ついに10月27日、日経平均株価は5万円に到達。歴史的な株高の中、小売株の時価総額ワンツー企業も揃って上場来高値を更新中!と、株価は好調なのですが、今年のパフォーマンスで見れば大きな差も…。

ここから買うなら、ファーストリテイリング(9983)と、イオン(8267)どっち?この2社で比べてみます。


ファーストリテイリング vs イオン ともに上場来最高値を更...の画像はこちら >>

今回のお題 ともに最高値更新中の小売株2大巨頭

ファーストリテイリング(9983) イオン(8267)
ファーストリテイリング vs イオン ともに上場来最高値を更新中の小売株2大巨頭 買うならどっち?
ファーストリテイリング logo

ファーストリテイリング vs イオン ともに上場来最高値を更新中の小売株2大巨頭 買うならどっち?
イオン logo

 上記両社の株価のポイントや株価データを見ながら、双方を比較し、皆さんの相場観で購入検討するならどちらにしますか?


銘柄A:ファーストリテイリング(9983)

ファーストリテイリング vs イオン ともに上場来最高値を更新中の小売株2大巨頭 買うならどっち?
出所:筆者作成 年初来週足チャート ※2025年10月24日時点

ここがGOOD

世界的ブランド「ユニクロ

 日本発の企業として、アパレルでは文句無しの歴代最強企業です。コンセプト「LifeWear」は“究極の普段着”という意味。「ユニクロ」は世界的ブランドとして浸透しています。日本、中国大陸、韓国のほか、欧州、北米、東南アジア・インド・オーストラリア地区も成長市場という位置付けです。
 ポテンシャルを感じるのは、LifeWearはまだ市場シェア拡大余地が大きいこと。日本の市場シェアは約12%と大きいのですが、中国大陸は未だ約1.5%。中国大陸は新規のユニクロ会員が年間1,300万人超ペースで増える超成長市場です。
 また、伸び盛りなのが欧州・北米市場。22年8月期から4年間、毎年売上3~5割成長を記録し、営業利益ベースでは約4倍に拡大…文句なしグロース株ですね。その欧州・北米市場でいえば、市場シェアはまだ約0.5%。欧州や北米でもブランド認知度を高まっているようで、今後の伸びしろは非常に大きいと言えそうです。


先行き業績への不安は縮小

 25年8月期は減収減益で着地。

前期は厳しい期でしたが、10月9日に発表した今26年8月期の期初計画(ガイダンス)は増収増益見通し。営業利益は+8.1%の6,100億円予想で、市場予想の5,830億円をやや上振れる良好な内容でした。国内ユニクロは、既存店売上高で+3%を前提としています。売上堅調を見込むものの、為替の円安が進むと原材料価格の上昇(粗利率の低下)で減益要因になります。
 海外でのユニクロ事業、「今期は成長路線でいけそう」というのが業績面のカタリスト。前期に苦戦した中国は、目下で構造改革の真っ最中です。その中国ではSNS活用などで若年層の会員獲得が順調。中国、北米の成長市場でも増収増益が想定されています。国内では円安の悪影響、中国は消費減退リスク、北米は関税影響などが心配されていましたが、杞憂に終わりそう…これが決算を受けた市場評価です。


株式需給は良好

 日経平均株価が大きく値上がりする強地合いにあって、出遅れ感が鮮明だったファストリ株。前述の業績不安などが重石になったのと、半導体株などAIテーマ人気の波に乗れず…年初来の株価パフォーマンスがようやくプラスに転じたのは、10月21日のことでした。大きく出遅れましたが、年初来高値、そして上場来高値を更新した後は需給好転で上値が軽くなった印象です。


