今週の株式市場は、日経平均が節目の5万円台を回復し、米国株も主要3指数がそろって上昇するなど復調の兆しを見せています。AI・半導体相場は終わっていませんが、今後は中心銘柄が入れ替わっていく可能性も。
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の土信田雅之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 選別色強まる米国株のAI相場、「中華AI」はどうなっている? 」
持ち直しを見せる今週の株式市場
11月最終週となる今週の株式市場は、日経平均株価が27日(木)の取引で節目の5万円台を回復しているほか、米国株市場でも、主要株価3指数(ダウ工業株30種平均、S&P500種指数、ナスダック総合指数)がそろって、足元で下回っていた25日・50日移動平均線を再び上抜けるなど、これまでのところ、復調の傾向が目立っています。
<図1>日米中主要株価指数のパフォーマンス比較(2024年末を100)(2025年11月26日時点)
こうした相場展開の主因として、米連邦準備制度理事会(FRB)による12月の利下げ期待が再び高まったことが挙げられ、最近まで軟調だったAI・半導体関連株にも買い戻しの動きが広がりました。
しかし、「AI相場が復活し、再び高値を更新していくのか?」と言えば、微妙な状況かもしれません。
というのも、AI・半導体関連銘柄における株価の戻りには温度差があり、これまでのような「AI関連のテーマであれば、とりあえず株価が上昇する」というフェーズから、銘柄の選別が行われる「次のフェーズ」へと移行しつつあるような動きも見られます。
選別が進む米国のAI・半導体銘柄
具体的な銘柄選別の視点としては、「しっかり成長できているか(売上や利益を伸ばしているか)?」「AI投資の財務リスクは大丈夫か?」「手掛けるAI投資や技術・サービスが競争優位性を持っているか?」といったものが考えられ、期待が先行する局面から、現実的な問いが投げかけられる局面が始まったと言えます。
こうした、選別の視点の表れを象徴する出来事として、米アルファベット(Google)株価の動きが挙げられます。
<図2>米アルファベット(日足)の動き(2025年11月26日時点)
上の図2を見ても分かるように、アルファベット株は今週も高値を更新する動きが続いており、25日(火)の取引では、アルファベットの時価総額が7年ぶりにマイクロソフトを逆転したという報道もありました。
アルファベット株は、8月ごろまでは他のM7銘柄(エヌビディアやマイクロソフト、メタ・プラットフォームズ)と比べると、かなり出遅れていたのですが、夏場以降に大きく株価が上昇しています。
<図3>M7銘柄のパフォーマンス比較(2024年末を100)(2025年11月26日時点)
アルファベットは、AIモデルの「Gemini」をはじめ、クラウド基盤、そしてAI専用半導体(TPU)を全て「自前」で持っているという強みがあり、ここに来て再評価されたことが株価を上昇させています。
これまでの市場は「エヌビディアの高性能半導体(GPU)をどれだけ確保できるか」が企業の競争力として評価されてきましたが、高価かつ消費電力も莫大(ばくだい)という課題がありました。
これに対して、アルファベットのTPUは電力効率に優れ、コストパフォーマンスが高いという評価が出始め、実際に、メタ・プラットフォームズがアルファベット製TPUの採用を検討し始めたという報道もありました。さらに、アルファベットの最新AIモデル「Gemini 3.0」の性能も、オープンAIの「ChatGPT」を上回っているという評判も出てきています。
このように、これまで一強だったエヌビディアやオープンAIに新たなライバルが出現したという見方がアルファベットの株価を押し上げ、一方でマイクロソフトやエヌビディアの株価は伸び悩んでいるほか、メタ・プラットフォームズのパフォーマンスが落ちています。
AI・半導体相場はまだ終わったわけではありませんが、今後はこうした競争力も銘柄選別の重要な判断材料になってくると思われます。
中国本土株市場のAI相場:熱狂の裏側
ここで、視点を中国株市場に移してみます。
