FRBのベージュブックでは、「不透明感」という表現が89回使われていました。これは新型コロナの時期やリーマンショックの時の2倍の回数です。
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著者の荒地 潤が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 「ドル反発は「絶好の売り」チャンス?」 」
今日のレンジ予測
[本日のドル/円]↑上値メドは143.40円↓下値メドは142.00円トランプ関税:欧州で最も影響が大きいのはドイツ。薬品、自動車の50%が米国向け
ユーロ:ECB理事「米関税の影響を緩和するにはユーロを1.00以下まで安くする」
貿易戦争:米、中国ネットワーク機器メーカーTP-Linkルーターの使用禁止を検討。サイバー攻撃と関連
中立金利:米中立金利が2.5~4.0%ならば、利下げしてFF金利4.375%でも「引締め的水準」
FRB:バー理事、更迭。2023年の米地銀の連続破綻の監督責任で
前日の市況
4月24日(木曜)のドル/円相場の終値は142.57円。前日終値比0.91円の「円高」だった。

2025年82営業日目は143.38円からスタート。高値は東京時間朝の143.39円。前日とは逆に、まったく上げることなく円高に向かった。23日はトランプ大統領がパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長を解任するつもりはないとの発言や、対中関税を現行の半分近くまで引き下げる考えを示したことがリスクオンのドル高となった。
ところがこの日はトランプ大統領がパウエル議長を再び批判したり、中国が米国との関税交渉を否定したりするなど逆の材料によってドル安となった。日米財務相会談では「米国側から為替水準の話は出なかった」との報道でやや買い戻された。24時間のレンジ幅は1.12円。
FRBが今週公表した米地区連銀経済報告(ベージュブック)では、「不透明感」という表現が89回使われた。これは新型コロナの時期やリーマンショックの時の2倍の回数である。関税引き下げ(あるいは延期)など、米経済にとって「良いニュース」が出てもドル買いの反応が鈍くなっている。マーケットがドルに対する信頼を失ってきているサインである
2025年 主要指標 終値

今日の為替ウォーキング Don't Let Me Be Misunderstood
今日の一言
違う結果を期待するなら、同じことを繰り返していてはダメである
Don't Let Me Be Misunderstood
インフレか成長かFRBは4年前に、新型コロナ後の「物価上昇は一過性である」という痛恨の判断ミスをして、インフレの大暴走を招いてしまった。
リーマンショック以降、新型コロナ流行までの間、米国のインフレ率が3.0%を超えることはほとんどなかった。中国に対するトランプ関税は現行145%だが、これがたとえ50%に引き下げられたとしても、関連商品のインフレ率は20%上昇すると見積もられている。関税が無くならない限りインフレの方向は明らかだ。高止まりするか、上昇するかしかない。
FRBに課せられた、物価と成長という二つのマンデート(使命)のどちらを選ぶべきかと問われたら、優先するべき課題はインフレであることは明らかだ。FRBは、新型コロナ流行後のような失敗を再び犯すことは絶対に避けなくてはいけないのだ。
もっとも、ウォラーFRB理事は、関税による「インフレは一過性」との見解を持っている。トランプ関税の影響で米国の失業率は、今後数カ月で大幅に悪化するとみている。景気後退によってインフレが抑制されることになるから、FRBはむしろ成長を優先するべきとのスタンスだ。


今週の注目経済指標

Winners & Losers

(荒地 潤)