日経平均の急騰急落の裏には、常に外国人投資家の影があります。彼らの売買動向が市場を支配しています。
日本株の動きを支配する外国人投資家
本欄で繰り返しお伝えしている通り、日本株を動かしているのは外国人投資家です。外国人が買い越す月は日経平均株価が上昇し、外国人が売り越す月は日経平均が下落する傾向が30年以上、続いています。
<日経平均と外国人の売買動向(買越または売越額、株式現物と先物の合計):2024年1月4日~2025年10月2日(外国人売買動向は2025年9月26日まで)>
トランプ関税ショック後の日経平均は、外国人の買いで大幅に上昇しました。ところが、9月22~26日の週、外国人投資家は1兆2,589億円も売り越しています(株式現物と先物の合計)。外国人の買いがいったん終了する可能性が出ていると思います。
私は、短期的に反落局面を迎える可能性も想定した方が良いと思います。二つ理由があります。
【1】 外国人投資家の買いがいったん終了する可能性がある
【2】 外国人の投機筋の先物買いによって動く「裁定買い残高」が2.5兆円を超えてきた
【2】の理由について、今日のレポートで、初心者にも分かるように解説します。
投機筋の動きをくっきりと映す「裁定買い残高」の変化
投機筋(主に外国人)の動きをくっきりと映しているデータがあります。それが、東京証券取引所が発表している「裁定買い残高」の変化です。「裁定売り残高」にも表れますが、説明が複雑になり過ぎるので、今日は「裁定買い残高」を中心に説明します。
東京証券取引所が発表している「裁定買い残高」の変化に、投機筋(主に外国人)の日経平均先物「買い建て」の変化が表れます。外国人の先物買い建てが増えると裁定買い残高が増え、買い建てが減ると裁定買い残高が減ります。
2021年7月以降の日経平均と裁定買い残高の動きは、以下の通りです。
<日経平均と裁定売り残高・買い残高の推移:2021年7月5日~2025年9月30日(裁定買い残高は9月26日まで)>
日経平均の上昇下落に合わせて、裁定買い残高が増減していることが分かります。急騰急落局面では、以下【1】【2】のどちらかが起こっています。
【1】 外国人の日経平均先物買いの増加→裁定買い残高の大幅増加→日経平均急騰
【2】 外国人の日経平均先物売りの増加→裁定買い残高の大幅減少→日経平均急落
2021年7月から2023年12月までは、裁定買い残高が1.5兆円(紫の線を引いたところ)に近づくと、減少に転じることが多かったことが分かります。つまり、裁定買い残高が1.5兆円まで増加したら、日経平均反落を警戒した方が良かったことになります。
2024年に入ってから、裁定買い残高はさらに大きく増加しました。2024年以降は、裁定買い残高は2.5兆円(紫の線を引いたところ)前後まで増えると、その後、日経平均が反落することが多くなりました。投機的な先物買い建てが大きくなった時は注意が必要ということです。足元、裁定買い残高が2.5兆円を超えており、少し警戒が必要と思います。
裁定買い残高がいくらになったら反落に向かうという、特定の警戒水準はありません。過去には、買い残が3.5兆円まで増加してから反落に向かうことを繰り返したこともあります。その時々で、どこがピークとなるか異なります。
少し説明が難しくて分からなかったかもしれません。結論だけ理解してください。結論は、「日経平均の短期的な値動きは、投機筋、主に外国人の日経平均先物売買が先導している」ということ、そしてその動きが、「裁定買い残高」の変化に表れる、ということです。
日本株の投資判断
日米株価にやや過熱感があります。株価の上昇分を少し利益確定売りするのも良いと思います。外国人の買いの勢いがやや低下していて、裁定買い残高が2.5兆円を超えているので、少し利益確定するのに良いタイミングかもしれません。
ただし、株価は、上がる時は上げ過ぎ、下がる時は下げ過ぎるのが普通です。やや過熱したところから、さらに上昇が加速することもよくあります。売る場合は、一度に多く売り過ぎず、時間分散しながら少しずつ売るのが良いと思います。値上がりによって増えた分を利益確定するイメージで良いと思います。
日本株の長期的な見方は変わりません。日本株は割安で、長期的な上昇余地は大きいと考えています。これからも、急落・急騰を繰り返しながら、上昇していくと思います。
日本株の保有がほとんどない方は、少しずつ、時間分散しながら割安な日本株に投資していくことが長期の資産形成に寄与すると思います。
【ご参考】日経平均先物でトレーディングする方へ
ここから先は、先物で短期トレードする上級者の方だけお読みいただければと思います。ご参考まで、裁定買い残高、売り残高のさらに過去にさかのぼったデータをお見せします。
<日経平均と裁定売り残高・買い残高の推移:2018年1月4日~2021年7月2日>
上のグラフの見方が分かって説明できるようになれば、投機筋の動き、裁定残高の読み方は完璧です。以下、2018年以降の動きを説明します。
【1】 裁定買い残高が高水準だった2018年
上のグラフを見ていただくと分かる通り、裁定買い残高は、2018年初には3.4兆円もありました。この時は、「世界まるごと好景気」と言って良い状況でした。従って、投機筋は世界景気敏感株である日本株に強気で、日経平均先物の買い建てを大量に保有していていました。
ところが、2018年10月以降、世界景気は悪化しました。
【2】 売り残高を積み上げた後、踏み上げが起きた2019年
2019年には製造業を中心に中国や日本の景気が悪化しました。それを受けて、投機筋は日経平均先物の売り建てを増やしました。そのため、裁定売り残高が一時2兆円まで拡大しました。
ところが、2019年10月以降、世界景気回復期待が高まって世界的に株が上昇するとともに日経平均が上昇する中で、踏み上げ【注】が起こりました。日経平均先物を売り建てていた投機筋は、損失拡大を防ぐための、先物買い戻しを迫られました。その結果、裁定売り残高が減少しました。
ここで「踏み上げ」という相場の専門用語を使いましたので、説明をつけます。
【注】踏み上げ
日経平均が下落すると予想して日経平均先物の売り建てを積み上げていた投機筋(主に外国人)が、日経平均がどんどん上昇していく中で、損失拡大を防ぐために日経平均先物の買い戻しを迫られること。
【3】 コロナ・ショックで売り残高が再び急増、その後踏み上げで減少した2020年
2020年、コロナ・ショックで日経平均が暴落した2~3月、投機筋は再び日経平均先物売り建てを増やしました。裁定売り残高は一時2.6兆円近くまで増加しました。ところが、その直後から、世界的な金融緩和と景気回復を受けて日経平均は急騰、ここでも先物の踏み上げが起こりました。
【4】 裁定買い残高の増減に従って日経平均が上下した2021年
裁定売り残高は2021年になると低水準となりました。コロナからの世界景気の回復が鮮明となったので、日経平均先物をあえて売り建てしようとする投機筋はほとんどいなくなりました。2021年以降は、日経平均は、先物の買い建ての増減に従って、上下する動きとなりました。
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(窪田 真之)

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