先週のトリプル安から一転、ドル/円は反発となりましたがまだまだ不安定な市場が続いています。今週は日銀会合と米雇用統計を控え、5月のGWを前に相場が再び揺れる可能性があり、留意が必要です。
ドル/円、重い展開。日米関税交渉と日銀会合を控え相場の様子見が続く
先週は米国トリプル安からドル/円は1ドル=140円割れとなりましたが、起因となったパウエル議長の解任をトランプ大統領が否定したことから、取りあえず市場は反発しています。しかし、反発力は弱く、売りが止まった状況という様子で、まだ不安定な市場が続いています。
ドル/円は、24日の日米財務相会談で為替が議題に出なかった安心感から、一時1ドル=144円台を付けましたが、関税を巡る先行き不透明感からドル売りは根強く、28日には一瞬142円割れとなり、ドルの頭の重たい状況が続いています。
このように関税については、相互関税は90日間いったん停止となりましたが、各国との交渉の成り行き次第ではネガティブ材料としてくすぶり続けることが予想されます。25日、トランプ大統領は記者団の質問に対して、相互関税の発効を再び延期する可能性は「ないだろう」と述べています。
また、米中貿易対立については、25日、中国が一部の米製品について関税の適用除外を検討しているとの報道によって米中貿易対立の緩和期待が高まり、ドル/円の1ドル=144円台の要因となりましたが、米中協議について中国が協議自体を否定しています。
また、23日、米WSJ(ウォールストリートジャーナル紙)が「(対中関税について)145%から50~60%程度に引き下げられる可能性がある」と報じましたが、トランプ大統領は25日、「対中関税は何らかの譲歩がない限り引き下げない」と述べています。まだまだ不透明な状況が続いています。
そのような中、29日、トランプ政権は米国内で自動車を生産するメーカーに対して部品関税の負担を軽減する措置を発表しました。自動車関税軽減への期待から株は上昇しており、トランプ関税への緩和期待が高まりつつあります。
ただ、ドル/円は24日の日米財務相会談を警戒して頭が重たかったのですが、会談が終わった後も反発力は鈍い動きとなっています。
加藤勝信財務相は「米国から為替水準の目標や枠組みの話は全くなかった」と語っていますが、読売新聞は「ベッセント氏は『ドル安・円高が望ましい』と述べ、トランプ米大統領の意向に沿って為替水準への強い懸念を表明した模様だ」と報じています。
これまでも重要な日米交渉後の会見で、日米の公表内容に大きな相違があった例は多いことから、市場の警戒心は解けていないようです。
日本は5月1日に2回目となる日米関税交渉が行われる予定ですが、通商交渉にもかかわらず、この時に為替が議題になるのではないかとの警戒心からドル/円の上値を重くしているようです。また、4月30日~5月1日の日本銀行金融政策決定会合を控えていることも相場様子見になっているようです。
日銀会合では金利据置きとの見方が大勢です。展望レポートの経済見通しも成長率、物価とも下方修正の見方が多いようです。
日銀は利上げ姿勢を維持するとの見方が大勢ですが、不確実性要因が多く、さまざまなリスクがあることを認めつつも利上げ方針を維持するという微妙なコミュニケーションを取ることができるか注目です。
一方で植田和男総裁がG20の訪米時に、米国側から金利面での円安調整(利上げ)の要望があった可能性も予想され、また日本政府としても5月1日の第2回関税交渉の前に日銀が利上げ(結果として円高)することを期待していることも予想されます(圧力をかけているかどうかは分かりませんが)。
従って、100%据え置きとの見方で市場に臨まない方がよいかもしれません。また、据え置きとなっても記者会見で、日米政府を忖度(そんたく)して想定以上にタカ派的なスタンスが示されることも予想されます。
その場合、足元では日銀の利上げ期待が後退していることから金利変動幅が大きくなることも予想され、ドル/円は円高に敏感に反応することが予想されるため注意が必要です。
今週の日銀会合と米雇用統計に注目。GW相場は再び揺れ始める?
今週は日銀会合と米雇用統計に注目です。米4月雇用統計は、3月の非農業部門雇用者数+22.8万人に対して、予想は+13.3万人となっています。失業率は3月の4.2%と同じ4.2%の予想となっています。関税引き上げの中で、消費者センチメントの悪化だけでなく、実際に雇用市場が悪化していることが確認されれば、株安、ドル安が予想されるため注意が必要です。
ただ、29日の3月JOLTS(雇用動態調査)求人件数は719.2万件と前月も予想も下回りましたが、解雇件数も減少し、9カ月ぶりの低水準となったことから労働市場の堅調さが維持されているとの評価になっている点には留意する必要があります。
今週は日銀会合、米雇用統計と続いているため、いったん休止した相場の揺れも再び揺れ始めるかもしれません。ドル/円にとっては5月のGWを前にして不気味な環境といえるかもしれません。
GWは必ずしも円高が起こりやすいということではないのですが、東京市場の休場が続くため、流動性が乏しくなり、相場が振れやすくなることが予想されます。現在の相場環境では円高に振れる時の方が、値幅が大きくなるかもしれません。
不気味といえば、26日のバチカンでのトランプ・ゼレンスキー会談もいい意味で不気味な出来事でした。二人きりの会談で、しかもバチカンのサン・ピエトロ大聖堂という舞台設定の演出効果は大きいと思われます。ロシアに対する圧力かもしれませんが、もし、停戦となれば、ユーロ上昇→ユーロ/円上昇となり、ドル/円の円売りをサポートするかもしれません。
4月29日(現地時間)でトランプ大統領就任後100日となりました。しかし、その評価は急激な改革の結果、反発が高まっており、不支持率も上昇しています。この状況を打開するために、関税の柔軟対応だけでなく、外交面で成果を出すことも可能性として留意しておいた方がよいかもしれません。
(ハッサク)