8月CPIは0.4%下落、「反内巻」政策が下支えも一段の消費刺激策に期待

 中国の8月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比0.4%下落し、7月の横ばいから下向きに推移した。主に食品価格と国際石油価格の軟化によるもので、食品CPI、輸送用燃料CPIがそれぞれ4.3%、7.1%下落。

食品の中では前年同月実績の高さというベース効果もあり、生鮮食品(野菜・果物)価格が7月の9.5%から8月には15.2%へ、さらに下げ幅を広げた。


 その半面、食品・エネルギー価格を除いたコアCPIは回復基調を維持し、7月に前年同月比0.8%だった上昇率が、8月には0.9%に加速している。中国政府が「内巻」(過酷な値下げ競争など、各業界に見られる悪性競争)の是正策、いわゆる「反内巻」を本格化させたことで、8月には耐久消費財のCPIが改善。


 家電、通信機器がそれぞれ4.6%、0.8%上昇し、7月から1.8ポイント、0.7ポイント加速した。輸送機器(自動車など)CPIの下落率も7月の2.1%から、8月には1.9%に縮小している。


 サービス部門に目を向けると、8月のCPIは前年同月比0.6%上昇と、7月の0.5%を上回ったものの、前月比では横ばい。2011-24年8月の平均値(前月比0.1%上昇)を小幅に下回った。BOCIによれば、不動産不況と雇用市場の構造的要因がその背景。


 住居関連では賃貸と家庭用サービスのCPIが前月比横ばいで、2011-24年8月平均(前月比0.3%上昇)より弱い数字となった。また、旅行価格の低下もサービスCPIを押し下げた一因。7月には夏休み効果で前月比9.1%上昇したが、8月には同0.6%の下落に転じた。


 8月のCPIは全般に軟調だったが、食品・エネルギーを除くコアCPIの上昇率の加速は前向きのシグナル。

この点は一段の金融緩和の必要性・緊急性を和らげる要因となる。BOCIは耐久財価格の改善という「反内巻」政策のプラス効果に言及しながらも、消費者物価全体を持続的に改善させるためには、モノ・サービス双方の需要喚起に向けた消費促進策の強化が必要との見方だ。


 BOCIはまた、不動産価格の下落や雇用・所得への懸念を受けた賃貸価格、家庭用サービス価格の先行き不透明感を指摘。消費促進策の効果を高めるためにも、不動産市況と雇用市場の安定が肝要だとしている。


 一方、生産者物価指数(PPI)は8月に前年同月比2.9%の下落率となり、7月の3.6%から下げ幅が縮小した。前月比でも横ばいと、7月の同0.2%下落から改善した。「反内巻」政策による競争環境の緩和が背景。上流では石炭採掘や黒色金属(鉄鋼など)採掘、同圧延加工、下流では耐久財の出荷価格の改善が目立った。


 BOCIはPPIの下落率がこの先さらに縮小すると予想。PPIとCPIが足並みをそろえて徐々に改善すれば、国内総生産(GDP)デフレーター(国内経済の物価動向を示す指標の一つ:名目GDP÷実質GDP)の下落幅の縮小も期待できるとしている。


(Bank of China int.)

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