三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループの2社が、前期(2025年3月期)決算および今期(2026年3月期)業績予想を発表しました。2社とも、純利益は前期が二期連続最高益で、今期三期連続最高益を予想。

また今期、五期連続増配を予定。好業績で株価割安な高配当利回り株として、買い推奨を継続します。


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著者の窪田 真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 三菱UFJ・三井住友FG「買い」。3期連続最高益、5期連続増配の予想 」


三菱UFJ・三井住友の「買い」継続

  三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306) (以下「三菱UFJ」と表記)、 三井住友フィナンシャルグループ(8316) (以下「三井住友FG」と表記)の2社が、前期(2025年3月期)決算および今期(2026年3月期)業績予想を発表しました。


 2社とも、純利益は前期が二期連続最高益で、今期三期連続最高益を予想しています。また今期、五期連続増配を予定しています。


 筆者は2019年以降、この2社を一貫して「買い推奨」してきました。その投資判断は今も変わりません。好業績で株価割安な高配当利回り株として、買い推奨を継続します。


 三菱UFJ、三井住友FG、この2社の「買い」推奨を継続する理由は以下4点です。


【1】2社とも金利上昇で利ザヤ拡大・3期連続で最高益更新の見通し

 長期金利上昇の恩恵で、2社とも預貸金利ザヤ(貸付金利と預金金利の差)が拡大し、今期(2026年3月期)の連結純利益は3期連続で最高益更新の見通しです。


【2】2社とも配当利回りの高いバリュー(割安)株であること

 2社とも近年、株価が大きく上昇しましたが、それでも現在の株価は株価収益率(PER)・株価純資産倍率(PBR)が低く、配当利回りが高いバリュー株であることに変わりません。


【3】2社とも海外事業拡大・ユニバーサルバンク経営によって、低金利でも安定的に高収益をあげるビジネスモデルが出来上がっていると考えること

 2社の近年の株価上昇は、金利上昇の恩恵を評価する動きです。ただ、2社の評価ポイントはそこだけではありません。海外展開・ユニバーサルバンク経営により、2社とも低金利でも安定的に高収益をあげるビジネスモデルが出来上がっていると判断しています。


【4】2社とも株主への利益還元に積極的であること

 2社とも、継続的に増配・自社株買いを行っていることが、高く評価できます。


2社とも最高益続く見通し

 三菱UFJ、三井住友FGが先日発表した、2025年3月期決算は好調で、過去最高益を大幅に更新しました。金利上昇の恩恵で預貸金利ザヤが拡大しました。また、持ち合い株式の売却益も拡大しました。


三菱UFJ、三井住友FGの連結純利益:2025年3月期・2026年3月期予想
三菱UFJ・三井住友FG「買い」継続。2社とも三期連続最高益、五期連続増配の予想(窪田真之)
出所:両社決算資料より楽天証券経済研究所が作成

 トランプ関税によって世界景気悪化のリスクが意識される中、両社は今期も好業績が続く見込みです。


 三井住友FGは、トランプ関税による下ぶれリスクとして、前期に900億円の*フォワードルッキング引き当てを計上、さらに今期予想は、トランプ関税影響として1,000億円の下振れを業績予想に織り込んでいます。合わせてトランプ関税リスクにより1,900億円のマイナスを織り込んだ上で、三期連続の最高益を予想しています。


*フォワードルッキング引き当て…将来起こりうる状況やイベントを合理的に予測して、債務者の信用リスクを推定し、予防的に貸倒れ引当金を計上する手法


2社とも株価割安のバリュー株

 過去3年、三菱UFJと三井住友FGは、株価が大きく上昇しました。それでもなお、株価指標で見て割安なバリュー株であることに変わりありません。


2社の株価バリュエーション:2025年5月19日時点 コード 銘柄名 株価:円 配当利回り PER:倍 PBR:倍 8306 三菱UFJ FG 1,969.5 3.6% 11.3 1.10 8316 三井住友 FG 3,467.0 3.9% 10.3 0.91 出所:両社決算資料より楽天証券経済研究所が作成。配当利回りは2026年3月期会社予想ベース1株当たり配当金(DPS)を5月19日株価で割って算出。DPSは、三菱UFJ70円、三井住友FG136円

2020年まで金利低下を嫌気して過度に売り込まれていた

 三菱UFJ、三井住友FGの株価は2021年以降、大きく上昇しましたが、それでも株価指標で見て割安です。2020年まで、金利低下を嫌気して株価が長期にわたり低迷していたからです。日本および世界の金利低下を嫌気して売り込まれていました。それが、2021年以降、世界的な金利上昇を好感して、株価が急上昇しています。


