積極的な株主還元が強く要請されていることもあり、優待株の中にも配当利回りが5%超に達する銘柄が続出しています。優待はあくまで「おまけ」として、高配当利回りで売上高の拡大が続く9月優待株を厳選。
優待は「おまけ」で高配当、好業績重視の優待株を検索する方法
優待株は、優待取得に半年~1年の継続保有条件があることも多く、毎年贈られる優待品を楽しみにしながら気長に長期投資するのが基本です。
せっかく長期保有するなら、株主優待だけでなく配当利回りが高い高配当優待株に投資したいもの。
最近は株主還元策の強化が上場企業の使命となっている面もあり、配当利回りが5%を超える高配当優待株も増えています。
そこで楽天証券の銘柄検索ソフト「スーパースクリーナー」を使い、「詳細検索項目」の欄で「過去3年平均売上高成長率(予)(%)」を2%以上に設定。過去2年分の売上高と今期の予想売上高を用いて算出した1年平均の売上高成長率が2%以上の好業績企業に絞った上で、「配当利回り(予)(%)」を3%以上に設定。
業績面でも成長している高配当株をまず抽出しました。
その上で、楽天証券の「株主優待検索」で抽出企業が9月優待株であるかをチェック。単に配当利回りが高いだけでなく、業績もよく、優待の内容もそこそこ魅力的な銘柄を選びました。
株主優待株投資では、毎年の株主配当を得ることをメインの目的に、あくまで株主優待は「おまけ」という考え方もあります。そこで配当利回りが高い順に高配当・好業績な優待株を紹介します。
No.1は医療素材が新たな成長源で株主配当大盤振る舞いの グンゼ(3002)
好業績かつ高配当な優待株No.1には、肌着など繊維メーカーの グンゼ(3002) を選びました。
同社の3年平均の売上高成長率は2.54%と低いものの、今期2026年3月期の予想配当利回りが5.74%※に達する超高配当株です。
※予想配当利回りは2025年8月8日の株価をもとに計算。
優待内容は、9月末に100株保有でグンゼ公式通販「グンゼストア」で使えるクーポン1,000円分の贈呈です。グンゼストアには下着やパジャマなどが幅広くラインアップされているので、利用に困ることはありません。
3年以上継続保有で2,000円分、5年以上で3,000円分にクーポンが増額されます。
また9月・3月末株主に通販カタログ商品の30%割引購入特典も贈られます。
グンゼは紳士肌着で国内シェアトップ企業ですが、最近の業績をけん引しているのは人工皮膚などのメディカル事業や自動車資材用ミシン糸、機能性プラスチックフィルム、シート、チューブといった産業素材分野です。
今期2026年3月期は肌着などアパレル分野の構造改革で最終減益予想ですが、近年はメディカル、機能性分野の成長で増収・営業増益が続いています。
さらに2025年5月には株主資本配当率(DOE)を4%以上、連結自己資本利益率(ROE)が8%以上になるまで還元性向100%超となる株主還元(特別配当や自社株式取得)を実施するという、「大盤振る舞い」といっていい積極的な株主還元策を発表しました。
そのため、前期の配当は前々期比118.5円増配となる1株当たり195円、今期はさらに21円増配となる216円配当を予定しており、配当利回りが大きく跳ね上がりました。
株価もこれを好感して2025年4月安値2,283円から8月には4,025円の高値まで急騰しています。
ただ、株価純資産倍率(PBR)はいまだ1.11倍と低く、前期終了時点のROEは増配打ち止めの基準となる8%を大きく下回る5.3%に過ぎないため、今後も増配が続く可能性が高いでしょう。
人工皮膚などメディカル事業の成長を楽しみに、積極的な株主還元が続く間は保有を続けてみるのもいいかもしれません。
権利付き最終月:3月・9月
株価:3,760円
配当金:216円(2026年3月期予想)
優待発生株数:100株以上
優待内容:(9月のみ)「グンゼストア」で使えるクーポン1,000円分。株式の保有数と保有年数に応じて贈呈数が増加
その他条件:9月・3月末に通販カタログ商品の30%割引購入特典
最新情報は 企業HP からご確認ください
2. VTHD(7593)
第2位はホンダ、日産車の新車を中心に自動車販売を行うディーラー大手の VTホールディングス(7593) 。
同社の今期2026年3月期の配当予想は前期と同じ1株当たり24円ではあるものの、ここ数年は利益面で停滞が続き株価が横ばいのため、配当利回りは5.04%に達しています。
そんなVTHDの優待内容は、9月末に100株以上保有で一律に新車・中古車購入時利用優待券3万円分や車検時利用優待券1万円分、レンタカー利用割引券(一般料金表より20%割引他)、キーパーLABOサービス利用20%割引券が各1枚というもの。
