長らくドル/円為替の「常識」だった日米金利差と為替の連動が揺らいでいます。2024年以降、金利差縮小にもかかわらず円高が進まない「異変」が起こっています。
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の窪田 真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 日米金利差縮小でも円高進まず。トランプ関税とデジタル赤字の影響 」
金利差だけでは説明できないドル/円の「異変」
為替を動かす要因は無数にありますが、一番重要なものは「日米金利差」です。
日米金利差が拡大すると円安(ドル高)が進み、日米金利差が縮小すると円高(ドル安)が進む傾向が、過去20年以上にわたり顕著に見られてきました。
ところが、2024年以降、日米金利差と為替の動きに、異変が出ています。日米金利差は縮小しているのに、円高が進みにくくなっています。
<ドル/円為替レートと、日米2年金利差の推移:2020年1月~2025年11月(14日)>
2024年以降、米国の連邦準備制度理事会(FRB)は利下げ、日本銀行(日銀)は利上げをしてきました。その結果、日米金利差が縮小しつつあります。これは円高(ドル安)要因です。
FRBは9月と10月に0.25%の利下げを実施しました。一方、日銀は利上げタイミングを計っています。年明けには0.25%の利上げが見込まれます。日米金利差はさらに縮小する可能性があります。
ところが、ドル/円為替レートにおいて、投機筋に円高をしかける動きはあまり見られません。日米金利差が円高要因になりそうである一方、別の要因が円安要因として働いているからです。
私は、以下二つの要因が円安圧力として働いていると考えています。
【1】日本の貿易収支が構造的な赤字に。トランプ関税により赤字拡大の可能性も。
【2】日本のデジタル赤字拡大によってサービス収支も構造的な赤字に。
この二つについてさらに深掘りしますが、その前に、日米金利差で動いてきたドル/円為替レートの過去を振り返ります。
日米金利差とドル/円の過去、2023年までの「常識」
2023年までは、ドル/円為替レートの動きは、ほとんど日米金利差で説明できました。最もよく動きを説明できるのは、2年金利差です。
2年金利差というのは、米国と日本の2年国債利回りの差です。以下で分かる通り、日本の金利は長年ほぼゼロ近辺に固定されていたので、米国金利が、ほぼそのまま日米金利差となっていました。ところが、日銀がマイナス金利を解除してから日本の金利が上昇したため、日本の金利変動も日米金利差に影響するようになりました。
<米国・日本の2年金利、および2年金利差の推移:2008年1月~2025年11月(14日)>
<ドル/円為替レートと、日米2年債利回りの差:2008年1月~2025年11月(14日)>
2008年以降の動きを見ると、日米2年金利差と、ドル/円はおおむね連動していることが分かります。
ただし、金利差だけでは説明できない時期もあります。米政府が円安を許容する時は円安が進み、米政府が円安を批判する時は円高が進みやすくなることが分かります。上のグラフに赤矢印と説明を加えたのが以下のチャートです。
<再掲:ドル/円為替レートと、日米2年債利回りの差:2008年1月~2025年11月(14日)>
【1】2008~2012年
日米金利差の縮小に従って、円高(ドル安)が進みました。
【2】2013~2014年
日米金利差が少ししか拡大していないのに、大幅な円安(ドル高)が進みました。米国政府が円安を批判しなかったことから「円安が許容されている」と思われ、過剰に円安が進みました。
【3】2015~2018年
日米金利差が拡大しているにもかかわらず、円高が進みました。
2016年の米大統領選キャンペーンで、共和党候補だったドナルド・トランプ氏(現大統領)と民主党候補だったヒラリー・クリントン氏が、ともに円安を批判したことも、円高材料となりました。トランプ氏が大統領に当選した後も、中国、日本、ドイツ、メキシコなどの対米黒字を問題視し続けたため、貿易戦争への懸念から円高圧力が続きました。
【4】2019~2020年
日米金利差が縮小し、さらに円高が進みました。
【5】2021~2023年
2022年からFRBが急激な利上げを開始、日米金利差が拡大に転じるとともに、急激な円安が進みました。
【6】2024~2025年
日米金利差が縮小したのに、円安が進みました。
