人々には認識できないほど歪んでいる。
FRBには、スタグフレーションの環境下で金利を引き上げるという選択肢はない。経済と市場にとって敗北が約束された運命をすでに封印していると私は思う。
それではどうなるのか?インフレに対抗するために金利を引き上げてデフレ不況を迎えるか、インフレを野放しにするか、どちらかに行き詰まる。このような状況に陥ったのは近代史上初めてのことだ。そしてそれ以上に恐ろしいのは、市場参加者や平均的なアメリカ市民が、これまでで最も甘やかされ、経済に関する悪いニュースに対処する能力が低いという事実だ】
(『次の暴落は私たちの脆弱な脳を破壊する』 2月24日 ゼロヘッジ)

出所:リアルインベストメントアドバイス
株式市場では本質的に、大きな強気相場の後には必然的に大きな弱気相場がやってくる。これは過去の例から明らかだ。
トランプ関税はインフレを招き、関税が上がれば米国の長期金利は上がるはずだとマーケットの解説では言われている。実際には、株式市場に不確実性をもたらし、機関投資家が株を売って債券を買っているため、長期金利は下がっている。これはまさにトランプ政権が短期的に10兆ドルの国債借り換えコストを下げるために望んでいることだ。
米国10年国債金利(日足)

出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
長期投資の成否は、どこで相場をスタートするか(大きな底値をとらえられるか)に尽きる!
焦ることはない。相場は明日もやっている。
ゴールドは安全資産、そして保険として購入されている
債券王ジェフリー・ガンドラックが「Jeffrey Gundlach with Tony Robbins on Societal Transformations and Market Valuations」というダブルラインキャピタルのYouTube動画で4thターニング(第四の転換)の話をしている。筆者はガンドラックがダブルラインで独立する以前から彼のレポートを読んでいるが、とても良いトレーダーだ。
ガンドラックは、「ゴールドは安全資産として、そして保険として購入されている」と指摘している。
また、S&P500種指数と一部の企業への利益集中を具体的に挙げながら、市場の高いバリュエーションについて論じている。ガンドラックはまた、富の不平等や、今後数年で制度が大きく変わる可能性など、より広範な社会問題についても言及している。彼は、「私たちは社会の変革期にいて、それはもはや仮説ですらなくなりつつある」と述べている。
ゴールド(日足)

出所:楽天MT4・石原順インディケーター
ガンドラックは、懸念と楽観を織り交ぜながら、大きな変化に備え、危機の時代にチャンスを見いだすことの重要性を強調する。政府支出を批判し、ドルの将来について語り、デジタル通貨についての考えを述べる。ガンドラックは最後に、個人的な動機と将来への展望を語り、現在の経済的な難局を乗り切り、より強くなることを望んでいることを表明した。
「今後、数年間、この4thターニングの暗い、部分的に不明瞭な、多元的なクライマックスに向けて加速していく中で、私たち一人一人が本当に重要なことを見極める必要がある」
(ジェフリー・ガンドラック)
「もしあなたが第4の転換という概念をご存知なら、私たちが今、その転換期を迎えていることを否定するのは難しい。第4の転換とは、長い間存在してきた権力構造や制度が崩壊し、解体され、やがて新しい秩序に取って代わられる社会的サイクルのことである。現在、私たちは現状の解体が加速しているのを目の当たりにしている。それが良いことであれ悪いことであれ、投資家にとっては実存的な問題である」
(MATASIIのマーケット・アナリスト、ゴードン・ロング)
【レイ・ダリオは、歴史と長期債務サイクルのメカニズムを理解することが、ブリッジウォーターを成功に導き、2008年の金融危機を乗り切り、その直後のユーロ圏債務危機で利益を上げるのに役立ったと主張している。
ダリオにとって、市場に対する最終的な理解につながったのは、1971年に当時のニクソン米大統領が、ゴールドとドルの交換停止という驚きの決定を下したことだった。
それから50年以上がたった今、ダリオは市場に同様の衝撃が起こる可能性を見ている。つまり、米国がある時点で米国債の大量保有者に制裁を科し、利払いを停止したり、あるいは債務再編(債務返済繰延べとコラリート)を試みたりする可能性だ。
「米国政府は債務再編を行うと発表し、それをデフォルトとは言わないだろう」とダリオは述べた。
「1970年代や1930年代の状況に非常に似ている。
つまり、ゴールドやその他の実物資産との比較において、全ての通貨が下落するだろう」と説明した】(『ダリオ氏、米国が債務危機による「心臓発作」に見舞われるリスク警告』 3月3日 ブルームバーグ)
これからは富の相対的な保全が資産運用の目的となるはずだ。多くの人が望んでいるにもかかわらず、誰も市場や経済のサイクルを止めることはできない。人為的な介入によってサイクルを遅らせたり伸ばしたりすることはできても、いずれは元に戻る。このような厳しい環境下では、資産の保全を優先するべきだろう。
ポートフォリオの大幅なドローダウン(運用成績の落ち込み)を防ぐための管理とは、下げ相場の被害を避けるために、上げ相場の一部を放棄することを意味する。ポートフォリオが壊滅的な損失を被った場合、ポートフォリオはいつか元の状態に戻るかもしれないが、その間に失った貴重な時間は決して取り戻すことはできない。
3月5日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」
3月5日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」は、愛宕伸康さん(楽天証券経済研究所所長兼チーフエコノミスト)をゲストにお招きして、「不景気の物価高」「スタグフレーションの恐怖」「トランプの経済プランニングとドル安の整合性」「地政学リスクと不確実性」いうテーマで、愛宕さんのホンネを聞いてみました。ぜひ、ご覧ください。




ラジオNIKKEIの番組ホームページ から出演者の資料がダウンロードできるので、投資の参考にしていただきたい。

3月5日:楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー

セミナーのお知らせ:3月22日(土)FX・CFDアカデミーin 福岡
FX・CFDアカデミーの福岡セミナーに登壇いたします。
11:10 - 12:00 「マールアラーゴ合意と円高」
講師:石原 順
ぜひ、ご参加ください。

(石原 順)