日本株の動きを支配してきた外国人投資家。今、彼らを上回る「真の主役」が市場をけん引しています。
日本株を上昇させる外国人投資家の買い、最大の買い主体は「自社株買い」
過去30年以上、日本株の動きを支配しているのは外国人投資家です。外国人投資家が買えば上がり、売れば下がる傾向が鮮明です。外国人は、買う時は上値を追って買い、売る時は下値をたたいて売る傾向があるので、短期的な動きは外国人次第です。
<日経平均と外国人投資家の売買動向(売り越し・買い越し、株式現物と株価指数先物の合計):2024年1月4日~2025年10月21日(外国人売買動向は10月10日まで)>
その外国人は、2023年以降、買い越しに転じています。短期的には売り買いが目まぐるしく入れ替わり、それが、日経平均株価の激しい乱高下につながっています。ただし、売り買い合わせると、外国人投資家は2023年以降、トータルで7兆円超の買い越しとなっています。
<2023~2025年(10月10日まで)の投資主体別株式売買(買い越し・売り越し)>
ただし、最大の買い手は外国人投資家ではありません。事業法人です。事業法人の自社株買いは2023年以降で21兆円超に達しています。
以下、上記の投資主体別売買動向を説明します。外国人投資家については最後に説明します。
【1】最大の買い手は、事業法人の自社株買い
外国人投資家は日本株の動きを支配していますが、最大の買い手ではありません。最大の買い手は、事業法人の「自社株買い」です。
自社株買いなので、市場(マーケット)を動かすような買い方はしません。それでも、トータルで最大の買い手は「事業法人」です。
事業法人の買い越し21.2兆円が「自社株買い」の全てではありません。事業法人だけでなく、金融法人も巨額の自社株買いを行っています。金融法人の自社株買いや、市場を通さない自社株買いなどを合わせると、25兆~30兆円の自社株買いが行われていると推定されます。自社株買いがいかに大きな買い手であるか、お分かりいただけるでしょう。
【2】最大の売り手は信託銀行(信託勘定で売買する年金基金など)
売り手で最大なのは「信託銀行」です。これは、信託勘定を使って売買する年金基金などの売買を表しています。年金基金は基本ポートフォリオを決めており、原則その比率で運用を続けています。
株が上昇すると、時価ベースで株の組み入れ比率が高くなるため、基本ポートフォリオに戻すために株を売ることになります。
【3】銀行・生損保は継続的な売り手
金融法人も「自社株買い」では巨額の買い手です。ただし、自社株を買う一方、毎年計画的に進めている「政策保有株の売却」では大口の売り手となっています。政策保有株の売却額の方がはるかに大きいため、「銀行・生損保」はトータルで売り越しとなっています。
【4】個人および投資信託
個人投資家は株が下がると買い越しになり、株が上がると売り越しになる傾向が鮮明です。日経平均が上昇してきた2023年以降は、トータルで売り越しとなっています。投資信託も、個人投資家の売買が大きいのでトータルで売り越しとなっています。
ただし、一つ注意事項があります。個人投資家の実際の売り越し額は、ここで示されている金額よりも小さいものです。
個人投資家は、新規公開株の割り当てを受け、上昇後に売却することが多くあります。ここで新規公開株の購入は「買い」に計上されず、上場後の売却のみ「売り」に計上されます。その分、個人投資家の売り越し金額は実態よりも大きく計上されています。
自社株買いの増加を外国人投資家が評価
2023年以降、自社株買いが増えるとともに外国人投資家の買いも増えていますが、それには相関関係があります。
日本企業の経営者が、安過ぎる株価が問題と判断し、自社株買いを増やすようになりました。それを見て、外国人投資家が日本株を評価して買ってくるという側面があります。
かつて日本企業の経営者は、株価を上昇させることにあまり本腰を入れてきませんでした。借金を返済し、事業を強くすることだけに集中していれば、株価はそれを評価して上がっていくものだという感覚の経営者が多かったと言えます。
そのため、かつての日本企業はあまり自社株買いを行わず、実質無借金でバランスシートに余剰資産を抱える企業が増えました。その結果、財務内容が良好で収益基盤も堅固であるにもかかわらず、株価が解散価値といわれる株価純資産倍率(PBR)1倍を割り込む企業が増えました。
東証の要請や、合意なき買収が増えてきたことを受け、日本企業の経営者はようやく自社株買いを増やし、自己資本利益率(ROE)を高めて株価を上げることに本格的に取り組むようになりました。
それが自社株買いの増加に表れ、それを評価して外国人投資家も日本株を買うようになったと考えられます。
日本企業は今後さらに自社株買いを増やす余地大
これまで米国企業は毎年巨額の自社株買いを行い、それが米国株を上昇させる大きな力となってきました。これからも米国企業は、毎期稼ぐフリー・キャッシュフローを使って自社株買いを行い続けると思われます。
米国では時に、自社株買いのやり過ぎが問題になることがあります。一部の米国企業は自社株買いのやり過ぎで債務超過にまで陥っています。日本だと債務超過は上場廃止となりますが、米国ではそうならないため、債務超過になっても自社株買いを続けるようなことが起こっています。
一方、日本企業はこれまで米国企業ほどには自社株買いを行ってきませんでした。その結果、日本の上場企業には、財務上の余力が潤沢にあります。米国企業とは正反対です。これからさらに自社株買いを増やす余力があります。
<自社株買いの原資>
自社株買いは通常、毎期稼ぐフリー・キャッシュフローから捻出するものです。上記の【1】です。米国企業には【1】を最大限活用して自社株買いを行う傾向があります。
一方、日本には、【1】のほか、【2】【3】【4】も自社株買いの原資になり得る上場企業が多数あります。
当初、持ち合い株式を売却して、自社株買いを増やすことが課題として注目されました。東京証券取引所がPBR1倍割れなど株価が安過ぎる企業に対して、「株主価値改善策の開示と実行」を求めると、PBR1倍割れ企業に持ち合い株式の売却や自社株買いが増えました。金融庁からも、損害保険会社などに持ち合い株式の売却要請などが出され、その流れが拡大しました。
近年、三大都市圏(東京、大阪、名古屋)の地価上昇率が年率4%を超え、上場企業が保有する賃貸不動産の含み益が急増しています。
<日本の公示地価変動率(全用途):2016~2025年(1月1日時点)>
企業がバランスシート上で保有する現預金の残高も近年、大きく増加しています。
<企業の現預金:民間非金融法人企業の現預金推移>
日本株の投資判断
結論はいつも書いてきたことと変わりません。日本株は割安で長期的な上昇余地が大きいと判断しています。ただし、短期的には、株価上昇ピッチが速すぎて、過熱が懸念されます。短期的には、何かショック安が起こることも考えられます。
日本株はこれからも急落・急騰を繰り返しながら、上昇していくと考えています。時間分散しながら、割安な日本株を買い増ししていくことが、長期的な資産形成に寄与すると考えています。
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(窪田 真之)

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