ソニーグループとソフトバンクグループは11日、過去最高を更新する好決算を発表しました。両社とも、さらなる飛躍が期待できるビジネスを確立したと私は評価しています。

成長株としての保有を推奨します。


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ソニーグループ、営業利益で過去最高の四半期決算を発表

  ソニーグループ(6758) (以下「ソニーG」と表記)は11日、第2四半期(2025年7-9月期)決算を発表しました。継続事業【注】の営業利益は前年同期比10%増の4,290億円で、7-9月期として過去最高となりました。


【注】継続事業
ソニーGは10月1日金融事業( ソニーフィナンシャルグループ:8729 )をパーシャルスピンオフ(スピンオフを実施した元親会社が対象会社(元子会社)の株式を一部残すこと)して、本体から切り離しました。金融事業は非継続事業として会計上分離しました。金融を除く全ての事業が「継続事業」となります。


 同時に公表した通期(2026年3月期)営業利益の見通しは、これまでより1,000億円引き上げ、前期比12%増の1兆4,300億円としました。過去最高を更新する見通しです。同時に上限1,000億円の自社株買いも発表しました。


 決算を好感して、ソニーG株は12日、一時4,713円と史上最高値を更新しました。引き続き、「買い」判断を継続します。


<ソニーGの株価と連結純利益の推移:株価は2025年11月(12日)まで、連結純利益は2025年3月期実績まで)>
ソニーGとソフトバンクG、決算から読めた高成長2銘柄の保有を推奨する理由(窪田真之)
出所:QUICKおよびソニーG決算資料より楽天証券経済研究所が作成

 利益の上振れに貢献したのは、半導体事業と音楽事業です。映画『鬼滅の刃』の大ヒットが音楽事業の好調につながりました。

ゲーム事業は、一時的な損失がありましたが、PS5の販売好調・ストリーミング収入の増加で、先行きの成長期待が高まりました。


<ソニーGの9月中間決算(2026年4-9月期)セグメント情報>
ソニーGとソフトバンクG、決算から読めた高成長2銘柄の保有を推奨する理由(窪田真之)
出所:同社決算短信より楽天証券経済研究所が作成

 ソニーGの好業績に、何十年もかけて実施してきた構造改革の成果が表れています。


 ソニーGは、20世紀は製造業(エレクトロニクス事業)の成長企業でした。21世紀に入り、製造業では稼げない時代となってから大がかりなビジネス転換を行いました。今、ゲーム、映画、音楽および半導体で稼ぐ総合エンターテインメント企業として、成長期待が高まっています。


 今回の決算発表で、ソニーGはトランプ関税が継続事業に与える影響についてもコメントしています。通期のマイナス影響を700億円と見積もっていましたが、今回500億円に修正しました(200億円ダメージが減少)。


 ここにも事業構造を変えてきた成果があります。製造業中心だったかつてのソニーGならば、もっと大きいダメージを受けていたはずです。無形資産を中心に稼ぐ企業となったことで、関税影響を低く押さえられ、営業最高益を更新できる見通しとなったと言えます。


 『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』のヒットでも分かる通り、日本のアニメ、映画、音楽などコンテンツ価値は高く、今後ともソニーGの無形資産で稼ぐビジネスの成長が期待されます。


ソフトバンクグループ決算でビッグサプライズ

  ソフトバンクグループ(9984) (以下ソフトバンクGと表記)が11日発表した9月中間決算(2025年4-9月期)の連結純利益は前年同期比2.9倍の2兆9,240億円と同期間として過去最高を更新しました。事前の市場予想(QUICKコンセンサス予想)は前年同期比29%減益の7,162億円でした。

事前の予想を大幅に上回る、特大のサプライズ決算でした。


 SVF(ソフトバンク・ビジョン・ファンド)を通じて投資してきた、米国のオープンAIの投資収益拡大がこのサプライズにつながりました。オープンAIへの出資にともなう評価益が2兆1,567億円計上されました。


 オープンAIは、日本を含む欧米インドなどで利用拡大が進むChatGPT(以下「チャットGPT」と表記)を開発した企業として知られます。世界最先端のAI開発を進め、売り上げ成長率が高いものの、昨年までは先行投資費用がかさんで利益があまり上がらず、先行きが不安視されていました。


 今年は、法人向けソリューションビジネスや、マイクロソフトのアジュール向けAIで売り上げも利益も大きく伸びてきたと推定されます。


 オープンAIは未上場企業なので詳細情報が分かりませんが、ソフトバンクGの開示資料によると、オープンAIの時価評価額は、2024年3月150億ドル(約22.5兆円)→2025年3月2,600億ドル(約39兆円)→2025年9月5,000億ドル(約75兆円)と急拡大し、同社の売り上げ・利益の増加の加速に貢献していると推測できます。