今年1月の「DeepSeekショック」以降、いわゆる「中華AI」への注目度が一気に高まり、香港株市場や、本土株市場(上海および深セン)で関連銘柄がにぎわう展開となりました。
しかし、香港市場のハイテク株指数である「ハンセンテック指数」と、米国の「ナスダック100指数」を比較すると、足元ではハンセンテック指数の勢いが落ち、ナスダック100と変わらない水準まで低下しています。これは、米国同様に過度な期待が修正されている可能性があります。
<図4>DeepSeekショック以降の香港ハンセンテック指数とナスダック100のパフォーマンス比較
では、具体的にどのような銘柄が買われていたのでしょうか? 香港市場のアリババやテンセントは有名ですが、今回の主役は、あまりなじみのない「本土系(上海・深セン市場)」の銘柄について探っていきます。
まず、海外投資家が香港経由で本土株を売買する「ストックコネクト(ノースバウンド)」のデータをチェックします。
<図5>「ストックコネクト(ノースバウンド)」の売買代金の推移(2024年6月~2025年10月)
上の図5は、「ストックコネクト」におけるノースバウンドの売買代金の推移です。
ストックコネクトとは、上海証券取引所または深セン証券取引所と香港証券取引所を相互に接続し、それぞれの証券市場の株式を、香港取引所を経由して売買できるようにする制度で、これにより、以前は直接取引が難しかった中国本土の株式にも、海外の個人投資家が香港市場を通じてアクセスできるようになりました。
海外投資家がストックコネクトを通じて、本土株を売買することをノースバウンド、中国本土の投資家が香港株を売買することをサウスバウンドと言います。
図5を見ても分かるように、DeepSeekショック直後の2月と3月、そして、夏場(7~9月)に大きく売買代金が増加している様子がうかがえます。なお、売買が落ち込んでいた4月と5月は関税絡みで米中対立が懸念されていた時期、10月は国慶節の連休による営業日の少なさが影響していると考えられます。
では、このノースバウンドでどんな銘柄が売買されていたのでしょうか?
<図6>ノースバウンド経由の売買代金上位銘柄(上海)(2025年10月分)
<図7>ノースバウンド経由の売買代金上位銘柄(深セン)(2025年10月分)
こうした売買代金ランキング上位に顔を出す、注目のAI・半導体関連銘柄をいくつかピックアップしてみます。これらは今年に入ってから株価が急騰しており、中には米国銘柄をしのぐパフォーマンスを見せるものもあります。
■世界市場で戦っている「実力派」
以下の企業、エヌビディアなどの米巨大テック企業のサプライチェーンにも食い込んでいる銘柄です。
例えば、光通信モジュールの世界シェアトップ企業の中際旭創(Zhongji Innolight/ 深セン300308)は、エヌビディアのGPUサーバーに大量採用されているほか、成都新易盛通信技術(Eoptolink/ 深セン300502)も中際旭創に次ぐ光モジュール大手で、アマゾンやメタ・プラットフォームズなどで採用されています。
また、勝宏科技(Victory Giant/ 深セン300476)は、AIサーバーに使われる高密度プリント基板(HDI)の大手で、エヌビディアの認定サプライヤーになっています。
このほか、立訊精密工業(Luxshare/ 深セン002475)は、iPhoneの組み立てで有名な電子機器受託製造サービス(EMS)の大手ですが、現在はAIサーバーの組み立てや高速配線ケーブルへ事業をシフトし、台湾勢に挑んでいます。
■国策で支えられる「国産代替派」
以下の企業は、米国の制裁による技術封鎖に対抗し、中国政府が「国策」で買われている企業群になります。
北方華創(Naura/ 深セン002371)は、「ナウラ」とも呼ばれる中国最大の半導体製造装置メーカーです。米国製の製造装置が入手困難な中、中国国内の工場は同社の装置を積極的に購入しており、「Buy China(国産化)」政策の筆頭銘柄であるほか、海光信息(Hygon/ 上海688041)もサーバーやデータセンター向けの高性能プロセッサ(CPU)を手掛けるメーカーで、こちらも、政府や国有企業による「Buy China」政策の恩恵を受けています。
