日銀が金融政策の目標としているインフレ率2%が実現していくと、資産を現金や預金として保有していてはお金の価値が目減りしていき、長期的に購買力が低下していく可能性が高まります。今回は長期的なインフレになぜ株式や不動産が強いのか、そしてインフレ対策として万能な外国株式や外国REITについて説明します。
インフレには短期的なインフレと長期的なインフレがある
モノやサービスの値段が上昇するインフレには、為替が円安になることで価格が上昇する短期的なインフレと、長期的な経済成長に伴って価格が上昇していく長期的なインフレがあります。
インフレは短期的なインフレと長期的なインフレに分解できる
円安による短期的なインフレ対策として外貨建て資産が有効であることは、「オールカントリー・S&P500など、実はインフレに有効な『外貨建て資産』!」で説明しましたので、今回は長期的なインフレ対策について説明していきます。
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日銀のインフレ目標は年率2%
日本銀行の金融政策の理念は「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」とされており、具体的には「物価安定の目標」を消費者物価の前年比上昇率2%と定めています。つまり、日銀の政策目標が実現されていくと、長期的には年率2%のインフレ率が当たり前になっていくのです。
次のグラフは、当初100だったお金の価値(購買力)がインフレ率(年率)0%、1%、2%、5%のそれぞれの場合に時間の経過とともにどのくらい下がっていくかを示しています。
日銀の政策目標であるインフレ率2%の場合、お金の価値(購買力)は、10年後に82、20年後には67、30年後には55、40年後には45と低下していくことになります。
お金を文字通り現金(タンス預金など)で保有していたら、この通りになります。また、現在、預金の利率は0.2%程度、個人向け国債でも1%程度ですから、円建て元本保証の預金や個人向け国債では、長期的にはインフレに負けてお金の価値(購買力)が目減りしていくことになるのです。
長期的なインフレ対策として全世界株式インデックスは圧倒的
長期的なインフレ対策として、どういった資産を保有していけばよいのでしょうか。
ここでは消費者物価指数(CPI)と、タンス預金(現金)、定期預金、全世界株式インデックス(MSCI社によるオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI))について過去33年の実績を比較してみましょう。
1991年12月の水準を100として、1991年12月から2024年12月までの33年間の推移をグラフにすると次のようになります。
日本はこの間、インフレではなくデフレの時期が長かったわけですが、それでも33年間でCPIは117まで上昇しています。タンス預金(現金)は利子を生みませんので100のまま、定期預金だとわずかにCPIを上回る118となっています。
一方、全世界株式インデックスは1,682となり33年間で約17倍と、CPIを大きく上回る結果となっています。
続いて、それぞれのデータからCPIを差し引いたインフレ率控除後の実質リターンを確認してみましょう。
タンス預金はお金の価値である購買力が85に低下していることが分かりますし、定期預金はちょうど100となっています。一方、全世界株式インデックスで保有していた場合の購買力は14倍強まで上昇しています。
過去の実績にはなりますが、長期的なインフレに対しては全世界株式インデックスが圧倒的に有利であったことが確認できます。
株式や不動産はなぜインフレに強いのか
一般的に株式や不動産はインフレに強い資産といわれています。なぜ株式や不動産はインフレに強いのでしょうか。
次のグラフは、株式や不動産などの価値を生み出す資産をイメージして、それらの価値と価格の変化を示しています。
株式や不動産などの価値を生み出す資産の資産価値と資産価格の関係
株式を発行している株式会社は、毎年、商品やサービスを提供することで売り上げを出し、費用を支払った上で利益を生み出していきます。必ずしも利益が大きく増えるとは限りませんし、時には赤字になることもあるでしょう。しかし、長期的に生き残っていく会社は利益を生み続けていきますので、株式としての資産価値が高まっていくことになります。
不動産は貸し出すことで家賃収入を受け取ることができます。1カ月だけであれば1カ月分の家賃収入しか入ってきませんが、10年間貸せば120カ月分の家賃収入が入ってきます。もちろん長期になれば途中で退去が発生して空室になるリスクも高まります。
このように株式も不動産も長期的に価値を生み続けていきますので、資産価値は基本的に右肩上がりとなります。しかし、それぞれの価格である株価や不動産価格は、必ずしも資産価値とピッタリ一致するわけではありません。
市場のセンチメントを反映して、時には大幅に下落したり、急激に上昇したり、上がりも下がりもしない小康状態が継続したりしていきます。しかし、5年、10年、20年と長期的に見れば、資産価値が上昇していくのであれば、資産価格も上昇していくことになるのです。
つまり、株式や不動産は長期的なインフレに強い資産と言えるのです。
インフレ対策として万能な資産は外国株式や外国REIT
次の図は、横軸に円建て資産か外貨建て資産かを、縦軸に付加価値を生み出す資産か生み出さない資産かを取って、さまざまな資産(アセットクラス)を分類したものです。
冒頭で触れたように、短期的なインフレ対策としては外貨建て資産が有効ですし、長期的なインフレ対策としては本記事で説明したように株式や不動産が有効です。これら両方の性質を兼ね備えた資産としては、外国株式や外国不動産投資信託(REIT)が適切ということになります。
ここで外国株式などと書いていますが、もちろん個別株として保有する必要はなく、投資信託を活用して幅広い銘柄に分散投資していくのが現実的な選択肢と言えます。外国株式や外国REITを対象とした投資信託を保有していくことが、インフレ対策として有効なのです。
いわゆるオールカントリーなどの全世界株式インデックスファンドを保有しておけば、短期的にも長期的にも、インフレ対策として有効と言えるのではないでしょうか。
金もインフレ対策として一定程度は有効
図の中央下に「金などのコモディティ」を配置していますが、ここでは金を例に補足しておきます。
金は世界的にはドル建てで取引されることが多いかもしれませんが、日本人的には円建てで取引されており、ある意味、金そのものが通貨の一つとも言えます。よって、ここでは円建てでも外貨建てでもないという意味で横軸方向では中央に配置しています。
一方、付加価値を生み出すかどうかという視点において、金は付加価値を生み出しません。金を保有していても利息はもらえませんし、1kgを30年間保有したとしても3kgに増えることはなく1kgのままだからです。そういう意味では付加価値を生み出さない資産と言えます。
しかし、世の中のモノの値段が上昇するインフレ局面では金もモノの一つですから、価格は上昇する傾向があります。そういう意味で、インフレ対策としては一定の効果が期待できます。
しかしながら、20年、30年といった長期的な視点では株式や不動産と比べると必ずしも勝るとは言えないと考えており、ポートフォリオに組み入れるとしても1割程度を上限とするのがよいと考えています。
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