今年も年末が近づいてきています。年末には投資家も休暇に入り、市場は閑散とするといわれますが、相場が動いていないわけではありません。

特に個人にとって年末は1年間の締めとなる大切な月です。ここでどんな対策をしておくべきか、知っていれば毎年のルーティンワークとなるでしょう。


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著者の西崎 努が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 損益通算、NISA、リバランス!年越し前に知っておきたい投資の対策3選 」


お悩み

あっという間に年末が近づいてきて、投資の見直しを考えているけども…

田中 健一さん(仮名)・自営業・50歳男性(既婚、共働き、子どもは1人)


 毎日仕事で慌ただしくバタバタしている田中さんは、相場を見る時間は多くないけれど少しでも子どもの将来のためにもと投資を行っていました。初めはNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)を利用して全世界株式に投資する投資信託を積立投資からスタートしましたが、そこから他の資産にも分散投資をするようになりました。


 特に売買はせずに何年か投資をしていると、思ったより良い成果となって、資産額も増えていることに満足していました。仕事も忙しいのは相変わらずですが、年末が近づいてくると少し時間に余裕が出てきました。


 その際にふと資産運用の現状を確認してみると、資産は増えていますが当初の考えていた投資配分とはだいぶ比率が変化していました。特に株式投資の部分が大きく資産が増えたことで保有資産の多くが株式投資になっていました。


 現状はうまくいっているのでこのままでいいかと考えていましたが、株式相場が急落したときに資産が大きく目減りしたことを思い出し、年末が近づいていることから資産の見直しを行うことを決めました。


 田中さんが年末にあわせてうまく資産の見直しをするにはどうしたらいいでしょうか?


年末は個人にとって投資の締め月だが、対応に焦る必要はない

 毎年12月になると個人にとっては、1年間の締め月となりますので保有資産の状況を改めて見直す方が多くなり、私たちへの問い合わせも増えてきます。年明けになれば各金融機関から特定口座年間取引報告書が発行されることもあり、取引残高報告書とあわせて1年間の運用結果が目に見える形で現れてきます。


 最近では資産形成を目的として長期投資を意識した投資家が増えてはいますが、それでもやはり1年間の運用結果が気にならないという人は少ないでしょう。そうした点からも年末は大きな節目の月といえます。


 その年末になれば普段とは違う投資判断を求められることがあります。そこで今回は、年末~年越し前に知っておきたい投資知識についてお伝えしたいと思います。


年越し前に知っておきたい投資知識1:証券投資の利益と損失の仕組み

 損益通算という言葉は聞いたことがある人が多いと思いますが、その名称の通り投資の利益と損失を通算することでそれによって利益分に対して本来支払うはずの税金(証券投資の場合は「20.315%」。所得税+住民税+復興特別所得税の合計)が還付される制度のことです。これは売買損益だけではなく、配当や利子、分配金なども対象となります。


 最近はNISA口座から投資を始める人も多いので、課税口座の特定口座や一般口座の仕組みについて知らない人も増えているようです。ただ税金がかかるといっても特定口座の源泉徴収ありを選択して取引を行っていれば、私たちに変わって年間取引報告書を作成して税金の申告を基本的には行ってくれています。


 ただ申告をしてくれるといっても、それは取引があった場合に限りますので、もし年末にあわせて損益通算を行いたいという場合は自分で売買を行う必要がありますし、損失を繰り越したい場合(繰越控除:損益通算でも相殺しきれなかった年間の損失を、翌年以降3年間にわたって繰り越し、将来の利益と相殺できる制度)は確定申告をする必要があります。


 損益通算は利益にかかる税金が、損失をうまく利用することで軽減できる制度です。最高の投資結果である「利益しかない」という場合には使えませんが、損失をただの損に済ませずにすみます。ただ注意点として「受渡日」を基準に計算されるので、年末で損益通算を行う場合には年内に受け渡しが完了する取引になるかを忘れないように確認しましょう。


年越し前に知っておきたい投資知識2:NISAに関する制度の年末対応

 NISA口座を使った投資は年々利用人数や投資金額が増えていますが、NISA口座での投資は長期投資を前提としていることから普段はあまり売買しない人も少なくありません。そうした方から年末になるとNISA口座の対応について問い合わせが増えてきます。


 NISA口座での年末対応として、主に二つの質問が出てきます。一つは「旧NISAの非課税期間終了後の扱い」について。もう一つは「NISA口座の年内枠が余った分」についての問い合わせです。


 旧NISAのうち一般NISAの非課税期間は5年のため、その期間が過ぎると以前であればロールオーバー(旧NISAの非課税保有期間が終了した金融商品を、翌年のNISA非課税投資枠に移管すること)ができましたが、新NISA制度になってからは非課税期間終了後には特定口座に移管されます。


 そのため事前に売却しないと不利になると勘違いしている方がいますが、売却しなくとも移管時の時価が新しい取得価格になるだけなので、慌てて売却する必要はありません。


 また新NISAで年内に使える枠が余っているから投資をしなければ損だと考えている方もいますが、新NISAでは非課税期間が無期限になっているので、旧NISAと違い枠を使い切れなければ翌年以降で使えばいいだけです。年内の買い付けには限度額がありますが、無理して投資するよりは自分にあった金額で投資をする方が適切だと言えるでしょう。


 NISA口座は非課税で投資ができる良い制度ですが、その制度をうまく生かせるかどうかは各人次第です。こうした制度や投資には普段聞きなれない言葉も多くありますが、一度理解すれば翌年以降も役立つ知識です。分からないことを一つずつ丁寧に理解することが投資知識を身につける大切な行動です。


年越し前に知っておきたい投資知識3:年末には運用状況の確認とリバランスをする

 日本の株式市場は年末年始には休場となるので、最長でも12月30日で年内の取引が終了となります。上記の損益通算もNISAへの対応も最終取引日を意識して取引を行う必要があります。

そしてこれらを検討するにあたって考えておくべきことが、運用状況の確認、そして保有資産のリバランスです。


 難しいことをする必要はなく、自分が1年間行った運用成果が当初のイメージした投資目的にあっているのか、値動きは想定の範囲だったのか、投資金額は無理のない範囲かなど投資方針に沿った運用ができているのかを改めて確認すれば大丈夫です。


 そこでもし見直しが必要だと考えたり、投資資産の値動きによって当初考えていた資産配分と大きくズレが生じている場合には保有資産の比率を修正するために商品を売買したり、商品を入れ替えたりを検討します。投資方針が変わらないなら相場に合わせて比率を変更する必要はありません。自分で決めた資産配分を維持することを意識しましょう。


 投資はできればシンプルに行うべきです。分散投資と考えていろんな資産に投資をしたり、保有比率にこだわり過ぎても良い結果に結びつくとは限りません。リスクを取り過ぎたり、投資の金額過多にならないことに注意しつつ、自分が決めた投資からブレないように継続することを心がけるようにしましょう。


投資も年末の対応は知識として知っておけば安心

 証券投資における年末の対応は基本的にやるべきことは毎年同じです。損益通算やNISA対応、運用状況の確認やリバランスといったことをチェックリストのように項目としてイメージして、必要なことを対応するという流れです。


 私は年末にするべきことを忘れないように、毎年11月ごろになるとリマインダーを設定しておいて年末に備えるようにしています。


 もちろん運用成果や相場状況などは毎年違いますが、毎年確認するべきことは変わりません。

年末に対応するべきことを知っておけば年々慣れてくるでしょう。そうしてまた来年の運用に備えておくようにしましょう。


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(西崎努)

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