それでは、2024~2025年に、日米金利差が縮小しているのに、円安が進んでいる理由について私の考えを解説します。
ドル/円に新たな円安圧力をかける要因:トランプ関税とデジタル赤字
トランプ関税の影響・デジタル赤字拡大によって、貿易・サービス収支の構造的赤字が拡大しつつあることが円安要因になっていると考えています。
金利差を巡って国際間を飛び回るマネーは、貿易・サービス収支よりもはるかに巨額なので、近年は貿易・サービス収支の変化が、為替市場で材料視されることはありませんでした。
ところが、かつて高水準の貿易黒字を稼ぎ続けた日本が、2011年以降、構造的に貿易・サービス収支の赤字国となり、その赤字が拡大する可能性が出ていることが、為替にも影響しつつあると考えています。
それを説明するために、近年の日本の国際収支の変化をご覧ください。
<日本の国際収支(暦年ベース)、主要項目抜粋:2020~2024年>
【1】日本の貿易収支が構造的赤字に。トランプ関税によりさらに赤字拡大の可能性。
日本は、戦後、巨額の貿易黒字を稼ぎ続けてきた国でした。1964年と1980年に一時的に貿易赤字になったことはありますが、それ以外は黒字でした。
ところが、近年は貿易赤字が定着しています。日本の貿易収支が構造的な赤字体質に変わったのは2011年以降です。2011~2014年まで4年連続で貿易赤字でした。東日本大震災後に、原発が停止して火力発電用のLNG輸入が増加したためです。
対米では貿易黒字を稼ぎ続けていますが、原油ガスの輸入増加により対中東で貿易赤字が続いています。今後、トランプ関税の影響で対米黒字が減少すると、トータルで貿易赤字が拡大する可能性があります。
原油ガス価格が大幅下落した2015年や2020年は貿易黒字に戻りました。ただし、原油価格が高騰した2022年以降、また貿易赤字に転落しました。2025年は原油価格の下落で赤字が縮小していますが、トランプ関税という新たな赤字材料が加わり、構造的な赤字から抜け出すのは難しくなっています。
【2】デジタル赤字の拡大
近年、貿易収支だけでなくサービス収支も赤字が定着しています。
日本がデジタル化経済の構築で米国に遅れを取っていて、日本企業がさらなるデジタル化、AI活用を進めようとする際、米国のデータセンターやクラウドインフラ(AWS、Azure、Google Cloud)など、米国製デジタルプラットフォームへ依存せざるを得なくなっていることが、デジタル赤字の拡大につながっています。
【3】対米直接投資がさらに拡大する可能性も
対外純資産が世界第2位の日本は、海外からの利息・配当金によって、毎年巨額の所得収支黒字を稼いでいます。ただし、その大半が、そのまま海外への直接投資に使われ、国内には還流していません。
今後、トランプ関税の影響で、日本企業は対米投資をさらに増やす必要に迫られます。日本政府が、トランプ政権に対して5,500億ドル(約80兆円)の対米投資を約束した影響も出てきます。今後、所得収支を上回る直接投資が必要になる可能性もあります。
トランプ関税がもたらす変化は、一時的ではなく構造的と考えられます。つまり米国は高関税国に転換し、それは元に戻ることはないと考えられます。
米国は巨額の関税収入を得たことにより、財政が一時的に黒字となりました。
当面のドル/円見通し
私はメインシナリオで、米景気ソフトランディングを予想しています。トランプ関税の影響で景気減速が見込まれるものの、景気後退は回避すると予想しています。米景気ソフトランディングを前提に、当面、1ドル=145~160円の展開が続くと予想しています。米景気が堅調である限り、大幅な円高が進むことはないと考えています。
それでは、どうしたら大幅な円高が進むでしょうか? 二つのシナリオが考えられます。
【1】米景気の急激な悪化、米利下げ加速
【2】日本の異次元金融緩和終了、日銀の利上げ加速
現時点で、どちらも可能性が低いと考えています。もし本当に【1】または【2】が起これば、日米金利差の大幅な低下によって、円高が進むと思われます。
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2025年9月30日: ドル/円145~155円レンジで膠着、トランプ関税が加速させる「構造的円安」(窪田真之)
(窪田 真之)

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