 
 ファストリ株は、ご存じの通り超が付く“値がさ株”。最低投資額(100株)で500万円を超えるため、信用取引を利用して売買する個人投資家が非常に多いのも特徴です。その信用残高を見ると、10月17日時点の信用買い残高は19万8,700株、信用売り残高は37万8,600株で、信用倍率は「0.52倍」。想定より良かったガイダンスを受けて株価がリバウンド、これで買い残激減、売り残増加で取組み妙味は良くなりました。しかも最高値圏にあるため、苦しい売り方の買戻しによる一段上昇(踏み上げ相場)も想像されます。


ここが心配

日経平均の“キャップ調整”

 ファストリといえば、「日経平均を動かす株」というイメージありますよね。今年の半導体株の爆上げで指数ウエイト1位はソフトバンクグループ、2位はアドバンテストとなり、3位に落ちましたが、それでも指数ウエイトは9.2%もあります。ちなみに、日経平均との関係性を示すベータ値は90日ベースで「1.03」。ほぼ1”ということは「日経平均が1上がれば1上がり、1下がれば1下がる株」ということ。“ミスター日経平均”って感じですね。
 ソフトバンクG、アドバンテスト、そしてファストリの日経平均ウエイトはいずれも9%を超えています。日経平均には年に2回、1月末終値、7月末終値を基準として「日経平均ウエイトが10%を超えていないか?」の判定が行われます。仮に超えていた場合、指数採用株価を「株価×キャップ調整比率0.9」に見直されます。

強引に日経平均ウエイトを10%未満に下げるためのルールです。
 日経平均連動型のETFなどパッシブファンドの運用資産は30兆円くらいあるとされます。キャップ調整で指数ウエイトが10%→9%へと下がった場合、30兆円の×1%で3,000億円の売り圧力がリバランス時にかかります。これまで2度のキャップ調整がなされ、その都度売り圧力にさらされてきたファストリ。株価が大幅に上がると、日経平均のキャップ調整に伴う売り圧力が発生。これがファストリ株ならではの重石といえそうです。


ファーストリテイリング レーダーチャート ※各指標の数値に基づき独自基準でスコア化
ファーストリテイリング vs イオン ともに上場来最高値を更新中の小売株2大巨頭 買うならどっち?
出所:筆者作成

銘柄B:イオン(8267)

ファーストリテイリング vs イオン ともに上場来最高値を更新中の小売株2大巨頭 買うならどっち?
出所:筆者作成 年初来週足チャート ※2025年10月24日時点

ここがGOOD

足元業績良好、構造改革も進展

 10月14日発表の26年2月期上期の営業利益は、前期比で20%増の1,181億円。プライベートブランド(トップバリュ、ベストプライス)で値下げ型と付加価値型の両軸で動いた戦略が、バッチリ消費者のニーズにハマったようです。PB売上高がグループ全体で11.7%増加し、営業利益率の底上げにつながっています。
 なお、イオンモールとイオンディライトを完全子会社化したほか、U.S.M.Hとダイエーなど食品スーパー事業の再編、ツルハHDの連結化、さらには紳士服専門店のタカキューの株式一部売却も実施。グループ内の構造改革や資本効率の改善は今後も進みそうで、この点も市場で評価されています。


優待組が爆益、好需給を謳歌

 小売業種の大型株ながら、年初来騰落率は+91%と驚異的。ここまで上がるか?という驚きは強いのですが、上昇ピッチ加速の背景にはショートカバー(空売りの買戻し)もありそうです。

信用残高を見ると、10月17日時点の信用買い残高は112万5,800株、信用売り残高は368万500株で、信用倍率は「0.31倍」。信用残が伝えているのは、イオンを買って持ってる人より、イオンの空売りでヤラレている投資家の方が圧倒的多いということ。予想PERも高く、上げ過ぎもあって逆張り売り参戦組が集まり、それが逆に上昇の燃料になっている面もありそうです。
 イオンは、個人株主に「株主優待」が人気の株。優待内容は、買い物時に支払った額の数パーセントが還元される”オーナーズカード”です。その優待目的でイオンを保有する株主は、まさに”Buy&Hold”。NISAなどで長期保有を前提にイオンを持つ個人投資家は、売りを出さない株主ということで浮動株の逼迫化につながります。「売りが少ない」、これも上がりやすい需給構図のポイントです。


