今週の米国株市場は主要3指数がそろって反発するなど明るさを取り戻しつつあります。テクニカルでも好転の兆しが見られますが、再び高値を更新し、年末ラリーへとつながるでしょうか? 試金石となるのは、FOMCのドット・チャートの行方とAI関連銘柄の選別動向です。

トランプ関税を巡る法廷闘争も無視できない要素となりそうです。


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著者の土信田 雅之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 米利下げ期待&AI銘柄物色の広がり、戻り基調はどこまで続く? 」


回復基調をたどる株式市場は再び高値を更新できるか?

 12月相場入りとなった今週の株式市場は、先週からの持ち直し基調が続いています。


 4日(木)の取引終了時点で、日経平均株価は節目の5万1,000円台を回復させたほか、東証株価指数(TOPIX)も最高値を更新する動きを見せています。また、米国市場に目を向けても、3日(水)時点でダウ工業株30種平均、S&P500種指数、ナスダック総合指数の主要3指数がそろって反発するなど、市場のムードは明るさを取り戻しつつあるようです。


<図1>日米主要株価指数の推移(2024年末を100として指数化)

※日本と中国市場は12月4日、米国は3日時点


米利下げ期待&AI銘柄物色の広がり~相場の戻り基調はどこまで続く?(土信田雅之)
出所:MARKETSPEEDIIデータを元に作成

 また、米S&P500とナスダック総合の日足チャートを見ると、両指数ともに25日移動平均線を回復し、直近の高値を結んだ「上値ライン」を上抜けています。目先の相場は、再び上方向への意識を強めている様子が感じられます。


<図2>米S&P500(日足)とMACDの動き(2025年12月3日時点)
米利下げ期待&AI銘柄物色の広がり~相場の戻り基調はどこまで続く?(土信田雅之)
出所:MARKETSPEEDII

<図3>米ナスダック総合(日足)とMACDの動き(2025年12月3日時点)
米利下げ期待&AI銘柄物色の広がり~相場の戻り基調はどこまで続く?(土信田雅之)
出所:MARKETSPEEDII

 こうした株価上昇の背景にあるものとして、「来週に迫る米FOMCでの追加利下げ期待の高まり」と、「AI・半導体関連銘柄の物色の広がり」の2点が挙げられます。


 しかし、このまま米国株市場が再び直近の高値を更新し、さらに上値を伸ばしていけるかどうかについては微妙かもしれません。


米国経済と金融政策:来週のFOMCがカギを握る「バリュエーション」

 まずは、足元の株式市場を支えている要因のひとつである「米追加利下げ期待」について整理していきます。


 今週3日(水)に公表されたADP雇用統計では、非農業部門の雇用者数が予想外に減少したほか、同日に公表された11月ISMサービス業景況感指数も52.6と、市場予想(52.5)をわずかに上回ったものの、項目別に見ると「雇用」や「価格」といった指数が弱含んでおり、トータルで見れば、「米景気を支えるためには利下げが必要である」との見方を補強する結果となりました。


 11月相場では、AI・半導体銘柄に対する過熱感や割高感が意識され、株価が修正される場面がありました。

先週あたりからその調整も一巡しつつありますが、一部の銘柄については依然として株価収益率(PER)などの指標面で割高感が残っています。


 そのため、割高感を抑え込んで株価が上昇していくには、来週12月9日(火)から10日(水)にかけて開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)の動向次第の面があります。


 現時点では、来週のFOMCで利下げが決定される可能性が高いとみられているため、今回のFOMCでの最大の焦点は、利下げの有無そのものよりも、金融政策と併せて公表される「ドット・チャート(2026年の金利見通し)」の方になります。


<図4>前回および前々回のFOMC参加者による政策金利見通し(ドット・チャート)の様子
米利下げ期待&AI銘柄物色の広がり~相場の戻り基調はどこまで続く?(土信田雅之)
出所:FRB公表データより作成

 ドット・チャートとは、FOMC参加メンバーが適切と考える政策金利の水準を点(ドット)で示したものです。


 もし米連邦準備制度理事会(FRB)が「インフレ再燃リスク」を警戒し、来年(2026年)の利下げペースを緩める姿勢(タカ派的)を示せば、市場では「材料出尽くし」による利益確定売りが出る可能性があり、逆に、ハト派的な姿勢が示されれば、年末ラリーへの号砲になるかもしれません。


 また、次期FRB議長の人選に関するニュースも報じられており、FRBの政策スタンスの変化については、引き続き相場のムードを左右する材料として注視しておく必要があります。


AI・半導体銘柄の「物色の広がり」と「選別」

 このように、利下げ期待による金利低下が株式のバリュエーション(割安・割高の判断)を支える一方で、もうひとつの上昇要因となっているのが、「AI・半導体関連株に対する物色の広がり」です。


 今週の相場において、その象徴的な動きとなったのが、12月2日(火)の取引で株価が急騰した クレド・テクノロジー・グループ・ホールディング(CRDO) と モンゴDB(MDB) です。両社ともに、好決算を発表したことで株価が大きく跳ね上がりました。


<図5>クレド・テクノロジー(日足)とMACDの動き(2025年12月3日時点)
米利下げ期待&AI銘柄物色の広がり~相場の戻り基調はどこまで続く?(土信田雅之)
出所:MARKETSPEEDII

 クレド・テクノロジーは、データセンター内の高速通信ケーブル技術を手掛けている企業です。


 例えば、エヌビディアのGPUなどのAIサーバーは、計算速度がすさまじく速いですが、その計算結果を隣のサーバーに送る「道(ケーブル)」が遅かったり、渋滞したりすると、性能をフルに発揮できません。クレド社のケーブルは、この「通信のボトルネック」を解消する技術を持っています。


