ドルを売れ！円は…買うべき？

　6月26日のドル/円は、米利下げ期待と、次期FRB議長の人事を巡る不透明感がドル売りを誘発し、ドル/円は円高に動いた。

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今日のレンジ予測

ドル：米国デフォルトが金融市場最大のリスクに
米債券：FRBのデータ重視政策が米債券市場を不安定にさせている
トランプ関税：メキシコとカナダが、インドと中国の抜け道になっている
FRB：NY連銀総裁「FRBは利下げ余地ある」
ポンド：BOE利下げはあと2回で終了

前日の市況

　6月26日（木曜）のドル/円相場の終値は、前日比0.86円「円高」の144.41円。1日のレンジ幅は1.51円だった。

　イラン・イスラエル戦争をきっかけに、マーケットのポジションはドルロングに転換した。ところが「有事のドル買い」は盛り上がらずに終了。「ドルロングはうまくいかない」となって、マーケットは再びポジションをドルショートに切り替えている。

　2025年127営業日目は145.14円からスタート。東京時間朝から上値が重く、145.26円がこの日の高値。高値は3営業日連続で切り下がった。

　米連邦準備制度理事会（FRB）のパウエル議長は「労働市場の減速」が確認された場合、「早期利下げの可能性もある」と米連邦公開市場委員会（FOMC）後の記者会見で述べたが、この日の雇用関連のデータは悪く、 7月利下げ観測が強まった。ドルが広範に売られる中でドル/円は夜の初めごろには145円台を維持できなくなって144.66円まで下落した。

出所：MarketSpeed FXより、楽天証券作成

　この日のマーケットは「ドル売り」にフォーカスした。

　トランプ大統領は、次期FRB議長に利下げに積極的な「ハト派」候補者を選ぶと考えられている。トランプ大統領はFRBに利下げを強く求めていることから、早期利下げによる金利差急縮小の可能性からドルが売られている。また、FRBの金融政策の独立性への懸念も高まっている。ドルの信認低下は中期的なドル安を引き起こす可能性がある。

レジスタンス：
148.45円　05/13
148.03円　06/23
146.18円　06/24
145.95円　06/25
145.26円　06/26

サポート：
143.75円　06/26
143.65円　06/16
142.80円　06/13
142.52円　06/05
142.37円　06/03

2025年 主要指標 終値

出所：楽天証券作成

今日の為替ウォーキング Another Day In Paradise

今日の一言

言い訳を聞かされる立場になっても、怒ってはいけない。こんなセリフを言ったのが自分でなくてよかったと思っていればいい

Another Day In Paradise

　現在の欧州の安全保障は、北大西洋条約機構（NATO）を基軸とする、米国をリーダーとした軍事同盟、集団的安全保障である。

　しかし、トランプ大統領には「自由な民主主義を守る」とか、「国際法を順守する」といった理想とは全く無縁だ。トランプ大統領が持っているのは、さまざまな取引（ディール）によって米国（だけ）を豊かにするというビジネスマン的発想だけである。

　トランプ政権が欧州への安全保障コミットメントを後退させ、ロシア寄りになっていることに危機感を抱いた欧州は、軍備拡張のための財政拡大へとかじを切った。欧州連合（EU）のフォンデアライエン委員長は今年3月、最大8,000億ユーロ（125兆円）規模の資金を欧州防衛力強化のために投入する計画を発表した。これが「欧州再軍備計画」である。

　今週NATO加盟国はオランダ・ハーグで首脳会議を開催して重要な決定を行った。ロシアによる安全保障上の脅威を念頭に、防衛費を国内総生産（GDP）比で現在の2％から5％に引き上げる新たな目標に合意したのだ。

　トランプ大統領には、欧州諸国に防衛費を増やすよう圧力をかけることで、米国の軍事的役割を軽減する意図がある。防衛費増加は、欧州の財政赤字や増税への懸念を生むが、しかしマイナス面ばかりではない。欧州加盟国の防衛産業への投資が増えることで、新技術の開発や雇用の促進が期待されている。

　この新たな地政学的均衡の始まりによって、ドルは長期的な魅力を損なう可能性がある。米国の防衛費はGDPの約3.4％を占める重要な産業だが、欧州の「脱米国」は、米国からの武器調達の必要性の減少につながる。

　欧州の投資家が、米国でのより高いリターンを放棄する犠牲を払ってでも、欧州（自国）に投資しようとする、新「金融経済ナショナリズム」の動きが起きようとしているのだ。これまでグローバル資本を引きつけてきたドル資産にとっての不安定化要因となり、また代替基軸通貨としてのユーロの地位を高めることになるだろう。

今週の注目経済指標

出所：楽天証券作成

（荒地 潤）