11月4日、米AIテック株、ゴールド、ビットコインがそろって急落しました。5日には、日経平均もひどく売られました。
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著者の田中 泰輔が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 【金・ビットコイン・米日株】滑落・崩落・大暴落 サバイバル 」
サマリー
●米日株とも、バブルと言わないまでも、11月4~5日にはフロス破裂の急落に見舞われた
●バブルかもしれない相場に備えて、滑落、崩落、大暴落に大別して正体を明らかにし、対応を整理する
相場下落をポジティブに捉える
ここ数カ月、米人工知能(AI)相場が上げ足を速め、日本株も連れ高以上に上昇を加速しました。相場の基調はファンダメンタルズ(経済成長、業績などの基礎的諸条件)に沿うものです。それを大きく超える相場の急伸には、多かれ少なかれ、バブル(大きな泡)やフロス(小さな泡)が含まれます。
筆者は8月、9月、10月にその怪しい兆しを指摘してきました。相場が大崩落するほどのバブルとは考えないものの、各市場、各業種・銘柄にフロスが頻発していると判断したからです。
そんな中、11月4日には、米AIテック株、ゴールド、ビットコインがそろって急落しました。翌日には、日経平均株価もひどく売られました。
しかし、相場の下落には相場の上昇を健全に持続させる役割もあるのです。相場の下落をポジティブに捉え、ピンチをチャンスに変える構えをとれるようになれば、しめたものです。
そのためにも、相場下落の正体を正しく知る必要があります。このレポートでは、主に相場の値動きと移動平均だけでこの問題を解いていきます。
滑落・崩落・大暴落
ここでは、相場の上昇トレンド上でのテクニカルな下落を「滑落」、テクニカルでも主要な移動平均を割り込むほどの下落を「崩落」、マクロ経済に深刻な打撃を与えるほどの相場下落を「大暴落」と大別します。
図1は相場波動の基本パターンです。相場に上昇トレンド(赤点線)が認識されるほど、実際の相場はトレンド線より速く上がる性向があります。
<図1>相場波動の基本パターン
相場が上がると、それを追認して相場上昇の材料感が強化されます。含み益が増えるほど、気持ちが大きくなった投資家のリスク判断が甘くなり、買い姿勢を強めます。彼らの強気見通し、相場の上昇は新たな投資資金の流入も促します。
一方で、含み益ポジションの増加は、潜在的な売り圧力の増大を意味します。
トレンド線を移動平均として考えてみましょう。移動平均はその期間の相場の平均価格であり、丸めて見れば、その期間に新たにつくられたポジションの平均コストと見なせます。
移動平均から上方に乖離していた相場が移動平均付近まで下落すると、売り逃げはいったんちゅうちょが出ます。一方、未参入投資家には既参入者と同列でポジションを仕込める値ごろ感が出てきます。こうして相場がトレンド線付近でサポートされると、次の新たな波動の形成に向かいます。
相場が移動平均を割り込んで下落すると、平均的な既参入者は含み損を抱えた状態に転じます。心理的に圧迫される彼らは、相場の戻りに対して売り逃げに出て、上昇トレンド回帰への抵抗になりがちです。トレンドは上方向のはずなのにと認識しつつ、相場がなかなか戻れない、もどかしい展開です。
こうした波動は、短期になるほどテクニカル(行動学的)なものから、長期で評価されるファンダメンタルズに基づくものまで、階層構造になっています(図2)。テクニカルに速く高く上伸した相場の下落は、既存ポジションの売り圧力をガス抜きさせるものです。
<図2>相場波動の階層構造
移動平均を割り込む大幅下落を、既存ポジションの崩れと見なして「崩落」と呼ぶことにします。景気・金利など経済の諸条件の変化がもたらす相場下落のうち、バブルのような上昇から、大急落する展開を「(大)暴落」とします。
米国株の事例
米AI相場をけん引してきたエヌビディア(以下、NVDA)とパランティア(同PLTR)について、シンプルに50日、100日、200日移動平均線との対比で、評価してみましょう。
NVDA(図3)は、2025年初から堅調だった相場が、2月下旬の決算以降に自律調整の滑落となり、4月のトランプ関税ショックで崩落しました。5月以降の挽回過程では、50日移動平均から乖離して上昇する期間が長くなっています。
これは、崩落までに売って過小保有になった投資家が多く、彼らの買い戻しが続いた上に、好ニュースが相次いでなかなか売らない展開だったと観察されます。