同社で車を購入したり車検などのサービスを利用したりする際の優待に限られているので、使い勝手は悪くなります。
ただ、5%を超える高い配当利回りや3年平均の売上高成長率が8.97%と高い点は魅力。利益面は微減益が続いているものの、今期の予想営業利益は過去最高レベルに達する予定です。
また2028年3月期にROE12%以上、配当性向40%以上を経営目標に掲げて積極的な株主還元を行っている点も魅力です。
株価は2021年以降、400~500円台で横ばい推移。PBR0.81倍、株価収益率(PER)8.2倍と非常に割安な水準で放置されています。
業績の安定性や買収や合併(M&A)による成長性を考えれば、これ以上の大きな下げは想定しづらく、配当利回り5%超の高配当を長期間、得られる可能性が高そうです。
権利付き最終月:9月
株価:476円
配当金:11円(2026年3月期予想)
優待発生株数:100株以上
優待内容:下記4種類の優待券を贈呈。
新車・中古車購入時利用優待券(3万円分1枚)/車検時利用優待券(1万円分1枚)/レンタカー利用割引券(一般料金20%他5枚)/キーパーLABOサービス利用割引券(20%割引1枚)
その他条件:-
最新情報は 企業HP からご確認ください
3. 日本製鉄(5401)
9月の高配当・好業績優待株3位は、2025年6月18日にトランプ大統領のお墨付きをもらって米国USスチール(X)の買収を完了した 日本製鉄(5401) です。
今期2026年3月期の株主配当は減配予想ですが、それでも予想配当利回りは4.02%に達する高配当株です。
同社の株主優待は9月・3月末に1,000株(投資金額約298万5,000円)以上保有で工場見学会に招待(抽選)他という非常に取得するハードルが高く、内容もあまり魅力的ではないものです。
そのため、同社への投資はあくまで配当や株価の値上がり益重視で考えるべきでしょう。
そんな同社はトランプ関税による自動車向け鋼材の需要減や軟調な海外市況もあり、2025年8月1日に今期の業績を減収、赤字転落に下方修正しました。
これを受けて、株価は下落しましたがすぐに反発。トランプ関税の発動でつけた安値2,650円から2,985円まで戻しています。
やはり、USスチール買収で、米国トランプ政権が鉄鋼輸入に課した25%の高額関税を払わずに米国内での売上成長が見込めること、またPBR0.63倍ですでに超割安圏にあることが、株価の下支え役になっているようです。
USスチール買収に続いて、8月に入ってからは鉄鋼炉用耐火レンガ大手の連結子会社・ 黒崎播磨(5352) の株式公開買付(TOB)を発表するなど、同社は構造改革にまい進中です。
今後、世界屈指の規模と競争力を持つ鉄鋼メーカーにレベルアップすれば、株価の反転上昇に期待できるかもしれません。
権利付き最終月:3月・9月
株価:2,985円
配当金:12円(2026年3月期予想)
優待発生株数:1,000株以上
優待内容:(3月・9月)工場見学会への招待(抽選)
その他条件:(3月のみ)経営概況説明会への招待(抽選)
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4. 平和(6412)
4位は配当利回りが3.70%に達する 平和(6412) 。平和はパチンコ、パチスロ機メーカー大手として有名ですが、アコーディア・ゴルフ、PGMなど国内ゴルフ場大手を傘下に置く、世界最大のゴルフ場保有会社でもあります。
9月・3月末に200株(投資金額約43万2,000円)保有で、同社傘下のゴルフ場、練習場で平日や指定月の土日祝日の料金1,000円分として利用できる株主優待券2枚が贈呈されます。
同社は2024年12月のアコーディア・ゴルフの買収などで3年平均の売上高成長率が44.38%に急増するなど、今期2026年3月期は売上高も営業利益も前期比2倍予想と企業規模が倍増します。
今後は高収益率のパチンコ機メーカーとしてだけでなく、ゴルフ場運営の不動産企業へと変貌を遂げていきそうです。
株価は買収の決まった2024年12月の高値2,527円から現在は2,160円台と小幅に下落して推移しています。
ただ、PBR0.86倍、PER9.2倍という株価の割安さを考えると、これ以上の下値不安はあまりないといえるでしょう。
ここ数年ずっと1株当たり80円に据え置かれた株主配当の増額など株主還元策の強化や5.4%台と低いROE引き上げなど株主価値の向上に期待したいところです。
権利付き最終月:3月・9月
株価:2,160円
配当金:40円(2026年3月期予想)
優待発生株数:200株以上
優待内容:グループ会社が運営するゴルフ場および練習場で利用できる株主優待券(1,000円分2枚)。株式の保有数に応じて贈呈数が増加
その他条件:-
