6月12日のドル/円終値は143.52円で、トランプ大統領の発言やFRBの利下げ期待がドル安を促進しました。中東情勢が円買いを後押し、ドル離れが始まる中でユーロは約4年ぶりの高値をつけました。
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著者の荒地 潤が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 「ドル/円下落、142円台。トランプ関税と地政学リスクでドル売られる」 」
今日のレンジ予測
[本日のドル/円]↑上値メドは144.55円↓下値メドは142.85円トランプ関税:最も重要な貿易相手国が持つ米国のイメージを永久に傷つけた
米農産物輸出:米国の農製品輸出の5割は、カナダ・メキシコ・中国向け
米雇用市場:FRBはJOLTS求人件数のデータを重視
BOE利下げ:ベイリーBOE総裁、追加利下げに前向き
原油:新規の掘削の採算がとれるには、原油価格が84ドル以上になる必要
前日の市況
6月12日(木)のドル/円相場の終値は143.52円。前日比1.07円「円高」で1日のレンジ幅は1.36円。
2025年117営業日目は144.46円からスタートして、東京時間朝の144.54円がこの日の高値となった。米中貿易交渉の枠組み合意でマーケットのセンチメントが上向きになったのも束の間で、トランプ大統領が交渉相手国に対して「一方的な関税率を設定する」と発言したことがドルの上値を重くした。
ドル/円は144円台を下抜けると、夜遅くに6月5日以来の安値となる143.19円までドル安に動いた。
今週発表された米国のインフレ指標である5月消費者物価指数(CPI)と卸売物価指数(PPI)は、ともに予想を下回った。懸念するようなインフレ上昇は起きていないとして米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ期待が高まり、ドルが売られた。また、イスラエルがイランの核施設を攻撃する準備を完了したと報じられて、中東の地政学リスクが高まっていることも、円買い要因になっている。
レジスタンス:
148.45円 05/13
147.67円 05/14
146.75円 05/15
145.46円 06/11
144.54円 06/12
サポート:
143.19円 06/12
142.52円 06/05
142.37円 06/03
142.11円 05/27
141.97円 04/29
FRBとは対照的に、欧州中央銀行(ECB)利下げを次回7月の会合で終了する考えを持っていることを背景にユーロ買いが強まっている。
ラガルドECB総裁は、「今がユーロの国際的な役割を強化する『絶好の機会』であり、これまで米国のみに許されていた特権をユーロ圏も享受できる可能性がある」と強気の考えを示している。

2025年 主要指標終値

今日の為替ウォーキング I Should Be So Lucky
今日の一言
賢者が損切りしている時に愚者は祈っている
I Should Be So Lucky
米国の5月のCPIは、前年同月比で2.4%上昇した。増加率は4カ月ぶりの拡大となったが、マーケットの予測はわずかながら下回る結果となった。変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数は、前年同月比で2.8%上昇した。こちらも予想値をわずかに下回る結果となった。
トランプ関税による物価の影響は限定的で、インフレに大きな影響を与えていないとの楽観的な意見が増える中で、FRBの年内複数回の利下げ観測も再浮上している。
もっとも、今出回っているのは駆け込み輸入で関税発動前に米国に到着していた商品で、在庫がなくなる7月以降から本格的なCPIが始まるとの指摘がある。

来週行われる米連邦公開市場委員会(FOMC)では金利を据え置く可能性が高い。FRBとしては、さらに追加データを収集して慎重に金融政策を調整したいようだ。CPIは予想に届かなかったが、5月雇用統計は堅調だったこともあり、現時点のデータでは、FRBが利下げに踏み切るための明確な根拠が不足しているようだ。

今週の注目経済指標

(荒地 潤)