日銀から10月の「金融政策決定会合における主な意見」が出ました。今回のポイントは、経済の先行きに関する前向きな意見が増えたこと、そして利上げのタイミングが近いことを示唆する意見が多かったことです。
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の愛宕 伸康が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 日銀、「主な意見」で着々と利上げへの対話進める 」
10月「主な意見」の一番目に掲載された意見~日銀の基本スタンス~
今週月曜日(11月10日)に日本銀行から「金融政策決定会合における主な意見(10月29~30日開催分)」(通称「主な意見」)が発表されましたので、そのポイントを簡単に整理します。
この「主な意見」は、金融政策決定会合(MPM)での発言を、各政策委員が一定の字数制限のもとで議長である総裁に提出し、それを総裁が編集する形でまとめた資料であり、金融政策の先行きを占う上で最も重要な資料の一つです。
前回9月の「主な意見」についても、10月1日に配信したレポートでポイントをまとめ、10月利上げの可能性が高まっていたことを紹介しました。
2025年10月1日: 日銀「主な意見」が示す10月利上げの明確なメッセージ(愛宕伸康)
結果的には、利上げに否定的な高市政権誕生によって10月利上げは見送られましたが、下馬評通り小泉進次郎氏が自民党総裁に勝利していれば、おそらく10月に利上げが行われていただろうというのが、筆者の読み筋です。いずれにせよ、資料の重要性は今も変わっていません。
今回の「主な意見」のポイントは、経済の先行きに関する前向きな意見が増えたこと、そして利上げのタイミングが近づいていることを示唆する意見が多かったことです。日銀は「主な意見」を通じて、着々と利上げへの対話を進めているとみることができます。
それではまず、経済や物価、金融政策運営に対する日銀の公式見解が変わっていないか、各項目(「経済情勢」「物価」「金融政策運営に関する意見」)の一番目に掲載された意見から確認することにしましょう(図表1)。
<図表1 10月「主な意見」の各項目で最初に掲載された意見>
最初に図表1の経済情勢に関する意見から見ますと、9月の「主な意見」で「成長ペースは鈍化するものの」と表現されていたものが、今回「成長ペースは伸び悩むものの」に変更されました。これは10月「展望レポート」と同じ変更になりますが、若干の上方修正とみることができます。
それに伴い、物価に関する意見においても、9月「主な意見」で「成長ペース鈍化などの影響」とされていたものが、今回は「成長ペースなどの影響」と、「鈍化」が削除されています。明らかに、トランプ関税の影響に対する慎重な見方が和らいだことを示しています。
金融政策運営についての意見では、「不確実性がなお高い状況」と、9月「主な意見」に比べ「なお」という表現が加わりました。意味合いとしては「まだ」とほとんど変わりませんが、「思いのほか」といったニュアンスを含んでいます。
このように、各項目の一番目の意見ですでに利上げに向けて前進させた印象を受けますが、各項目の二番目以降の意見を見れば、それがより一層明確となります。以下、「経済情勢」「物価」「金融政策運営に関する意見」の順に見ていきましょう。
経済情勢に関する意見は10月利上げを行っていてもおかしくないほどの強さ
「経済情勢」に関する二番目以降に掲載された7個の意見のうち、特に前向きな表現が目立ったものを図表2に列挙しました。
<図表2 10月「主な意見」の経済情勢に関する意見で目立ったもの>
これを見ると、10月MPMで利上げを行っていても不思議ではないというほどの強さを感じます。ちなみに、図表2に掲載しませんでしたが、残りの二つの意見も、一つは銀行貸出が増えている点(これについては後述します)、不動産価格が上昇している点を指摘しており、経済情勢に関して慎重なものではありません。
参考までに、図表2の最後の意見にある米国経済に関して、米アトランタ連邦準備銀行が推定しているGDPナウの2025年7-9月期の実質国内総生産(GDP)予測値を見ておきますと(図表3)、11月6日現在、前期比年率4%の強さとなっています。
<図表3 アトランタ連銀『GDPナウ』の2025年7-9月期実質GDP予測値>
10月「主な意見」では引き続き物価上振れリスクを指摘する意見が複数
物価に関する意見では、掲載された意見の個数が全部で6個と、前回9月の8個から減りましたが、引き続き物価上振れリスクを指摘する意見が掲載されています(図表4)。
<図表4 10月「主な意見」の物価に関する意見で目立ったもの>
三つ目の意見にある5年後の予想インフレ率とは、おそらく5年物の物価連動債から算出したブレークイーブン・インフレ率(BEI)のことを指していると思われますが、確かに5年物のBEIを見ると、2%を大きく超える水準で推移しています(図表5)。
<図表5 ブレークイーブン・インフレ率>
今回の「主な意見」を素直に受け取れば、次回利上げは12月?
前回9月の「主な意見」の「金融政策運営に関する意見」に関して、10月1日に配信したレポートで「ここまで利上げに前のめりなのは初めてだ」と述べましたが、実は図表6に示した通り、今回はもっと前のめりになった印象を受けています。
<図表6 10月「主な意見」に掲載された金融政策運営に関する意見で目立ったもの>
まず、図表6の最初に掲載した意見の「初動」とは、植田和男総裁も10月MPM後の記者会見で使っていた表現ですが、これが今年の12月ごろを意味するのか、来年1月ごろを意味するのかは微妙なところです。ただ、他の意見のトーンの強さと合わせると、前者である可能性が高いように思えます。
図表6の2番目に掲載した意見に、銀行貸出の増加が指摘されています。経済情勢に関する意見でも同様の指摘がありましたが、確かに最近の国内銀行の預貸を見ると(図表7)、預金の伸びが鈍化している一方で、貸出金の伸びが拡大しています。
具体的には、2013年から新型コロナ禍前までの平均2.8%に比べ、2023年以降は平均4.0%(2025年8月は4.6%)と、大きく上振れており、こうしたマネタリーな動きがインフレにどのような影響を及ぼすのか、二番目の意見の通り、注意を払う必要があるように思います。
<図表7 国内銀行の預金と貸出金>
先週のレポートでも述べましたが、10月MPMの直後に発表された10月の東京都区部消費者物価指数(東京CPI:中旬速報値)が予想以上に強い結果だったことを受け、来年1月に日銀が発表する「展望レポート」では、物価見通しが再度上方修正される可能性が高いとみています。
2025年11月5日: 10月東京CPIの衝撃、想定を超える強さに12月利上げの可能性高まる?(愛宕伸康)
その物価見通しの上方修正と同時に1月利上げをするのか、物価見通しを上方修正する前に12月利上げをするのか、日銀はどちらを選択するでしょう。見通しを外して利上げしたとの印象を与えるより、12月利上げを選択するのではないでしょうか。
いずれにせよ、11月21日に発表される10月の全国CPI、11月28日に発表される11月の東京CPI、そして12月1日の植田総裁の講演に注目したいと思います(図表8)。
<図表8 今後予定されている政策委員の講演など>
(愛宕 伸康)

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