5月雇用統計の予想と注目ポイント

 米労働省労働統計局(BLS)が6月6日に発表する雇用統計では、5月の非農業部門雇用者数(NFP)の市場予想は、13.0万人増加となっています。前回4月の17.7万人増に比べて減る見込みです。


 失業率の予想は4.2%で、4月から横ばいです。

昨年5月以降、失業率は4.0%から4.3%の狭いレンジ内で推移しています。


 平均時給は、前月比で0.3%増の予想です。4月の0.2%増よりも若干上昇する見込みです。一方、前年同月比では3.7%増の予想で、4月の実績である3.8%増からやや減速の見通しです。


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非農業部門雇用者数と失業率の推移

 今回の雇用統計の結果は、米連邦準備制度理事会(FRB)が今後の金融政策を決定するための重要な判断材料になります。先月5月6~7日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利であるFF金利が4.25~4.50%で据え置かれました。


 6月会合での政策変更も見送る公算が大きく、金利先物市場では、6月FOMCでの据え置きの可能性が約80%、0.25%の利下げの可能性が約20%と予想しています。


 FRBは金融政策について、「データ依存型」のアプローチを強調しています。トランプ関税の影響が明確に数字になって表れるのは、6月以降になるとみられていますが、今回の雇用統計の結果が予想よりも弱ければ、9月以降の利下げペースが加速するとの予想が強まることになります。


 逆に雇用統計が引き続き強いままであれば、FRBはさらに利下げを遅らせることを検討するでしょう。


 FRBは、米経済の「不確実性がさらに上昇している」と判断して、インフレと成長の両方のリスクを注視する「様子見モード」に入っています。ただ、現状ではインフレ動向をより重視していると思われ、インフレ圧力再燃の兆候が見えた場合は、雇用データが多少弱くても利下げに慎重になると考えられます。


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平均労働賃金の推移(%前月比)

雇用統計三つのシナリオ

 今回の雇用統計は、FRBが金融政策を決定する上での重要な判断材料となります。現時点では雇用市場が底堅さを維持していることから、FRBは急激な政策変更よりも慎重なアプローチを取る可能性が高いのですが、雇用統計の結果次第では、政策スタンスが変わる可能性もあります。


 特に賃金上昇率と失業率のバランスは、インフレと経済成長のトレードオフを見極める上で重要な指標となるでしょう。


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平均労働賃金の推移(%前年比)

シナリオ1:雇用統計が予想を上回る場合


 NFPが市場予想(13.0万人増)を大きく上回り、失業率が4.2%を下回り、また賃金上昇率が予想を上回る場合は、雇用市場が堅調で、インフレ上昇リスクは抑制されていることなので、FRBは引き続き利下げに慎重な姿勢を示し、6月FOMCの利下げ可能性はほぼゼロになるでしょう。年内の利下げ回数も1回から2回程度に限定される可能性が高まります。


シナリオ2:雇用統計が予想通りの場合


 NFPが市場予想通り(13.0万人増)、失業率が4.2%、賃金上昇率が予想通りの場合、現在の見通しがほぼ維持され、6月の利下げ可能性は低いままですが、9月以降の利下げ予想は維持されるでしょう。この場合、年内2回以上の利下げが実施される可能性があります。


シナリオ3:雇用統計が予想を下回る場合


 NFPが市場予想を大きく下回り(例:5万人増以下)、失業率が4.3%を超えて上昇、賃金上昇率が予想を下回る場合、雇用市場の冷え込みが鮮明になったとして、6月FOMCでも利下げが検討されることになるでしょう。この場合、年内利下げ回数は大きく増え、4回の利下げが実施される可能性もあります。


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米非農業部門雇用者数(NFP)、米失業率、平均労働賃金(前月比)、平均労働賃金(前年比)

(荒地 潤)

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