ローベータ

「最小分散」という、市場全体との関係性が低い銘柄(ベータ値が低い銘柄)に投資する戦略があります。ベータ値が低い株というのは、例えば日経平均が大きく変動しても、価格が安定推移する株と判定されます。この最小分散は、機関投資家の好きな概念です。好きと言っても、この概念が重宝されるのは、相場全体に対する不確実性が高まった時。

それでいえば、現在は地合いも強く、優先順位は低めかもですが…。
 イオンの日経平均ウエイトは0.49%と、ファストリ(9.20%)とは比べ物にならないほど低い指数ウエイトです。そして、日経平均とのベータ値はファストリが90日ベースで1.03でしたが、イオンは「0.20」。完全なるローベータ株、最小分散株です。価格変動リスクを嫌う投資家が増える場面で、イオンは機関投資家の資金の受け皿ともなりそうです。


ここが心配

過熱感&割高感の反動

 株式需給の良さが全面に出た形で、天にも昇る勢いで上昇しているイオン株。ただ、株価が大きく上昇しているだけに、その反動が心配材料となります。まずは、株価そのものの過熱感。テクニカル指標の25日移動平均線乖離率は、10月24日時点で+20.7%です。一般的には+10%以上で買われ過ぎ、天井などと言われます。総合スーパーの株など大人しい動きをしそうですが、そんなイオン株としても過去最大級の過熱感を示しています。
 また株価上昇で、バリュエーション面での割高感も高まります。この観点では、小売株でも配当利回りは最低ランクの0.58%。

そして、予想PERは162.5倍、PBRは5.40倍…もはや説明不可能レベルですね。こうした高株価に導いた背景に、間違いなく空売りの買い戻しが挙げられます。ショートカバーが一巡した後、この高値圏では押し目買いをする投資家も少ない気がします。


イオン レーダーチャート ※各指標の数値に基づき独自基準でスコア化
ファーストリテイリング vs イオン ともに上場来最高値を更新中の小売株2大巨頭 買うならどっち?
出所:筆者作成

あなたなら、どっちを買う?

ファーストリテイリング vs イオン ともに上場来最高値を更新中の小売株2大巨頭 買うならどっち?
出所:筆者作成 ※2025年10月24日時点


 東証の小売業種の指数は年初来+12%と、TOPIXの+17%をアンダーパフォームしています。上がってはいるけど、業種でいえば低評価の小売株。その小売株の時価総額1位、2位は、10月後半に揃って上場来高値を更新したというのは興味深いところです。


 ただ、上場来高値を更新したといっても、イオンは年初来で+91%の爆上げ、かたやファストリは+3%と極端なパフォーマンス差。ここから買うなら出遅れのファストリか、超絶モメンタムのイオンか…あなたならどちらを選びますか?


▼銘柄投票にぜひ参加してみてください

【銘柄を投票】ファーストリテイリング vs イオン ともに上場来最高値を更新中の小売株2大巨頭 買うならどっち?


各指標の説明 予想PER 1株当たり利益の何倍(何年分)まで株価が買われているかを示す指標。同業他社と比較する際に使われ、低いほど割安と判断します。 PBR 1株当たり純資産の何倍まで株価が買われているかを示す指標。同業他社と比較する際に使われ、低いほど割安と判断します。この数値が1倍を下回る企業に対し、東証は「1倍を上回るよう頑張れ」と指令を出しています。 配当利回り 今期の予想配当金ベースの利回りで、高いほど配当妙味が高いと判定します。定義はありませんが、3%以上なら配当利回りが高いと認識されています。 流動性 1日の売買代金がどれくらいあるか?(表では25日平均)を金額で表示しています。同数値が高いほど、機関投資家も大口の個人投資家もストレス無く参加できると考えられます。

(岡村 友哉)

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