 それに伴い、ソフトバンクGによる出資額(出資予定額を含む)の評価額も拡大しました。


 ソフトバンクGは、オープンAIの将来が不安視されている間に巨額投資を実施した成果が、今回の決算に大きく出た形です。出資予定額も含めて、オープンAIの11%の持ち分を保有しています。これから大きく成長する期待のある同社に、早くから重要パートナーとして入りこめた価値は大きいと思います。


 ソフトバンクGは、ボーダフォンジャパン、中国のアリババ、英国のアーム社などに投資して巨額の利益をあげてきました。

AI関連投資でも、オープンAIを中心に成長が期待できる強固なポートフォリオを築けたことは高く評価できます。


 ビッグサプライズを発表したソフトバンクGですが、決算発表後に株価は下落し、11月12日の終値は2万1,910円となりました。年初来で株価が2倍以上に上昇していたので、目先、利益確定売りが出やすくなっています。


 長期的な成長を期待するならば、保有継続が推奨されます。新規に買う場合は、押し目を待つのが良いと思います。株価水準が高いため、一度に100株を購入するのは控えた方が良いと思います。1株単位で売買できる楽天証券の「かぶミニ®」を使って、1株ずつの小口買いからスタートするのが賢明だと思います。


 なお、ソフトバンクGは、12月31日に1株→4株の株式分割を行うことを発表しています。株価は約4分の1になるので、個人投資家にとって投資しやすくなります。


AIで稼ぐ戦略が見えてきた、キーワードはクラウド・法人向け・カスタマイズ

 AI利用が世界中で急拡大し、世界中のビジネスを革新することが確実となってきました。これに伴い、AI開発やデータセンターに巨額投資を発表する企業が増えています。


 ただし、一部にAIバブル説を唱えるアナリストもいます。

AIへの巨額投資を利益につなげられない企業が出てくるという不安によります。


 私は、巨額の投資に見合うリターンがあげられる企業群とあげられない企業群に、二極化すると考えています。


  マイクロソフト(MSFT) 、 アマゾン・ドット・コム(AMZN) 、 グーグル(アルファベット:GOOGL) の3社は、巨額の投資に見合う利益を得ていくと期待されます。この3社が、世界の三大クラウドサービス(マイクロソフト「アジュール」、アマゾン「AWS」、グーグル「グーグルクラウド」)を構築しているからです。


 AIで稼ぐ最も確かなビジネスがクラウドサービスであって、この3社が日本も含めて世界のクラウドサービスの過半を支配していることが注目されます。この3社はすでにクラウドで巨額の利益を稼いでおり、投資回収はできていると考えられます。


 一方、 メタ・プラットフォームズ(META:旧フェイスブック) は、高度なAIを開発しているものの、利益回収の方策が見えていません。今後さらにAI投資を加速すると発表していることが、投資家から見てメタの不安材料となっています。


 オープンAIも、チャットGPTで有名になったものの、個人向けサービスが中心の間は、利益への貢献が小さく、先行きが不安視されていました。ところが今年に入ってから、しっかり稼いでいく企業に転換したと推測されます。


 キーワードが三つあります。「クラウド」「法人向け」「カスタマイズ」です。

以下、「クラウド」と、「法人向け・カスタマイズ」の二つに分けて説明します。


【1】クラウド:マイクロソフト「アジュール」向けAIサービス提供

 オープンAIには、マイクロソフトが大規模出資しています。マイクロソフトは出資を通じてオープンAIの独占的プロバイダーの地位を得ています。世界三大クラウドの一つである「アジュール」でオープンAI活用を進めています。


【2】法人向け・カスタマイズ:エンタープライズソリューション

 法人向けにカスタマイズされたAIを提供するサービスを米国で拡大しています。これからは、法人向けに、特定分野・特定業務に特化したAIを開発・提供・メンテナンスしていくビジネスが世界中で拡大すると予想されます。オープンAIはそこで先駆的な成功を得つつあると推定されます。


 個人向けに汎用(はんよう)AIを提供しても、あまり利益を上げることができませんが、企業向けにカスタマイズされたサービスはしっかり利益に貢献しつつ、成長していくと予想されます。


  三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306) は11月12日、自社アプリとチャットGPTの連携をスタートさせると発表しました。チャットGPTを活用して、自社サービスを個人にとって分かりやすく、使い勝手の良いサービスにレベルアップしていく狙いです。


 ソフトバンクGの子会社の携帯電話会社 ソフトバンク(9434) も、カスタマイズしたチャットGPTを業務全般で活用していく方針です。


 チャットGPTは、日本語対応も進んでいますので、これから日本で業務活用が進むと予想されます。


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2025年9月29日: ソニーグループ「買い」判断継続:金融事業を手放す理由は?(窪田真之)
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(窪田 真之)

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