先週は米国の著名ファンドがAI関連株をカラ売りしていることが判明し、日米ともにAI株が下げを主導する形で株価指数が下落しました。今週の日本株は2025年7-9月期の決算発表がピークを迎えるため、好業績企業の株価上昇が全体相場の下支え役になることに期待したいところ。

逆にAI主力株の決算発表が相場急変につながる恐れもありそうです。


今週のマーケット:AIバブルは崩壊か、単なる調整か。ソフトバ...の画像はこちら >>

今週のトピック:ソニーG、ソフトバンクG、三菱UFJFGなどの決算発表

日付 イベント 11月10日(月) ・ 三菱地所(8802) 、 古河電気工業(5801) などが2025年7-9月期決算を発表 11月11日(火) ・ ソニーG(6758) 、 ソフトバンクG(9984) 、 三井金属(5706) などが決算発表 11月12日(水) ・ アシックス(7936) 、 ブリヂストン(5108) などが決算発表 11月13日(木) ・ キオクシアHD(285A) 、 INPEX(1605) など438社が決算発表
・米国10月CPI(発表されない予定) 11月14日(金) ・ 三菱UFJFG(8306) 、 第一生命HD(8750) など623社が決算発表
・米国10月PPI、10月小売売上高(発表されない予定)
  • 日本企業の2025年7-9月期決算がピークを迎えるため、好業績を発表した企業の株価上昇が人工知能(AI)関連株の下落で不安定な相場の下支え役になりそう。11日(火)のソニーG(6758)や14日(金)の三菱UFJFG(8306)に注目!
  • 先週、バブル崩壊に対する不安感が台頭したAI株。11日(火)のソフトバンクG(9984)などの決算が株価反発の起爆剤になるかどうかが焦点
  • 米国市場は材料難や12月追加利下げ見送り懸念で低迷!? 史上最長となった米国の政府機関閉鎖に関しては異例の週末審議が行われており、今週中に政府機関再開に必要なつなぎ予算案が電撃的に採択されれば株価急騰も!
  • 米国では来週19日(水)の エヌビディア(NVDA) の決算発表までAI株の利食い調整が長引く恐れも!?

11月10日(月)の日経平均

 先週は最高値更新から一転、急落となりましたが5万円台を維持し、今週は前営業日比368円高の5万0,645円で反発スタート。もみ合いになりながら米政府機関の再開期待からか一時は688円高となり、前営業日比635円高の5万0,911円で取引を終えました。


今週:ソフトバンクGや古河電気工業、JX金属の決算でAI株急落第2幕も!?米国は政情不安が心配!

 今週の日本株は2025年7-9月期の決算発表がピークを迎えます。


 今週も先週に引き続き、好業績や株主配当の増額修正などを発表した企業が素直に評価され、全体相場の底上げにつながる展開に期待したいところです。


 特に注目されるのは人工知能(AI)関連株のけん引役といえる ソフトバンクグループ(9984) 。


 11日(火)に決算発表予定ですが、同社は米国の大規模AIデータセンター建設計画「Stargate Project」に参画していることが好感され、2025年に入って株価が前年末比2.36倍も急騰。


 同社の組み入れ比率が高い日経平均株価(225種)が10月31日に5万2,411円の高値をつける原動力になっているだけに、決算発表が思わしくない場合はAI株全体の急落につながりそうです。


 また、前日の10日(月)にはAIデータセンター向け光ファイバーの販売が好調な 古河電気工業(5801) も決算発表。


 先週7日(金)には同業の フジクラ(5803) が取引時間中に今期2026年3月期の業績上方修正と株主配当の大幅な増額を発表。


 7日の日経平均は一時1,200円以上も下落していましたが、フジクラの好決算もあって前日比607円安まで値を戻しただけに、同業の古河電気工業の決算にも注目が集まります。


 11日(火)には、AIデータセンター向けに銅部材を供給する 三井金属(5706) や JX金属(5016) も決算発表。


 三井金属は前年末比3.35倍、JX金属は2025年3月19日の上場初値843円から2.28倍も急上昇していますが、いずれも今期2026年3月期は営業減益予想。


 AIデータセンターに対する期待感だけで急騰している面が強いため、決算内容が期待はずれなものだと株価が大きく急落してもおかしくありません。


 その他では11日(火)に日本を代表するハイテク株かつゲーム・コンテンツ関連株でもある ソニーグループ(6758) 、13日(木)には資源会社最大手の INPEX(1605) やAI向け半導体メモリメーカーの キオクシアホールディングス(285A) 、14日(金)には 三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306) を筆頭にメガバンク3社などが決算発表します。


 先週はAI株が大きく調整する中、「Nintendo Switch 2」のハード・ソフト販売が絶好調で今期2026年3月期の営業利益を前期比30.9%増に上方修正した 任天堂(7974) が前週末比6.6%高。


 トランプ関税の影響が軽減で自動車関連事業が上振れし、今期業績の上方修正と株主配当の増額修正を行った 住友電気工業(5802) が3.6%高。


 今週も好業績を発表した企業の株価が順当に上昇する業績相場が続きそうです。


 米国では先週4日(火)、ニューヨーク市長選や東部ニュージャージー州、南部バージニア州の知事選が行われ、いずれも民主党が勝利。


 特にニューヨーク市長に就任した急伸左派のゾーラン・マムダニ氏は高騰する家賃上昇の凍結や無料バスの導入などを掲げて大勝。


 早速、トランプ大統領が「政権に敬意を示せ」と攻撃し、ニューヨーク市への連邦政府の資金提供の停止をほのめかしています。


 トランプ大統領が今後も強権的な姿勢を続けるようだと、米国内の政情不安がドル安や株安、米国債売りにつながる可能性もないとはいえません。


来週19日(水)のエヌビディア決算までAI株の再上昇は見込み薄!?米国政府機関の閉鎖解除なら急騰も!