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5. 東急不動産HD(3289)
第5位は東急系の不動産会社、 東急不動産ホールディングス(3289) 。
同社は連続増配が続いており、今期2026年3月期の予想配当利回りは3.61%に達します。
同社の株主優待は、9月・3月末に100株以上保有で「ホテルハーヴェスト」や「東急ステイ」など同社のリゾート施設や都市型ホテルを優待料金で利用できる割引利用券(冊子)の贈呈です。
取得条件が厳しいですが、3月末に500株(投資金額約58万2,000円)を3年以上継続保有すると、全国各地のグルメや同社グループ施設の利用券(金券)などを株主向けウェブサイトで選べる株主優待ポイント2,000ポイントが贈呈されます。
同社は東京都心に「Shibuya Sakura Stage」や「COERU(コエル)」ブランドのオフィスビルを多数保有し、その賃料値上げや保有ホテル「東急ステイ」のインバウンド(訪日外国人)需要で業績絶好調が続いています。
今期も前期同様、最高益の更新が続く見込みで、株価上昇にもかかわらず好業績による連続増配で3.61%の高配当利回りを維持している点が大きな魅力です。
また2028年3月期までは配当性向35%以上かつ減配を行わない累進配当を継続することを表明しており、株価もこれを好感して、2024年3月高値1,266.5円の突破を狙う1,164円まで上昇しています。
権利付き最終月:3月・9月
株価:1,164円
配当金:21円(2026年3月期予想)
優待発生株数:100株以上
優待内容:グループ関連施設を優待料金で利用できる割引利用券(冊子)。
その他条件:500株以上保有でJR東日本グループ施設を優待料金にて利用できる「コラボ株主優待券」を追加。
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配当利回り3%超で好業績!魅力的な優待銘柄は他にも
配当利回りは3%台と多少低くはなるものの、好業績が続き株価も割安なため、下値不安も少なく、株主優待も魅力的で、安心して長期保有を続けられる高配当・好業績優待株は他にもたくさんあります。
9月優待株の人気No.1銘柄で約2.3万円という少額資金から投資可能な ソフトバンク(9434) や高配当株として非常に有名な海運大手の 商船三井(9104) の他に、比較的地味ながら優待も魅力的で業績も安定的に推移している、とっておきの9月優待株2銘柄も紹介します。
優待も魅力的で長期保有に最適な好業績・高配当優待株!
銘柄名 購入金額(100株) 配当利回り
(2025年3月期予想) 優待内容 ソフトバンク(9434) 2万3,440円 3.67% 携帯キャリア大手のソフトバンクの優待は9月・3月末に100株以上を1年以上継続保有で電子決済アプリ「PayPay」で利用できるPayPayマネーライト1,000円分贈呈。たった2.3万円ほどの少額投資で1年間に2,000円分という投資効果もさることながら、同社は今期配当利回りが3.67%に達する高配当株。さらに今後は法人向けクラウド事業や人工知能(AI)関連サービスが成長源になりそうで、お得な優待、高配当、高成長と三拍子そろった超優良株。 商船三井(9104) 48万9,200円 3.58% 海運大手の商船三井の優待は100株保有で9月・3月末にクルーズ旅行代金10%割引券2枚。9月末にフェリー「さんふらわあ」5,000円分割引券1枚。3月末に300株(投資金額約146万7,600円)を2年以上継続保有でカタログギフト3,000円相当。同社は8月1日に今期2026年3月期業績の上方修正と株主配当の増額修正を発表。トランプ関税の影響などで、前期から185円減配と配当金額が半減予想ということもあり、株価は上昇しなかったものの、PBR0.67倍、PER8.4倍という超割安水準のため下がるリスクも少なそう。 あらた (2733) 32万1,500円 3.48% ドラッグストア向けなど日用品卸で首位クラスのあらた。
※9月末優待は300株以上保有が条件 3.33% 引っ越し業界首位。3月末に100株以上保有で、岩手県産の米「銀河のしずく」5kg、QUOカード2,000円分などから選択。9月末に関しては300株(投資金額約88万1,700円)以上保有で3月末と同じ優待内容を贈呈。来年2026年9月末以降は1年以上の継続保有が条件になり、300株以上3年以上継続保有の9月末優待の内容が拡充される。同社は順調な増収増益が続き、配当性向35%以上を掲げ株主還元を積極化。今期も1円増配の1株当たり98円配当予定。株価も5年以上完全に上抜けできていない3,000円の壁突破に向けて上昇中。 ※最低購入金額は2025年8月8日の終値で計算。
(トウシル編集チーム)