日本のGDPマイナス成長、積極財政への懸念、日中対立激化により、日本市場は株安、債券安(金利高)、円安のトリプル安に。米国の利下げ観測後退も加わり、ドル/円は155円を突破し円安基調が続く。

日銀の利上げは遠のく見込み。今後のエヌビディア決算や米雇用統計が市場の動向を左右する。


日本の財政悪化懸念拡大と米利下げ観測後退で155円に!の画像はこちら >>

日本市場のトリプル安と円安の背景

 17日に発表された日本の7-9月期国内総生産(GDP)実質年率は、予想の年率マイナス2.4%を上回り、マイナス1.8%となりましたが、6四半期ぶりのマイナス成長となりました。トランプ政権の高関税政策が大きく影響し、米国向けの自動車輸出が落ち込んだことが背景のようです。


 マイナス成長になったことで、日本銀行の利上げが遠のくとの見方から株が上昇するのではなく、景気の先行き懸念から株は下落しました。ドル/円も株下落には大きく反応せず、日銀の利上げ後退観測や、高市政権の積極財政への懸念から154円台は底堅い動きとなりました。


 そして18日の日本市場は、日中対立が懸念され、前日のダウ工業株30種平均が米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測が後退し大幅安となったことや日本の金利上昇を受けて日経平均株価は1,600円超の大幅安となりました。


 また、日本の10年債利回りは財源先送りしたままの経済対策の歳出膨張が嫌気され1.755%と17年半ぶりの金利上昇となりました。ドル/円も財政拡大懸念から155円を超え、日本市場はトリプル安(株安、債券安〈金利高〉、通貨安〈円安〉)となりました。


 高市政権は予算委員会を予算面では無難に終えましたが、日中間に大きな火種を残してしまいました。台湾有事と「存立危機事態」に関する高市早苗首相の国会答弁やそれに対する中国の大阪総領事のSNS投稿を巡って日中の対立が深まっています。


 日本政府は従来の立場を変えるものではないと説明して理解を求め、事態の沈静化を図りたいのですが、中国側は日を追うごとにますます態度を硬化しています。中国外務省は日本の渡航を控えるように国民に注意喚起し、中国教育省も日本への留学計画を慎重に検討するよう求める通知を出しました。


 また、中国の飛行機会社は日本行きの運休を発表し、ネットでは日本製品不買運動の投稿が急増するなど対立が急速にエスカレートしており、他のビジネスにもこれから影響してくることが予想され、日本経済への影響が危惧され始めています。


 7-9月期GDPのマイナス成長の要因の一つにインバウンド(訪日外国人)消費の減速(マイナス1.6%)があります。5月~9月までの香港からの訪日客数が前年を下回ったことが背景のようですが、訪日客全体の2割強を占めている中国との対立が長引けば、10-12月期GDPはプラス成長に戻るとの見方もある中、GDPにも影響が及ぶことが懸念されます。


 日中対立が日本経済にとって新たなマイナス要因となれば、日銀の利上げはますます遠のくことが予想され、ドル/円にとっては円安要因になります。


 中国も反日感情が高まり、反日運動が拡大するのは内政が不安定になることから中国も望んでいないとの見方もあり、早期に沈静化すればよいのですが。


 このように日本の積極的な財政拡大懸念、日銀の利上げ観測後退、日中対立の激化によって円安地合いが続いています。一方で日米双方からの円安けん制によって円安は抑制的な動きになることが予想されるため、ドル/円は米国要因に左右されることが予想されます。


米国の経済指標と日銀の金融政策への影響

 トランプ政権は、トランプ関税の審理、米地方選挙の全敗、エプスタイン問題などで追い詰められています。それよりも追い詰められているのは米国の若者世代との声が多いようです。その声を反映したのがNY市長選挙であり、この動きはまだまだ続くとの見方が多いようです。


 FRB高官から聞こえてくる利下げについての発言はまだ意見が分かれているようですが、FRBのタカ派が主張しているように、本当に米国経済は堅調なのでしょうか。AIバブルと株上昇の資産効果による富裕層の消費けん引だけで米国経済が堅調ならば、株価調整がくれば一気に米国経済は冷え込み、利下げ期待が高まることが予想されます。


 11月20日には、政府機関閉鎖で公表延期になっていた米9月分の雇用統計など経済指標が発表されます。しかし、結果で上下どちらに振れても9月分の過去の数字であり、しかも10月分の発表日は未定で、雇用統計は発表されても失業率などは発表されない可能性があるため市場の不透明感は続くことが予想されます。


 12月5日公表予定の11月分雇用統計も遅れる可能性があるとのことです。FRB内で意見が分かれる背景の一つに、データが不十分であるため様子見との見方もあり、ドル/円は日本の要因による円安地合いのまま動きづらい相場が続きそうです。


 18日、市場が注目していた高市首相と日銀の植田和男総裁との初会談が行われました。会談後、今後の追加利上げに関して首相から理解が得られたかどうかを記者団から問われ、植田総裁は「インフレ率が2%で持続的・安定的に着地するように徐々に金融緩和の度合いを調整しているところだと申し上げた」と述べました。


 高市首相はその説明に対して「そういうことかな」と了解していたとのことでした。また、植田総裁は「首相から政策で要望は特になかった」と述べました。


 為替については、「為替についてもちろん議論した、具体的な話は控える」と述べ、「為替はファンダメンタルズに沿って安定的に推移するのが望ましい」と述べるにとどめました。


 金融為替市場がトリプル安となっていたことから、両者からは慎重な言い回ししか聞こえてきませんでしたが、緩和要請とか利上げ拒否といった強い内容ではなかったため、市場の反応はほとんどありませんでした。


 日本市場の財政拡大懸念と日中対立激化、米国の利下げ観測後退によってドル/円は円安地合いが続いていますが、まずは11月20日のAIバブルをけん引したエヌビディアの決算発表と米9月雇用統計の発表に注目です。米9月雇用統計は過去の数字であるため、結果で上下どちらに振れても大きくは反応せず、市場の不透明感は続くことが予想されます。


 一方、エヌビディアの決算結果やフアンCEOの説明が、市場に先行きの安心感を与えるような内容であれば、米株は上昇し、米利下げ観測は後退し、ドル高となることが予想されますが、市場が満足するような内容でない場合は、米株が下落することが予想されます。


 失望感から、もし、株が急落するような場合は12月利下げ観測が一気に高まることが予想されるため注意が必要です。その場合、円安地合いのドル/円もさすがに円高に反応することが予想されます。


(ハッサク)

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