11月に急落した米AI株は、足元では順当に持ち直し、リズムを見せている。しかし、筆者は、この相場の復調路が年末年始を無難に通過できるか、依然として警戒を拭えずにいる。
サマリー
●足元の米AI相場の復調リズムが、年末12月、新年1月へすんなり続くか、まだ疑念を拭えない
●11月の相場調整から浮上した諸問題は、2026年の展開をつかむ上で重要な示唆になっている
11月調整からの戻り
米国AI(人工知能)株相場は、ソフトウエア銘柄の花形パランティア・テクノロジーズの急反落がトリガーになって、11月第1週から他の銘柄を巻き込んで、3月以来の深い調整に陥りました(図1)。第2週は続落、第3週は底練り(底値圏で小幅な上げ下げをしている状態)不調でさらに下落、ただし持ち直す銘柄との二極化が見られ、第4週には復調の下地形成が観察されました。
<図1>米AI主要銘柄 11月調整を経て
12月に入ると、神経質な高下を繰り返しながらも、徐々に押し目買い勢が優勢になっています。個別銘柄・業種間でチグハグな上下動が錯綜(さくそう)しがちな場面であり、相場のどこを見るかで、復調リズムも見えにくい展開になっています。
筆者は、個別銘柄の不均衡をならして見るために、銘柄分散効果のある上場投資信託(ETF)で相場のリズムを計測しています。
図2は、AIテック銘柄の比重が高いTECLというレバレッジETFと対比するため、ナスダック100のレバレッジETFであるTQQQ、テック株から景気・バリュー株へよりバランスの取れた同SPXL、半導体銘柄の同SOXLを、11月3日基点で平準化して並べています。11月第1、2、3、4、12月第1各週の相場の特徴がシンプルに読み取ることができるでしょう。
<図2>TECL、TQQQ、SPXL、SOXL
もっとも、足元で相場が持ち直しつつあるとは言え、年末12月、新年1月へと復調路がすんなり持続するか、まだ疑念を拭えずにいます。また、この11月の相場調整が2026年の相場展開において重要な示唆になっているかもしれないと考えています。11月の相場下落から足元の復調、さらには次の反落リスクまで、詳細に検討しているのはそのためです。
読み取るべき核心
11月のAI株の反落は、第1に、筆者が数カ月前から注意喚起してきた相場フロス(小さな泡)の破裂という自律調整の一環として捉えられます。それだけに、あらかじめリスク回避の構えを取っていたため、パランティア株からの急落の広がりを見て、早々に行動に移しました。
第2に、株価収益率(PER)600倍以上だったパランティア株の下落がきっかけになっただけに、バリュエーション(企業価値評価)問題が浮上しました。
同時に、AI半導体の盟主エヌビディア社とオープンAIを軸に広がる主要AI企業間の循環取引、データセンターなどAI関連の過剰投資、そのために増大する資金調達(債務)の負担が疑問視され、採算性が問われ、バブル懸念を呼び起こしました。
第3に、「エヌビディア社×オープンAI」陣営が、アルファベット社の挑戦を受けていることです。AI分野の勢力図が変わると、今回急落した「エヌビディア社×オープンAI」陣営の株の反発力が損なわれ、反落トリガーになるリスクも排除できません。
アルファベット社は今年の初めには、AI普及でグーグルの検索、広告収入が減り、負け組になるとの声もありました。しかし、同社AIのGemini3.0はオープンAIの最新で最強とされたChatGPTの性能を超えるとも言われています。
アルファベット内製のAI半導体「TPU」は、圧倒的優位とされてきたエヌビディア社の汎用AI半導体GPUから、一定のシェアを奪うと目されています。
また、中国のDeepSeekは、GeminiとChatGPTの最新版に負けない性能を、数十分の一のコストで実現すると言われています。AI分野のけん引役が分散されていくことは、AIの裾野を広げると期待される一方、銘柄・業種別の株価の浮沈を増幅させるリスクにもなり得ます。
年末年始相場をどう読むか
相場が急落に見舞われた後、その収束過程では、利益確定から損切りに至る投げ売り、それをあおる投機的ショートと、そのショートカバーと押し目狙いの買いの勢いを観察します。その上で、相場がある程度反発し、上昇が止まると、既存の含み損ポジションの戻り売りが相場を再反落させることもあります。
11月の主要銘柄の落ち込み具合からすると、よほど強い好ニュースの支援が連続するくらいのことがなければ、相場が上昇トレンドにすんなり戻るのは難しいかもしれない、と慎重スタンスを崩さずにいます。特に、深みにはまったパランティア、循環投資への懸念が出ているエヌビディア、というAIソフトと半導体の2トップ銘柄を、この観点から注視しています。
12月はこの後、10日に米連邦公開市場委員会(FOMC)、19日に意外と世界の市場関係者から注目度が高い日本銀行金融政策決定会合、クリスマス前後の休暇、年末年始要因などがありFV、神経質な相場の復調路がシンプルに通過するのは難しいかもしれません。
来る場面の相場リズムを単純に解析すると、「上旬に揺れ戻しても、中旬は足踏みか反落か、下旬は銘柄によって反発か続落か」と示唆されます。この延長線上では、新年にも11月下落からの波紋が残りそうと示唆されます。
アルファベット社は、その株を長期バリュー投資家と知られるバークシャー・ハサウェイ社が購入したことが明らかになった後、量子コンピューティングの新技術、高性能のGemini3.0、TPU販売開始と好材料が相次ぎ、相場材料的には勝ち組と言えます。
しかし、勝ち組であっても、11月末から12月初頭には反落しています。これは、相場が相対的に高まった分、リバランスやローテーションのための売り圧力を受けたものです。
材料の裏付けがある分、押し目狙いの買いは早めに現れ、調整は浅く、反発力も早々に見せつつありますが、年末年始にかけて他の銘柄が広範に下落する場面では、その損失を埋め合わせるために売られる展開はあり得ます。
速く高いAI相場の自律調整はもとより、バリュエーション問題、相場の勢力図の変転は、2026年にも引き継がれるでしょう。そのことを踏まえて、11月に深い下落に見舞われた銘柄と、堅調を保った勝ち組銘柄の値動きを対比しながらの観察・対応は、年末年始のみならず、2026年の相場への備えとして示唆に富むでしょう。
*本稿は個別銘柄を推奨するものではありません、投資はご自身の判断と責任において行ってください。
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(田中泰輔)

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