先週はトランプ大統領がパウエルFRB議長解任発言を一転して否定したことや米中貿易戦争が沈静化する兆しが出たことで日米ともに株価が上昇。今週はそのFRBの利下げに影響大の米国物価指標の発表や2度目の日米貿易交渉が注目されそうです。
FRB議長解任発言を一転否定で株価上昇。トランプ大統領の方針転換が相場の鍵に!
先週はトランプ大統領が米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)への露骨な介入発言を撤回したことで日米の株価がともに急反発しました。
トランプ大統領は利下げを急がない方針を示したパウエルFRB議長に対して17日(木)、「対応が遅すぎる。一刻も早く解任すべきだ」とSNSで発信。
21日(月)にも「人々は予防的利下げを求めている。(パウエルFRB議長は)大敗北者の遅すぎる男」と追撃しました。
しかし、本来、政府から独立した存在であるべき中央銀行に対するトランプ大統領の攻撃に対して米国市場は、米国株、米国債、米国ドル全てがたたき売られる「トリプル安」の米国売りで反応しました。
機関投資家が運用指針にする米国S&P500種指数は21日、前日比2.36%も急落。
米国の長期金利の指標である10年国債の利回りは一時、4.3%台から4.42%まで跳ね上がり、為替市場ではドルが売られ翌22日(火)には1ドル=139円80銭台までドル安円高が進みました。
市場のこの反応に対して、22日(火)の記者会見でトランプ大統領はパウエルFRB議長の解任を「一度も検討していない。
これを受けて急反発した先週のS&P500は前週末比4.59%高まで大幅上昇。
日経平均株価(225種)も21日(月)には前日比450円(1.3%)安と急落しましたが、ドル/円相場が1ドル=143円60銭台まで円安方向に戻したこともあり、週間では975円(2.8%)高の3万5,705円まで回復しました。
その場の怒りや自分を強く見せたい衝動で過激な発言をし、市場が米国トリプル安で反応するとくるりと前言を撤回するトランプ大統領の行動を先読みすることが、現状の相場展開を予測する鍵になりそうです。
今週は米国で重要な物価・雇用指標が相次いで発表され、日米企業の2025年1-3月期決算も本格化します。
米国では30日(水)に最重要物価指標の3月個人消費支出の価格指数(PCEデフレーター)、5月2日(金)には4月の雇用統計が発表されます。
トランプ関税の影響で景気・雇用指標が悪化し、物価指標が上昇に転じると、いよいよトランプ不況に対する警戒感が広がり、相場が急落する恐れもあるでしょう。
一方、これまでの米国景気指標は悪化傾向にあるものの、トランプ関税前の駆け込み需要で3月の小売売上高が約2年ぶりの大幅な伸びになるなど好結果の指標もあります。
米国の景気後退がそれほど鮮明にならない場合、日米ともに好決算を発表した企業の株が素直に買われる業績相場が続く可能性もあります。
28日(月)の日経平均は前営業日終値の257円高の3万5,962円でスタート。終値3万5,839円をつけ、3カ月ぶりの4日続伸となりました。
先週:円安や米中貿易戦争沈静化の兆しで株価上昇!今期増益計画のニデックが買われる!
先週もトランプ大統領の発言に翻弄(ほんろう)された1週間でしたが、強硬なトランプ関税に方針転換の兆しが出たことが株価反発の原動力になりました。
24日(木)(現地時間)には、米国のベッセント財務長官と日本の加藤勝信財務相がワシントンで会談し、米国側から為替レートに対する具体的な水準や目標についての言及がなかったことで円安が進みました。
日本では円安で収益向上が見込める非鉄金属、電気機器、輸送用機器など外需株が上昇をけん引しました。
23日(水)には米国が中国に対する関税を現行の145%から全体で見て50~65%まで引き下げるという報道も流れました。
トランプ大統領は「それは彼ら(中国)次第だ。米国は長年にわたってむしり取られてきた」と発言しています。
25日(金)には中国が米国への125%の報復関税を半導体製品など一部の品目で免除する意向という報道も流れました。
ただトランプ大統領が中国との関税交渉が進行中と主張しているのに対して、中国外務省は「いかなる協議や交渉も行っていない」と反論するなど、米中貿易戦争の行方は依然、不透明です。
トランプ大統領が対中関税の方針転換をにおわせたことで、米国では中国に汎用半導体を輸出するAI(人工知能)関連の エヌビディア(NVDA) が前週末比9.38%高となるなど、巨大IT企業の株価が上昇。
22日(火)には電気自動車の テスラ(TSLA) の2025年1-3月期の営業利益が前年同期比66%減で5年ぶりの低水準だったことが発表されました。