<図3>NVDAと50・100・200日移動平均
8月から9月にかけて、買い手が鈍りましたが、売り逃げは限定、押し目買いはそこそこで、50日移動平均線に沿う小さな滑落までの時間調整にとどまっています。10月下旬に急伸したことで、滑落、崩落の余地がつくられましたが、11月4日の下落は、移動平均から上方に離れたままのミニ滑落です。
月末と月初にありがちなリバランス売りの範囲にとどまります。まだ滑落の余地があるとも言えますが、11月後半の決算で業績などに問題が生じなければ、時間調整にとどまる可能性が高いと見ています。
PLTR(図4)は、2月決算で急伸した後、50日移動平均を割り込む滑落となりました。しかし、4月のトランプ関税ショック時も100日移動平均を一時的に割り込むにとどまり、崩落も軽微でした。
50日移動平均線に絡む上昇基調が保たれており、行動学的には押し目買い動向を観察することで、上昇トレンドの継続が確認されると診断していますが、どうでしょう。
<図4>PLTRと50・100・200日移動平均
日本株の事例
日本株は、外国人が2024年第2四半期から2025年4月のトランプ関税ショック辺りまで売り手に回りがちで、日経平均は3万8千円~4万円をコアゾーンとして膠着(こうちゃく)していました。その後、外国人の見直し買いが入り、米AI相場に連動して上伸。
ソフトバンクグループ、アドバンテストの2社だけで日経平均の上昇加速の半分近くを説明できるという、いびつな加速経路をたどりました。さらに10月には、高市早苗政権誕生に至る高揚が重なり、米AI相場を上回る上昇ぶりを示しています。
図5のソフトバンクグループ、図6のアドバンテストが示す通り、日経平均を加速させた2銘柄の上昇ぶりはすさまじいものです。大手のAI銘柄が相場をけん引する構図は米国も同じです。しかし、日本では対象となる銘柄数がはるかに少なく、投資資金が集中しがちです。しかも構成銘柄の株価の単純平均で算出される日経平均は、値がさの代表格2銘柄の動きに振らされます。
<図5>ソフトバンクグループと50・100・200日移動平均
<図6>アドバンテストと50・100・200日移動平均
潜在的に滑落余地が大きく、それを高市トレードがさらに押し上げたため、フロス破裂への警戒を踏まえつつ、上昇モメンタムに乗る構えをご案内してきた次第です。11月4日の米AI株の調整がもたらした5日の日本両銘柄の下落も、移動平均との位置関係では控えめに映るでしょう。
歴史の教訓
米日ともAI主導の相場は、速く高く上伸し、滑落だけでも相当の落差余地があります。
歴史的な教訓として、米国のファンダメンタルズの変化に伴う大暴落の事例を図7で見ておきましょう。1995年からのS&P500種指数(月次ローソク足)が、2000年のITバブル破裂、2008年のリーマン・ブラザーズ破綻に至る金融危機では、50月移動平均を割り込む事態になっています。
<図7>S&P500と50月移動平均
これほどの大暴落になると、相場の下落自体がマクロ・ファンダメンタルズに悪影響を及ぼします。このため、経済と相場が立ち直るまで政策が打ち出されます。
結論として、ファンダメンタルズの変化を伴わない状況で、相場の上昇トレンドが続くと見込まれる間は、相場の滑落は比較的早く、崩落では少々ポジション調整の期間をおいて、買いの好機となります。このため、筆者は、足元のAI相場について、丁寧な押し目買い戦術の有効性をご案内してきました。
丁寧な戦術とは、短期投資において上昇トレンドのモメンタムに乗りつつ、速すぎる相場展開で滑落余地が広がる場面では、銘柄選別、ポジションの量、売買の回転ペース、ヘッジを含む下落時の対応などリスク管理を徹底することです。
大暴落になると、滑落や崩落のように比較的早くにピンチがチャンスに転じるのではなく、政策対応によるファンダメンタルズの変化(あるいはその期待)が必要になり、少し時間をかけてチャンスを待つことになります。1990年代の日本は、バブル破裂後の政策対応が全く不十分で、失われた20年を過ごすことになりました。
相場波動の時間軸を分けて、滑落、崩落、大暴落を意識するだけで、投資の身構え方が変わるでしょう。
*本稿は個別銘柄を推奨するものではありません、投資はご自身の判断と責任において行ってください。
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(田中泰輔)

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