日経平均および三菱UFJ、三井住友FG株価の動き比較:2007年1月~2025年5月(19日まで)
三菱UFJ・三井住友FG「買い」継続。2社とも三期連続最高益、五期連続増配の予想(窪田真之)
出所:2007年1月末の値を100として指数化、QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 三菱UFJ、三井住友FG株とも金利低下が続いた2020年まで、日経平均株価を大幅に下回るパフォーマンスとなっていました。株式市場で「金利低下→銀行(金融業)の収益悪化」というイメージが定着しているため、金利が低下する都度、世界中で銀行株が売り込まれ、その流れで両社とも売り込まれました。


日米の長期金利(10年国債利回り)推移:2007年1月~2025年5月(19日)
三菱UFJ・三井住友FG「買い」継続。2社とも三期連続最高益、五期連続増配の予想(窪田真之)
出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 2021年以降、世界的に金利が上昇し始めると、銀行株が一斉に買われて上昇しました。日本のメガ銀行株も上昇しました。


金利が低下していた時でも高水準の利益を維持

 三菱UFJ、三井住友FGとも、金利低下期でも、安定的に高収益を稼いできました。「金利が下がると銀行の収益が悪化する」というイメージは、この2社には当てはまりません。


三菱UFJ、三井住友FGの連結純利益:2014年3月期~2026年3月期(会社予想)
三菱UFJ・三井住友FG「買い」継続。2社とも三期連続最高益、五期連続増配の予想(窪田真之)
出所:各社決算資料、QUICKより楽天証券経済研究所が作成。2026年3月期は会社予想

 上の表をご覧いただくと、「金利が下がると銀行の利益が出なくなる」という株式市場の思い込みが誤りであることが分かります。両社の連結純利益は、2019年3月期まで、長期金利がどんどん低下していく中でも安定的に高水準を保っています。


 2020年3月期と2021年3月期は、コロナ禍で信用コスト(貸倒償却および貸倒引当金繰入額)が増加したことによって利益水準がやや下がりました。それでも、「コロナ禍にもかかわらず高水準の利益を維持していた」と評価できます。


 2022年3月期、2社ともコロナ禍前の水準に利益が戻りました。三菱UFJは、2015年3月期にあげた最高益を更新しました。想定されたほど貸倒れが発生しなかったことから、貸倒引当金の戻入益が大きくなったことが貢献しました。低金利でも稼ぐメガ銀行の姿がよく表れています。2024年3月期以降、2社とも3年連続で最高益を更新する予想です。


 このように、三菱UFJと三井住友FGは、海外収益の拡大とユニバーサルバンク経営によって、低金利でも高収益を稼ぐビジネスモデルを確立していると考えています。今後、国内の長期金利の上昇が続けば、国内商業銀行業務の利益も拡大するので、さらに投資価値が高まります。


前期に続いて今期も増配

 両社とも株主への利益配分に積極的と評価できます。以下の通り、両社とも、コロナ禍で配当を据え置いた2021年3月期を除けば、安定的に増配を続けています。


三菱UFJ、三井住友FGの1株当たり配当金:2017年3月期実績~2026年3月期(会社予想)
三菱UFJ・三井住友FG「買い」継続。2社とも三期連続最高益、五期連続増配の予想(窪田真之)
出所:各社決算資料・QUICKより楽天証券経済研究所が作成、三井住友FGの配当金は、2024年10月1日の1対3株式分割を考慮して修正

 両社とも、さらに自社株買いを積極的に行っていることが高く評価できます。

ともに株主への利益配分に積極的です。


 三菱UFJは、決算発表と同時に、上限2,500億円(発行済株式総数の1.52%)の自株買いを発表しています。5月16日~7月31日の間に市場買い付けする予定としています。


 三井住友FGは、決算発表と同時に、上限1,000億円(発行済株式総数の1%)の自社株買いを発表しています。5月15日~7月31日の間に市場買い付けする予定としています。


 最後に告知事項および著書紹介です。


【告知事項】みずほフィナンシャルグループは投資判断の対象外


 楽天証券株式会社は、 みずほフィナンシャルグループ(8411) の子会社であるみずほ証券株式会社の出資(49.0%)を受けている。そのため、みずほフィナンシャルグループは投資判断の対象外。筆者は三井住友FG株を1万5,000株保有。


 株式投資のテクニカル分析・ファンダメンタルズ分析をしっかり勉強したい方に、私の著書を紹介します。ダイヤモンド社より、株価チャートの読み方をトレーニングする「株トレ」(黄色の本)と、決算書の見方など学ぶ「株トレ ファンダメンタルズ編」(水色の本)が出版されています。どちらも一問一答形式で株式投資の基礎を学ぶ内容です。


「2000億円超を運用した伝説のファンドマネジャーの株トレ」
「2000億円超を運用した伝説のファンドマネジャーの株トレ ファンダメンタルズ編」


三菱UFJ・三井住友FG「買い」継続。2社とも三期連続最高益、五期連続増配の予想(窪田真之)
「株トレ」 シリーズ2点 表紙


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(窪田 真之)

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