iDeCoは一人一つしか口座開設できないからこそ、金融機関選びは難しいことです。そこで今回は、運営管理機関の口座管理手数料、投資信託の運用管理費用の水準など金融機関を選ぶ際のチェックポイントをご紹介します。
iDeCoは運営管理機関を一つだけ、選ぶ
NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)やiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)の口座開設をするとき、どこの証券会社にするか誰もが真剣に悩むことだと思います。
NISA口座は一人一つしか開設することができませんし、iDeCoも、一人一つしか口座開設することができません(企業型の確定拠出年金とiDeCoを併存することは可能)。
NISAはマイナンバーで本人確認するように、iDeCoも基礎年金番号で本人確認され(国民年金基金連合会がチェックする)、複数口座開設はできないようになっています。
となると、どこの金融機関でiDeCoをスタートするかは真剣に決める必要があります。iDeCoは国の年金制度の一部ですが、民間の裁量の余地が大きく、どこのiDeCoにするかで違いが出てきます(例えば、国民年金基金や小規模企業共済は、どこの金融機関で手続きしても同じ仕組みに加入することになる)。
あとになって他の金融機関に切り替えることも可能ですが、手続き上のブランクが数カ月生じることがあります。できれば長くつきあえる金融機関を最初に選びたいところです。
今回は、三つの切り口で、金融機関(運営管理機関)をどこにするかを考えていきます。
iDeCoの運営管理機関選び、三つの切り口
1.運営管理機関の口座管理手数料
iDeCoは、NISAと大きく違う点があります。それは、国民年金基金連合会と資産管理を担う信託銀行が、口座管理手数料を徴収する仕組みになっていることです。
国民年金基金連合会 月105円(掛金を納めない場合は取らない)
信託銀行 月66円
このとき、運営管理機関も上乗せして手数料を取るかどうか、またいくら取るかは各社の裁量の余地があります。
iDeCoが始まる以前は口座管理手数料を徴収する金融機関が多かったのですが、iDeCoの普及以降は、手数料を無料とする金融機関が増えました。
原則として考えれば、同等のサービスが提供されている場合は、口座管理手数料無料であるほうが資産形成上有利ということになります。
参考) 楽天証券 iDeCoの手数料
2.運用したい「投資対象」の有無
あなたがもし具体的な投資対象をイメージされているのであれば、その投資対象がiDeCoの商品ラインアップに含まれているかを確認しましょう。
従来、主要な投資対象とその選択肢は「国内株」「外国株」「国内債券」「外国債券」、そして四つのアセットクラスに同時に投資できるバランス型ファンドでした。しかし近年は商品トレンドが若干変化しています。
まず「国内外株式」という考え方です。一つの投資信託で国内株、外国株を同時に対象とする運用、いわゆる「オールカントリー系」が近年人気となっています。今までは、二つの投資信託を自分なりの組み合わせで保有するポートフォリオを考えるのがセオリーでしたが、今では一本で済みます。こうした運用を希望する場合、該当の投資信託が含まれている必要があります。
次に、「新興国」です。古くからある「外国株」という投資対象は、実は先進国のみを範囲としており、新興国が含まれていませんでした。「外国株(先進国・新興国両方)」、あるいは「外国株(新興国のみ)」といった投資対象を希望するとき、そうした投資信託が含まれているかがチェックポイントになります。
これらは、単独の投資信託としてではなく、バランス型ファンドの投資対象として数割ほど含まれていることもありますので、併せて確認してみましょう。
また、「ターゲットイヤー型」を希望する場合も、該当商品が設定されている必要があります。
これは、自分のリタイア年齢と違いゴールを設定したターゲットイヤーの商品を選ぶと、「若い頃は積極的な資産運用を行い、年齢に応じてリスクを抑えたポートフォリオにシフト、リタイア時に安全資産を中心とする運用に切り替えておく」という、面倒な作業を投資信託に任せることができます。
米国の401(k)プランでは主力商品となっており、行動ファイナンスの見地からも自動的にこれを社員に購入してもらう会社が多くなっています(本人が好きな投資信託を選び直すことは自由です)。
そのほか、オルタナティブ投資(従来の投資対象と異なる投資対象で運用する手法)として、不動産投資信託(REIT)、コモディティ(ゴールドなど)といった投資対象を含むかどうかも、自身の投資希望を踏まえてチェックしてみるといいでしょう。
3.投資信託の運用管理費用の水準
「iDeCo1.0」の競争がスタートしたとき、各社が取り組んだことの一つに信託報酬の引き下げがあります。かつて、iDeCoが始まる以前の時代においては
「口座管理手数料ゼロ&投資信託の信託報酬高め」
「口座管理手数料を取る&投資信託の信託報酬低め」
のような戦略で各社取り組んでいたものです。
これに対し、iDeCoの普及以降は「口座管理手数料ゼロ&投資信託の信託報酬低め」を掲げる運営管理機関が多数登場しています。
ここまでの切り口で、運営管理機関の候補が数社絞り込まれてきたら、「日本株のインデックスファンド」「バランス型投資信託(積極運用のもので比べる)」「外国株(あるいは国内外株)のインデックスファンド」を比較し、手数料の水準を調べてみてください。
特にインデックスファンドは、運用成績の差が生じにくいため、結果として信託報酬の差が投資信託ごとの成績の差になることがしばしばです。
また、近年の手数料引き下げ競争を踏まえた手数料水準で、商品ラインアップが構成されているかも確認してみてください。例えば、20年前の水準であれば国内株インデックスファンドは年0.7%でも割安でしたが、今では割高の部類といえます。
■運営管理機関が絞れたら、ぜひ口座開設手続きを!
iDeCoの口座開設手続きは少々面倒なところがあり、口座開設を見送ってしまう人がいます。
「どこの金融機関でiDeCoを始めるか」さえ決められれば、iDeCo口座開設のハードルで残されているのは「手続きのハードル」だけとなっています。
運営管理機関の比較検討に悩んだら、NPO法人DC・iDeCo協会の「iDeCoナビ」なども利用してみるといいでしょう。
運営管理機関が決まったら、すぐに自分の決めた運営管理機関にアクセス、口座開設資料請求のステップに進んでほしいと思います。
次回は、口座開設の書類の書き方、最初の手続きについて説明したいと思います。
(山崎 俊輔)