 決算では売上高が前年比約3.7倍に急増しており、巨大IT企業(ハイパースケーラー)がデータセンターの拡充とともに、こうしたデータを運ぶ「足回り(ケーブル)」の整備に巨額投資を行っている様子が浮き彫りになりました。


<図6>モンゴDB(日足)とMACDの動き(2025年12月3日時点)
米利下げ期待&AI銘柄物色の広がり~相場の戻り基調はどこまで続く?(土信田雅之)
出所:MARKETSPEEDII

 また、モンゴDBは、「Atlas(アトラス)」と呼ばれるデータベース機能をクラウド上で提供している会社です。


 従来型のデータベースは、データの形式(フォーマット)を事前に細かく指定する必要があり、後からの変更が大変なのですが、モンゴDBが提供するデータベースは、データを「書類(ドキュメント)」のような形式でそのまま保存することが可能なため、例えばソフトウエアの開発途中で仕様が変わっても柔軟に対応できます。


 決算では、主力のクラウドサービス「Atlas」の売上が前年比30%増となったほか、1株当たり利益(EPS)が市場予想を約67%も上回り、業績見通し(ガイダンス)も上方修正されたことなどがサプライズとなって、株価を押し上げました。ちなみに、モンゴDBは前回決算(8月)でも株価が大きく上昇しています。


 このように、物色がAIの「周辺」へと波及していったこと自体は、相場の裾野が広がるという意味で歓迎すべきですが、これらの企業の好業績が結局はマイクロソフトやアマゾン・ドット・コムといったごく少数のハイパースケーラーによる「巨額の設備投資」に依存しているという点には注意が必要です。


 仮に、AIサービスの収益化に時間がかかったり、米景気が後退してハイパースケーラーがAI投資の手を緩めたりすれば、サプライヤーである周辺企業の業績ははしごを外されたように急低下するリスクがあります。


 実際に、ハイパースケーラー自体の株価推移を見ても、「選別」の色が濃くなっています。


<図7>マグニフィセント・セブン(M7)銘柄のパフォーマンス比較(2024年末を100)
米利下げ期待&AI銘柄物色の広がり~相場の戻り基調はどこまで続く?(土信田雅之)
出所:MARKETSPEEDIIデータを元に作成

 アルファベット(グーグル)が高値圏を維持する一方で、マイクロソフトやメタ・プラットフォームズ、アマゾンなどの株価は伸び悩んでおり、明暗が分かれています。


 アルファベットが評価されているのは、前回のレポートでも指摘した通りですが、着実に「業績面でAIによる収益貢献が見えているか?」「財務リスクは適正か?」「提供する技術に競争優位性があるか?」といった視点を中心に、銘柄が選別されていくフェーズに入っていることが確認できます。


▼11月28日のレポート

AI・半導体相場、次の主役は?DeepSeek以降の「中華AI」注目銘柄(土信田雅之)


 そのため、足元で見せているAI・半導体株の復調は、直ちに「AI相場の第二幕」につながるのかは、最近になって注目され始めた「フィジカルAI」関連銘柄などへの物色の波及効果なども含めて、「勝ち組」を見極めていく必要がありそうです。


思わぬ「横やり」にも注意:トランプ関税と法廷闘争

 これまで見てきたように、年末相場に向けては、来週の米FOMCの動向と、AI・半導体関連銘柄の選別動向が鍵を握ることになりますが、このほかにも注意しておきたいことがあります。


 そのひとつが、「トランプ関税を巡る訴訟問題」です。


 現在、米連邦最高裁判所ではトランプ米大統領が発動した関税(特に国際緊急経済権限法[IEEPA]に基づく「普遍的関税」や「人身売買対策関税」など)の合憲性を巡る審理が大詰めを迎えています。


 11月の口頭弁論では、最高裁判事らが大統領の権限拡大に懐疑的な姿勢を示したとの報道もあり、市場は判決の行方について固唾(かたず)をのんで見守っています。


 違憲(関税無効)となった場合と、合憲(関税維持)となった場合のそれぞれの考え得るシナリオについて、簡単に整理してみたいと思います。


1. 違憲判決(関税が無効)となった場合


 トランプ政権にとっては「敗北」となりますが、株式市場にとってはプラス材料になりそうです。また、関税が無効になることによって、物価押し上げ圧力が後退し、消費者の購買力が回復し、実質国内総生産(GDP)にはプラス効果も期待されます。


 その一方で、既に徴収された関税を企業へ返還する義務が生じる可能性があります。これは米国政府にとって巨額の突発的な財政支出となり、債券市場にとっては、「財政悪化」という別のショックが走る可能性があります。


2. 合憲判決(関税が維持)となった場合


 トランプ政権の関税政策が信任を得た形となり、これまでの状況が続くことになります。引き続き、スタグフレーション(輸入物価の高止まり[インフレ]と、貿易量減少による成長鈍化)が懸念されるほか、政府にとっては関税収入が維持されるため、減税政策の原資としての計算が立ちやすくなります。


 関税の影響自体は、すでに株式市場などでかなり織り込まれている面があるため、市場の反応は限定的かもしれません。


 このように整理していくと、仮に違憲と判断された場合、株式市場が上昇で反応する可能性は高そうですが、専門家の間では、仮に今回争われている「IEEPA」に基づく関税が違憲となっても、トランプ米大統領が即座に「通商拡大法232条(安全保障)」や「通商法301条(不公正貿易)」といった別の法的根拠を用いて、同等の関税を再び発動することも考えられます。


 したがって、違憲判決が出て、株式市場の初期反応が上昇したとしても、関税そのものが完全になくなるわけではなく、形を変えて復活する可能性がある以上、その賞味期限が短くなるかもしれないことは想定しておく必要があるかもしれません。


(土信田 雅之)

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