トランプ政権の政府効率化省を共同創業者のイーロン・マスク氏が指揮していることで世界中に不買運動が広がっていることが元凶です。
しかし、マスク氏が今後はテスラの経営により多くの時間を充てることを表明すると、テスラ株は前週末比18.1%も急反発しました。
24日(木)にはグーグルの親会社 アルファベット(GOOG) が2025年1-3月期の決算を発表。
AIを導入した検索広告事業が好調なこともあり、売上高、利益ともに予想を上回り、前週比6.84%上昇しました。
日本では米中貿易戦争の沈静化期待から中国関連の機械株が上昇。
中国に工場自動化システムを販売する 安川電機(6506) が14.9%上昇。
23日(水)に今期2026年3月期の業績予想は米中貿易戦争の影響もあって非開示としたものの、2025年1-3月期の受注高が前期比21.9%増と好調な決算を発表した ファナック(6954) も8.0%上昇しました。
「Nintendo Switch 2」の抽選販売が活況だったことを受けて 任天堂(7974) が9.9%高、同社のゲーム機に半導体を供給する メガチップス(6875) が13.2%高となるなど任天堂関連株も盛り上がりました。
また24日(木)に2025年3月期の営業利益が市場予想をやや上回ったモーター製造大手の ニデック(6594) は17.9%も急騰。
2026年3月期の営業利益が前期比8.2%の増益になる見通しを発表したことが好感されました。
過激なトランプ関税の影響で今期2025年度の業績見通しを発表すること自体が困難です。
そんな中、ニデックのように今期の業績予想をきちんと出し、市場予想を若干下回ったものの増益予想の企業の株は、今週以降も投資家から高評価が得られそうです。
今週:2度目の日米貿易交渉や米国雇用統計、米国巨大IT企業決算で乱高下相場が落ち着く!?
今週は米国で重要な経済指標の発表が相次ぎます。
29日(火)は民間調査会社コンファレンス・ボードの4月消費者信頼感指数。
30日(水)は2025年1-3月期の米国の実質GDP(国内総生産)速報値や3月個人消費支出の価格指数(PCEデフレーター)。
米国のFRBが最重要視する食品・エネルギーを除くコアPCEデフレーターは前月比0.1%増、前年同期比2.6%増と、前月の2月から伸び率が鈍化する予想です。
来週、5月7日(水)にはトランプ大統領に利下げを急かされているFOMC(米連邦公開市場委員会)で政策金利が決定されるだけに、その決定に影響を及ぼすPCEデフレーターの結果に注目が集まりそうです。
5月1日(木)にはISM(全米供給管理協会)の4月製造業景況指数、そして2日(金)には4月の米国雇用統計も発表に。
4月の非農業部門雇用者数は前月比13.3万人増の予想です。
先週は4月24日(木)発表の3月の米国中古住宅販売件数が前月比5.9%減と3年ぶりの大幅落ち込みになるなど、米国の景気指標は着実に悪化しています。
高額な関税の税率など、単なる過激な政策や発言だけなら、市場の反応を見て撤回すれば株価も戻ります。
しかし、米国経済自体の落ち込みが本格化すると、トランプ大統領が180度方針転換したところで、すぐには回復しません。
日本時間の5月1日(木)には米国でベッセント財務長官と赤沢亮正経済再生担当相の2度目の日米貿易交渉も米国で開催されます。
トランプ大統領は「合意にとても近づいている」と発言。
交渉内容が日本側にあまりに不利なものでなく、トランプ大統領が満足や自画自賛のコメントを発表すれば、過激なトランプ関税の軌道修正が鮮明になるため、日米の株価にとって朗報です。
同じ1日には日本銀行の金融政策決定会合も終了。
トランプ関税で日本の景気の先行きが不透明なだけに、さすがに追加利上げはなく、無風に終わる可能性が高いでしょう。
今週は日米企業の決算発表も本格化します。
日本時間5月1日(木)早朝には マイクロソフト(MSFT) やフェイスブックの親会社 メタ・プラットフォームズ(META) 、日本時間2日(金)早朝には アップル(AAPL) 、 アマゾン・ドット・コム(AMZN) が決算発表。
決算内容だけでなく、今後のAI向け設備投資計画に変更がないかどうかも注目されそうです。
日本でも4月28日(月)に国際優良株の 日立製作所(6501) 、30日(水)に半導体関連株の主力・ 東京エレクトロン(8035) 、5月1日(木)の 三井物産(8031) や2日(金)の 三菱商事(8058) など大手商社が決算発表。
先週25日(金)には半導体検査装置メーカーの アドバンテスト(6857) が2026年3月期の営業利益が過去最高を更新する、頼もしい強気見通しを発表して株価も続伸しそうなだけに、今週もトランプ関税で不確実性の高まる今期2026年度の業績見通しに注目が集まりそうです。
(トウシル編集チーム)