21日に高市早苗政権が誕生するのはほぼ確実とみられています。サナエノミクスへの期待、トランプ大統領が対中100%関税を発動できなくなるTACO期待から、株価は堅調に推移。

ただ、その裏にはショック安につながる五つのリスクが潜んでいます。日本株は長期上昇期待の一方で、短期的に反落局面を迎えるリスクに注意が必要です。


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週初急落の日経平均、自維連立・TACO期待で反発

 先週(営業日10月14~17日)の日経平均株価は1週間で506円下がって4万7,582円となりました。週初、急落後に急反発、その後また急落した1週間でした。


<日経平均週足:2024年1月4日~2025年10月17日>
日経平均、反落につながる五つのリスク~高市ラリー、TACO期待の落とし穴(窪田真之)
出所:楽天証券マーケットスピードIIより作成

<先週、大荒れの日経平均振り返り>
日経平均、反落につながる五つのリスク~高市ラリー、TACO期待の落とし穴(窪田真之)
出所:楽天証券経済研究所作成

 10月10日に飛び出した二つの悪材料で、日経平均は急落必至とみられましたが、二つの悪材料ともいったん好転したことから、日経平均は底堅い動きとなりました。


 トランプ大統領は10日、「対中100%追加関税宣言」で米国株を急落させましたが、12日には「中国については心配ない、全てうまく行く」とSNSに書き込みました。それを受けて、13日の米国株は急反発しました。最も早いTACO宣言と見られます。


 トランプ大統領は、高率の関税出動を宣言しては取り消すことを繰り返してきたため、TACO(トランプはいつもビビッて引き下がる)と揶揄(やゆ)する言葉が広がりました。


 10日に発動を宣言した対中100%関税によって、米国株が大きく下がり、中国は報復予告をしました。これを見て、12日にSNSに「中国は大丈夫」と書き込んだことを受けて、今回もTACOになるとの思惑が広がりました。


高市トレードで復活した外国人買いは続くか?

 トランプ関税後の日経平均上昇をけん引しているのは、外国人投資家の買いです。


<日経平均と外国人投資家の売買動向(売越・買越、株式現物と株価指数先物の合計):2025年3月24日~10月17日(外国人売買動向は10月10日まで)>
日経平均、反落につながる五つのリスク~高市ラリー、TACO期待の落とし穴(窪田真之)
出所:QUICK・東証データより楽天証券経済研究所作成

 高市早苗氏が自民党総裁選に勝利したのは10月4日でした。その直後の高市ラリーを演出したのも外国人投資家です。

10月6~10日の週、日経平均を2,319円上昇させたのは、外国人による1兆1,847億円の買い越し(株式現物と株価指数先物の合計)でした。


 上の表をよく見ると、その直前、外国人の買いは細り、9月22~26日の週には1兆2,589億円の売り越しとなっていました。日本株を買い上げる材料が乏しくなってきていたところに飛び出したのが、「高市総裁が強いリーダーシップを発揮して資本主義の成長戦略を進める期待」でした。その期待が続くか正念場です。


 自民党と日本維新の会は17日、連立政権を見据えた政策協議を行い、基本合意しています。10月21日(火)の首相指名選挙で、自民・維新連立の高市首相が成立することが、ほぼ確実と考えられます。


 自民+維新で衆院の過半数に少し足りませんが、国民民主党やその他会派と連携していけば、かなりの政策実現性が高まると考えられます。サナエノミクス(高市早苗氏の経済政策)への期待はしばらく続くと思われます。


相場反落「五つのリスク」を警戒

 サナエノミクスへの期待の一方で、日経平均反落につながる材料は、いろいろ出ています。日米株ともテクニカルに過熱感が高まっており、悪材料が出ると調整しやすくなっていることに注意が必要です。


 これまで日経平均を上昇させてきた五つの材料が、そのまま裏を返せばリスク材料になっています。以下五つに注目しています。


【1】日米関税合意:日本に対する自動車関税・相互関税が15%に下がり強材料に
→対米5,500億ドル(約82兆円)の実行条件が米国に極めて有利な内容で、先行きトラブルになるリスクがある。


【2】米中貿易戦争:しばらく休戦状態であった。トランプ大統領が11月1日までに発動と宣言している対中100%追加関税は、単なる脅しで実際には発動されないとみられている
→対中100%追加関税が発動され、中国は報復関税を発動。米中貿易戦争が激化して、世界景気が悪化するリスクはある。


【3】米景気はソフトランディングへ、さらなる米利下げが見込まれることが強材料に
→米インフレ再燃懸念、米景気悪化リスクに注意。


【4】高市ラリー継続への期待
→高市政権が成立し、支持率が上昇し、強いリーダーシップを発揮できるか正念場。


【5】日米でAI株ブーム継続
→日米ともAI関連株にやや過熱感ある。


日本株の投資方針

 日米株価にやや過熱感があります。株価の上昇分を少し利益確定売りするのも良いと思います。


 ただし、日本株の長期的な見方は変わりません。日本株は割安で、長期的な上昇余地は大きいと考えています。これからも、急落・急騰を繰り返しながら、上昇していくと思います。


 日本株の保有がほとんどない方は、少しずつ、時間分散しながら割安な日本株に投資していくことが長期の資産形成に寄与すると思います。


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(窪田 真之)

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