また、中科寒武紀(Cambricon/ 上海688256)は、「カンブリコン」と呼ばれ、中国のエヌビディアに例えられている企業で、AIチップの設計・開発を担っています。
<図8>主な中国AI・半導体関連銘柄のパフォーマンス(2024年末を100)(2025年11月24日時点)
そして、これらの銘柄は上の図8でも確認できるように、今年に入ってから株価を大きく上昇させていることが分かります。
なお、残念ながら、ここで紹介した銘柄を個別株として楽天証券で取引することはできませんが、間接的にこれらの銘柄が含まれている上場投資信託(ETF)を通じて取引することになります。
【参考】中国上海・深セン市場のAI・半導体関連銘柄が組み込まれている主なETF
※楽天証券で売買可能なもの
中国のAI戦略 ~「Buy China」と「東数西算」~
こうした中国銘柄がここまで買われた背景には、先ほども登場した「Buy China」のような、強力な国家プロジェクトがあります。
■「Buy China(国産化)」政策
米国の輸出規制に対抗し、半導体や製造装置、サーバーを「全て中国産でつくる」という方針です。これにより、国内企業の製品には大きな需要が生まれます。
■「東数西算(とうすうせいさん)」政策
「東部のデータを、西で計算する」という巨大プロジェクトです。経済が発展している沿岸部(東部)のデータを、再エネが豊富で電気代の安い内陸部(西部)に送って処理させようという計画で、これにより西部には巨大なデータセンター建設ラッシュが起きました。
課題を抱える中華AIと、民間・公共セクターの違い
「国策に売りなし」という相場格言がありますが、中国のAI事情はそう単純ではありません。足元では、「ある歪み」が指摘され始めています。
今年の7月ごろに、中国メディアやロイター通信などで「地方政府が建設したデータセンターの稼働率が3割以下にとどまっている」という報道がなされました。また、7月の重要会議では、習近平国家主席自らが、地方の無計画な重複投資を「悪性競争」として厳しく批判したとも報じられています。
なぜ、こんなことになっているのでしょうか? ここで「銘柄選別」のヒントとなるのが、「公共セクター」と「民間セクター」の違いになります。
公共セクターは地方政府主導で行われ、補助金目当てに、需要のない内陸部に「箱(建物)」だけが大量に建設されました。また、米国からの制裁で肝心の高性能AIチップが入手できず、中身は旧世代のサーバーが多く、また、沿岸部から遠すぎて通信遅延が発生するため、AI開発企業からは敬遠され、「デジタル廃墟」化の懸念を抱えています。
一方の、アリババやテンセントを中心とする民間セクターは、ユーザーの多い沿岸部(北京、上海、深セン)に自前のデータセンター(クラスタ含む)を持っているほか、データセンターの建設もビジネスの実需に基づいているため稼働率は極めて高く、むしろ供給能力不足でひっ迫しています。
彼らは独自のルートでチップを調達したり、自社開発チップを用いたりと、したたかに対応しています。もちろん、国策が絡んでいる以上、アリババもテンセントも西部にデータセンターを建設・保有していますが、ビジネス専用で使うのではなく、データの保管をメインに使っているようです。
そのため、中華AIについても今後は選別が進む可能性があり、その視点として以下が挙げられます。
■「グローバル実需」組(中際旭創、新易盛など):
中国経済がどうあれ、米国のAIブーム(エヌビディアなどの好調)が続く限り、業績が伸びる銘柄。現時点で最も手堅い選択肢かもしれません。
■「国策ど真ん中」組(北方華創など):
米中対立が激化すればするほど、国家予算が投下される銘柄。ただし、海外との技術的なキャッチアップやブレイクスルーがない限り、成長には限界があるかもしれません。
このほか、単に「公共事業でサーバーをつくっているだけ」の企業や、実態の伴わないAI関連株は、習近平氏の「過剰投資批判」を受けて、今後淘汰(とうた)されていくリスクがあります。
冒頭でも述べたように、11月に入って軟調な場面が目立っていたAI・半導体相場ですが、足元で復調の兆しを見せています。
(土信田 雅之)

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