外国人投資家による日本株買いで日経平均の上昇が続いています。自己資本と比較して割安な日本株で自社株買いが急増していること、財政・金融の大盤振る舞いが続き非製造業を中心に日本企業の景況指数が良好であることなどが評価されています。
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著者の窪田 真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 日経平均年末4万4000円予想維持、外国人が日本株を買う理由 」
外国人買いで日経平均上昇続く
先週(営業日8月4~8日)の日経平均株価は1週間で1,020円上昇して4万1,820円となりました。
日経平均週足:2024年1月4日~2025年8月8日まで

日経平均の上昇をけん引しているのは、外国人投資家の買いです。
日経平均と外国人投資家の売買動向(売越・買越):2025年3月24日~8月8日(外国人売買動向は8月1日まで)


外国人投資家から見ると、日本株は世界景気敏感株です。トランプ関税ショックで世界不況になる不安が高まった4月には、外国人の売りで日経平均が急落しました。その後、トランプ関税が緩和され、世界景気ソフトランディングの見通しが広がると、外国人は日本株を買い戻しました。
外国人投資家が日本株を買うのは、世界景気の見通しが変化したことだけが理由ではありません。自己資本対比で割安な日本株で、自社株買いが急増していることから、欧米年金基金、ソブリンウェルスファンドなどが、日本株の組み入れを増やしているようです。
日経平均、年末4万4,000円の予想維持
以下、昨年末に私が作成した2025年の日経平均予想と、これまでの実際の動きを比較したチャートをご覧ください。
2025年の日経平均予想(2024年末作成)と、実際の動き

昨年末、私は2025年の日経平均は、「年初、トランプ関税ショックで3万7,000円まで下がるが、年末には世界景気ソフトランディングを受けて4万4,000円へ上昇する」と予想しました。大きな流れとしては、私の想定通りに進んでいると考えています。
年末、日経平均が4万4,000円へ上昇する予想を維持します。
外国人投資家はなぜ日本株を買うのか?
米国が内向きの国となり、米国株に投資する魅力がやや低下する中、外国人投資家はグローバルポートフォリオの中で、ドイツ株、香港株、日本株などの組み入れを増やしてきています。
外国人投資家から見た日本株の魅力

日本株は、財務良好、収益が安定的にもかかわらず株価純資産倍率(PBR)1倍を割るなど、株価割安の銘柄が多数あります。自己資本対比で割安な日本株で、自社株買いが急増していることが、外国人投資家が評価する重要ポイントです。
また、日本で財政・金融の大盤振る舞いが続いていることも注目されています。米国は財政・金融とも一時的に引き締めになっている中、財政・金融とも景気刺激的で、景況が相対的に良好な日本株の組み入れを引き上げています。
日本株が自己資本対比で割安であることを、不動産業を例にとって説明します。
賃貸不動産の含み益上位4社の含み益推移:2013年3月~2025年3月

ところが、不動産業の株価は長期的に低迷しています。
日経平均と東証不動産業株価指数の比較:2012年末~2025年8月8日

賃貸不動産の含み益上位10社の実質PBR:2025年8月8日時点

不動産業だけでなく、日本株は全産業にわたり、自己資本対比で割安な株が多数あります。そこで、自社株買いが急増していることが、外国人投資家を引き寄せる要因となっています。
日本は異次元緩和・財政拡大が続いており、財政・金融とも景気に刺激的です。財政・金融ともに一時的に引き締めとなっている米国とは対照的です。
日本の総合インフレ率と長期(10年)金利、実質金利の推移:1975年12月~2025年6月

結果として、景況指数で見ると、日本は米国よりも相対的に景況が良好です。
日銀短観DIと米国ISM景況指数の推移:2021年1月~2025年7月

業種別DI:2025年6月の日銀短観

日本では、トランプ関税の影響を受けにくい情報サービス、不動産、宿泊飲食サービスなどの景況指数が非常に高くなっています。
日本株の投資判断
日本株は割安で長期的な上昇余地は大きいと判断しています。ただし、トランプ関税ショックはまだ終わっていません。日米合意では、日本に対する相互関税・自動車関税ともに15%となるはずですが、確かに実行されるか不透明です。
日本株はこれからも、急落・急騰を繰り返しながら上昇していくと考えられます。時間分散しながら割安な日本株を買い増ししていくことが、長期の資産形成に寄与すると考えます。
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(窪田 真之)