日経平均株価やTOPIXが史上最高値を更新する強い展開となっていますが、短期的な過熱感も意識されています。投資家が「乗り遅れるな」と積極的に買っているようですが、こうした相場で気を付けることがあります。


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日本株が好調、来期の期待感を先取りも

 2025年の夏は、商いを伴って日経平均株価、東証株価指数(TOPIX)が史上最高値を更新するなど「夏枯れ」とは程遠い相場展開となっています。外国人投資家が、世界的に出遅れていた日本株を買っているようです。その要因として、来期である2026年度業績への期待感が挙げられます。


 お盆も過ぎたことから、2025年4-6月期決算がほぼ出そろいました。 ソフトバンクグループ(9984) が市場予想を大幅に上回る最終黒字転換を果たしたほか、 フジクラ(5803) も好決算を発表したことで、両銘柄は決算発表後、買い優勢となりました。


 一方、 村田製作所(6981) は、スマートフォン向け電子部品で低価格帯の製品が増えたことで採算が悪化し、純利益は前年同期比25.1%減と2年ぶりの減益で着地しました。ところが、村田製作所は決算発表直後こそ5%超下落しましたが、売り一巡後は下げ幅を縮小し、翌日の7月31日からは買いの勢いが強まり3月以来の2,400円台まで買われました。


 村田製作所は2026年3月期通期も減収減益見通しですので、積極的な買いは入れにくい内容でした。それでも投資家が買った背景に「今期がダメでも来期は大丈夫」という前向きな考えが挙げられます。


投資家心理「乗り遅れる恐怖」

 通常、来期業績を材料にし始める時期は、7-9月期決算が出そろった11月ごろですので、今年は3カ月ほど早く投資家が動いている印象です。投資家の多くは「FOMO」が強く意識されているようです。


 FOMOは「Fear Of Missing Out」の頭文字で「乗り遅れる恐怖」を意味します。インターネット上で誕生したスラングで、新しい情報についていけないと、世の中から置き去りにされたように感じる焦燥感を指します。株価が上昇し始めた際の「収益機会を逃したくない」という投資家心理と似ていることから、市場関係者が使うようになりました。


 FOMO相場になると、「われもわれも」といった熱量が強い相場展開になりますので商いは膨らみます。期待感が先行しますので、自然と株価収益率(PER)は高くなります。ただ、冷静な投資判断が難しくなることから、ネガティブなニュースが伝わった際、売りが殺到し下落の値幅が大きくなるケースがありますので注意は必要です。


浮かれがちな相場展開、足元の業績が好調な企業に注目を

 こういった状況を考慮しますと、来期業績に対する期待感先行で買われている銘柄よりは、足元の業績動向に関心を向けたいところです。分かりやすく表現しますと、「2年ぶりの減益」となった村田製作所ではなくソフトバンクグループのように「黒字転換」などポジティブな変化が見られた銘柄を注目するということです。


 期待感が先行し、やや「浮かれがち」な相場展開の中、「黒字転換」や「市場予想上振れ」「通期予想に対する高進捗(しんちょく)」など業績にポジティブな変化が見られた銘柄は確かな買いが入り続けると想定します。


銘柄名 証券コード 株価(円)
(8月19日終値) 特色 LIFULL 2120 232 構造改革が奏功し当期利益は大幅な黒字転換 システムインテグレータ 3826 438 経常利益の通期進捗率は過去平均を大幅に上回る ユニプレス 5949 1,151 通期業績予想の上方修正期待高まる シャープ 6753 862.9 コスト削減、円高恩恵などが寄与し業績改善 ハピネット 7552 6,510 第1四半期純利益が高進捗で上方修正期待は強い

LIFULL<2120>

 不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S(ライフルホームズ)」を展開しています。8月13日に発表した2024年10月-2025年6月期の売上収益は前年同期比7%増の210.5億円、営業利益は23%増の30億円、親会社株主に帰属する当期損益は44億円の黒字(前年同期は0.5億円の赤字)となり、当期損益は大幅な黒字転換を達成しました。


 国内の不動産情報サイト「HOME'S」関連事業が堅調に推移し、特に不動産仲介業者向けのSaaSサービスや広告収益が増加しました。また、海外事業のリストラクチャリング(再構築)が完了したことで収益性が大幅に改善。構造改革が進んだことなどから、通期業績予想も上方修正しました。


 2025年9月期配当は過去最高の7.33円(記念配当1.0円を含む)を予想するなど、好材料がそろったことなどから株価は年初来高値を更新。2015年の上場来高値1,598円をピークに株価は10年にわたって下落していました。長期的な株価のトレンド転換に期待しています。


システムインテグレータ<3826>

 企業向け業務システムに関するサービスを展開しています。7月15日に発表した2025年3-5月期の売上高は、前年同期比24.2%増の12.7億円と2ケタの増収。営業損益は9,800万円の黒字(前年同期は2,500万円の赤字)、経常損益も9,900万円の黒字に転換。通期計画4億円に対する進捗率は24%と、過去5年平均の14%を上回りました。


 AI事業では画像認識による自動化や生成AIサービスなど成長分野への投資負担が膨らみましたが、主力のERP事業が好調に推移しました。株価は年初来高値圏の430円台でもみ合っていますが、この水準を上回ってくると次の展開が期待できるでしょう。2022年以来の500円台回復の展開に注目します。


ユニプレス<5949>

 車体プレス部品などを展開しています。8月7日に発表した2025年4-6月期の売上高は、前年同期比8.2%減の747億円、営業利益は26.9%増の40億円でした。


 経常利益は12.2%減の36.4億円でしたが、通期目標80億円に対して進捗率は45%。過去5年平均の19%を大幅に上回りました。経常利益の市場コンセンサスは25億円程度でしたので、大幅な上振れとなっています。通期経常利益予想は80億円と据え置かれましたので、通期業績予想の上方修正への期待感も高まるでしょう。


シャープ<6753>

 白物家電や情報機器、通信機器など電子部品で幅広い製品を展開しています。8月8日に発表した2025年4-6月期の売上高は前年同期比11.2%減の4,724億円でした。


 一方、営業損益は153億円と黒字転換し、市場予想(約25億円)を大幅に上回りました。コスト削減、モデルミックス改善、円高恩恵などが寄与しました。経常利益は185億円、四半期純利益は272億円といずれも大幅に改善し、黒字化を達成しています。


 通期業績予想も営業利益見通しを従来の200億円から300億円と前期比で約9.7%の増益まで上方修正しました。為替など外部環境によって業績予想は変わる可能性はありますが、第1四半期で通期業績予想を上方修正したことはポジティブに捉えたいと思います。


ハピネット<7552>

 カプセル玩具自販機などを展開するおもちゃ商社です。8月7日に発表した2025年4-6月期の売上高は前年同期比16.5%増益の959億円、営業利益は同20.3%増益の39億円と増収増益を達成しました。セグメント別では、玩具事業が売上高411.5億円、利益23億円と堅調に推移したほか、Nintendo Switch関連製品の好調が影響してビデオゲーム事業もけん引しました。


 通期業績予想は据え置きましたが、純利益予想に対する第1四半期の進捗率はすでに5割弱と非常に高いことから、通期業績予想の上方修正期待は高いと考えます。


(田代 昌之)

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