日経平均急落、テクニカル分析で天井圏シグナルが出ました。ただし、ファンダメンタルズ面で特に悪材料はありません。

日米とも2025年7-9月決算はおおむね良好。高市内閣への評価は高く、米中貿易戦争の一時休止も追い風です。今後の日本株投資はどうすべきか? 株価の転換点では、テクニカルとファンダメンタルズ両方の視点が重要です。


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日経平均急反落、テクニカルで「天井圏」シグナル出る

 11月最初の週(営業日11月4~7日)の日経平均株価は、1週間で2,134円(4.1%)下落して5万0,276円で引けました。5日には一時4万9,073円まで下落しましたが、そこから持ち直して5万円台を維持しました。


 特段の悪材料が出たわけではありませんが、日米ともにAI関連株の上昇ピッチが速すぎて過熱が警戒されていました。一部ヘッジファンドによる米国でのAI関連株の売りをきっかけに、日本でもAI関連株として急騰していた ソフトバンクグループ(9984) 、 アドバンテスト(6857) などに利益確定売りが集中して、日経平均株価急落につながりました。


<日経平均週足:2024年1月4日~2025年11月7日>


日経平均に「天井圏」シグナル点灯?テクニカルとファンダメンタルズ分析から考える投資戦略(窪田真之)
出所:楽天証券MS IIより作成

 先週の急落により、テクニカル分析【注】上、相場が天井圏にある可能性が示唆されました。ファンダメンタルズ(景気・企業業績)面ではまだ目立った悪材料がありませんが、注意が必要です。


【注】テクニカル分析
 株価チャートの形状や売買高の変化に基づき、将来の値動きを予測する方法。


 これまでもお伝えしている通り、日本株を動かしているのは外国人です。外国人が買えば上がり、外国人が売れば下がる傾向が30年以上、続いています。外国人の動きに大きな変化がある時に、テクニカル分析で注意シグナルが出ることが多くなっています。


 上の日経平均チャートで注目すべきテクニカル上のシグナルは以下の通りです。


【1】2025年3月「デッドクロス」:13週移動平均線が26週移動平均線を上から下へ抜ける
 外国人の売りが増えてきており、日経平均がさらに下落する可能性が出ていることが示唆されました。その後トランプ関税ショックで日経平均は急落。


【2】2025年4月「長い下ひげ」
 トランプ関税ショックで急落後に相互関税の適用延期が発表されると急反発。「長い下ひげ」を形成。日経平均が反発に向かう可能性が示唆されました。


【3】2025年7月「ゴールデンクロス」:13週移動平均線が26週移動平均線を下から上へ抜ける
 外国人買いの勢いが強く、日経平均の上昇が続く可能性が示唆されました。日経平均は実際、その後、さらに大きく上昇しました。


【4】2025年11月「大陽線を大陰線で打ち消し」
 上昇が続いてきた日経平均に転機が訪れる可能性を示唆しています。今後、日経平均は4万8,000円に向かっていったん下がるか、あるいは5万円前後でもち合うことが考えられます。


【注】テクニカル分析の使い方
 テクニカル分析は将来の株価予測に役立ちますが、当たることも外れることもあります。テクニカル分析は、現時点での「買い手の勢い」「売り手の勢い」、あるいは「両者の均衡状態」を示すものであり、絶対的な将来予測を保証するものではありません。

売り手と買い手の力関係は、新しい材料が出ると変わることがあります。


外国人の買いが減ってきている可能性も

 チャートに表れているのは、需給の変化です。外国人の買いが減りつつあることがチャートの変化につながっている可能性があります。


<トランプ関税ショック後の日経平均と外国人投資家の売買動向(株式現物と先物合計:2025年3月24日~11月7日(外国人売買動向は10月31日まで)>


日経平均に「天井圏」シグナル点灯?テクニカルとファンダメンタルズ分析から考える投資戦略(窪田真之)
出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 日経平均はトランプ関税ショック後、外国人投資家の買いで上昇してきました。しかし、詳細に見ると、高市早苗氏が自民党総裁選に勝利する直前には一時的に売り越しに転じる局面も見られました。


 10月4日に高市氏が総裁選に勝利してからは再び買い越しに転じ、日経平均を押し上げましたが、足元ではその買いの勢いが減速傾向にあります。外国人投資家の買い意欲が低下しつつある可能性が指摘されます。


日米とも2025年7-9月決算は良好

 テクニカルに見て、日経平均に弱めのシグナルが出ていますが、ファンダメンタルズは引き続き良好です。発表中の日米の2025年7-9月決算はおおむね良好です。高市外交への評価は高く、米中貿易戦争が一時休戦となったことも安心感につながっています。


 ファンダメンタルズ面で新たな悪材料が顕在化しない限り、日経平均が大きく崩れる可能性は低いと考えられます。しかし、潜在的な不安要素には常に留意が必要です。


<日本株の強材料と不安材料>


日経平均に「天井圏」シグナル点灯?テクニカルとファンダメンタルズ分析から考える投資戦略(窪田真之)
出所:楽天証券経済研究所作成

日本株の投資判断

 日本株は割安で、長期的な上昇余地は大きいと判断しています。ただし、短期的には反落する可能性があることを意識すべきです。


 株価が転換点を迎える局面では、ファンダメンタルズ分析に加え、テクニカル分析も駆使し、市場の潮流に合わせた柔軟な対応が求められます。足元、日経平均はテクニカル分析で警戒シグナルが出ていることに、注意が必要です。


 日本株に投資するならば、一度にたくさん買うのではなく、しばらく様子見しながら時間分散して買っていくのが良いと思います。


 そこで、今日は最後に、テクニカル分析を書籍で勉強したい方に、私がダイヤモンド社から出版した「株トレ」をご紹介します。


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