 先週は、大物のカラ売り投資家として有名なマイケル・バーリ氏率いるサイオン・アセット・マネジメントがAI花形株の エヌビディア(NVDA) や軍事産業向けAIソリューションを手掛ける パランティア・テクノロジーズ(PLTR) に対するカラ売りポジションを開示。


 それが引き金となり、「AI株は巨額投資に見合うだけの収益を上げることができるのか」という不安感が台頭し、AI株が急落しました。


 今週も米国市場では重要な経済指標の発表がなく材料不足のため、AI株に対する弱気な見方がくすぶり続ける可能性もありそうです。


 特に来週19日(水)にはAI株の筆頭銘柄といえる高速半導体メーカーのエヌビディアが2025年8-10月期の決算を発表する予定です。


 同社は空前の利益成長を続け、2025年に入ってからも株価は前年末比40.1%高と続騰していますが、先週は7.08%安。


 それでも株価が1株当たり純利益の何倍まで買われているかを示す株価収益率(PER)は54.2倍に達しています。


 半導体輸出規制の強化など米中の対立で半導体産業のブロック化が進む中、果たしてエヌビディアが54年分の利益を織り込んだ、割高な株価に見合うだけの成長を続けられるかどうかには懐疑的な見方も強まっています。


 それだけに来週19日(水)のエヌビディアの決算発表までAI株の調整が長引く恐れもありそうです。


 米国では議会の共和党・民主党の対立でつなぎ予算がいまだ成立せず、10月1日から始まった政府機関の一部閉鎖が先週の5日(水)、史上最長期間に達しました。


 すでに空港での航空便の減便が始まり、食料支援の遅延も危惧されています。


 米国国民の生活に深刻なダメージが出る直前ということもあり、米国議会は8日(土)、9日(日)の週末も異例の審議を継続。


 今週は議会でつなぎ予算が電撃的に成立する可能性もありそうです。そうなれば米国株だけでなく、日本株にとっても株価反発の起爆剤になるでしょう。


先週の振り返り:日経平均は4%超下落もTOPIXの下落率は1%以下。非AIの内需株や好業績株は底堅い!

 先週の日経平均株価(225種)は前週末比2,134円(4.07%)安の5万0,276円まで値下がり。


 10月17日(金)から31日(金)までの2週間で4,829円(10.15%)も上昇してきただけに、AIバブルに対する不安感を口実にした利益確定の売りが入りました。


 急落を主導したのは前週末比19.8%安のソフトバンクグループ(9984)や13.7%安の半導体検査装置メーカー・ アドバンテスト(6857) など、日経平均に対する寄与度が高い、値がさのAI株でした。


 非AI関連の大企業の組み入れ比率が高い東証株価指数(TOPIX)の週間の下落率は日経平均の4.07%に対して0.99%に過ぎません。


 先週までの急騰も先週の急落も、ある意味AI株だけが一極集中的に買われて、売られただけ。


 非AI株は急落に対しても「かやの外」で、それほどダメージがなかったことが分かります。


 週間の業種別下落率でもソフトバンクGが属する情報・通信セクターが7%超のマイナスで突出したワースト1位になり、半導体株が属する電気機器セクターがワースト3位でした。


 また、6日(木)にトランプ関税によるコンテナ船事業の不振で今期業績の下方修正と減配を発表した 日本郵船(9101) が5.7%安となるなど、海運セクターもワースト2位と不調でした。


 その一方、業種別上昇率の上位にはサービス業や水産・農林業など内需株が浮上しています。


 個別株では北米で前立腺がん治療剤の販売が好調で今期業績を上方修正した 住友ファーマ(4506) が27.2%高、豪州の牛肉事業が好調で同じく今期業績を上方修正した 日本ハム(2282) が15.7%高と、好業績企業の株は素直に買われました。


 一方、米国では機関投資家が運用指針にするS&P500種指数が1.63%安と4週ぶりに下落。

AI関連のハイテク株が集まるナスダック総合指数が3.04%安と下げを主導しました。


 しかし、5日(水)に米国給与計算代行会社オートマチック・データ・プロセッシング(ADP)が発表した10月の民間雇用者数は前月比4.2万人増と予想を上回りました。


 同じく5日発表の全米供給管理協会(ISM)の10月非製造業景況指数も新規受注の堅調な増加で8カ月ぶりの高水準まで上昇するなど、米国経済は一定の底堅さを維持しています。


 先週は米国の複数の地区連邦銀行総裁が高インフレ下での利下げに異議を唱え、7日(金)には米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)のジェファーソン副議長が政策金利は「中立水準に近づいている」と利下げに慎重な発言を行いました。


 12月の追加利下げに対する期待感の失速も米国株不調の一因といえるでしょう。


(トウシル編集チーム)

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