ブロードコムの2025年10月期4Qは28.2%増収、62.3%営業増益。特注型AI半導体の受注が好調で、全社受注残高は前3Q末1,100億ドルから前4Q末1,620億ドルに増加。
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「 決算レポート:ブロードコム(特注型AI半導体が引き続き好調) 」
毎週月曜日午後掲載
本レポートに掲載した銘柄: ブロードコム(AVGO、NASDAQ)
1.ブロードコムの2025年10月期4Qは28.2%増収、62.3%営業増益。
ブロードコムの2025年10月期4Q(2025年8-10月期、以下前4Q)は、売上高180.15億ドル(前年比28.2%増)、営業利益75.08億ドル(同62.3%増)となりました。
製品別売上高を見ると、セミコンダクター・ソリューションズの中のAI関連売上高が65億ドル(前年比75.7%増)となりました(AI関連売上高は決算電話会議における会社側開示の概数。以下同様)。前3Q52億ドルからさらに増加しました。AI関連の中でブロードコムの特注型AI半導体である「XPU」は顧客が採用を増やしており、生成AIの学習、推論とアプリケーションの駆動に使われています。
また、前3Qに受注した大口契約100億ドルは大手生成AI開発会社、アンソロピック向けの第7世代TPU「アイアンウッド」であることも明らかになりました。前4Qにはアンソロピックから2026年後半の納入予定で110億ドルの追加発注を得ました。
他の顧客は独自のXPUを導入する模様ですが、TPUとXPUが予想以上に大手クラウドサービス会社と生成AI開発会社に浸透していることがわかってきました。また、前4Qに5社目の顧客から10億ドル規模の受注がありました。2026年後半に納入予定です。XPU以外のAIネットワーキングの分野も需要が増えています。ブロードコムのAI関連売上高の好調にはこのような背景があります。
一方で、非AI関連売上高は45.7億ドル(同0.9%増)となりました。季節的にワイヤレス関連が増加しましたが、前年比では横ばいでした。
インフラストラクチャー・ソフトウェアは、69.43億ドル(同19.2%増)となりました。仮想化ソフト「VMware」の買い切り型からサブスクリプション契約への転換が進みました。
表1 ブロードコムの業績
表2 ブロードコムのセグメント別売上高内訳と前年比:四半期ベース
表3 ブロードコム:セグメント別業績(四半期)
2.今期、来期ともに好業績が続こう。
2026年10月期1Qの会社側売上高ガイダンスは191億ドル(前年比28.1%増)です。このうちAI関連は82億ドル(同2.0倍)、非AI関連は41億ドル(同0.3%減)、インフラストラクチャー・ソフトウェアは68億ドル(同1.4%増)です。AI関連は後述のような豊富な受注残を背景に高成長が予想されますが、非AIは横ばいと予想されます。インフラストラクチャー・ソフトウェアは今1Qは伸びが鈍化する見通しですが、2026年10月期通期では会社側は10%台前半の伸びを予想しています。
受注残高は前3Q末1,100億ドルから前4Q末1,620億ドルへ増加しました。前4Q末1,620億ドルのうち、730億ドルがXPUとAIデータセンターに導入されるDSP、レーザーなどの光学部品、PCI Express(高速シリアル通信規格)スイッチなどのAI関連製品です。この730億ドルの契約が今後18カ月間で納入される見込みです。
また、会社側では今後も受注は増えるとしています。XPUの性能についても、汎用AI半導体はソフトウェアを使わなければ実現できない性能があるが、XPUはハードウェアで様々なことが実現できるとしており、エヌビディア、AMDのような汎用AI半導体に対する特注型の優位性を強調しています。
楽天証券では、受注残高の増え方と会社側が示す納入時期、XPUの可能性を評価し、2026年10月期を売上高950億ドル(前年比48.7%増)、営業利益470億ドル(同84.4%増)、2027年10月期を売上高1,150億ドル(同21.1%増)、営業利益600億ドル(同27.7%増)と予想します。2026年10月期は前回予想から上方修正します。
今回の楽天証券予想では、AI関連売上高を2026年10月期480億ドル(同2.38倍)、2027年10月期650億ドル(同35.4%増)と予想しました。2026年10月期はAI関連の受注残730億ドルが18カ月間で納入される予定なので、その12カ月分を予想としました。2027年10月期は新たな受注も加えて引き続き伸びると予想しましたが、今の生成AIの設備投資が過剰投資ではないか、特にブロードコムの新規顧客であるオープンAIの投資についてこの疑問が出ているため、保守的に予想しました。
また、非AI関連は横ばい、インフラストラクチャー・ソフトウェアは2026年10月期の会社予想が10%台前半の伸びなので、これが2027年10月期も続くと予想しました。
このため、2026年10月期は大幅増収増益になる予想ですが、2027年10月期は業績の伸び率が鈍化すると予想します。
表4 ブロードコムのセグメント別売上高内訳と前年比:通期ベース
表5 ブロードコム:セグメント別業績(通期)
3.今後6~12カ月間の目標株価を、前回の430ドルから460ドルに引き上げる。
ブロードコムの今後6~12カ月間の目標株価を、前回の430ドルから460ドルへ引き上げます。
楽天証券の2026年10月期予想1株当たり利益(EPS)8.45ドルに、今後の成長性とリスクを考慮し、想定株価収益率(PER)50~60倍を当てはめました。
大手クラウドサービスと大手の生成AI開発会社のようなAI半導体の大口需要家が顧客になるため、需要が大きいこと、TPUのように本来は特定の企業のために設計された特注型AI半導体を外販するアルファベットのような会社が現れたことが、ブロードコムの今後の成長性を示していると思われます。
一方、汎用AI半導体に比べると、大手クラウドサービス、大手インターネットサービス会社や生成AI開発会社以外のユーザー(一般企業やサーバーメーカー)は今のところ特注型AI半導体の需要家ではありません。また、生成AI向けの巨額投資(特にオープンAIの巨額投資)が回収できるものなのかという疑問が株式市場の中にあります。
これらを総合的に評価した上で、引き続き中長期で投資妙味を感じます。
本レポートに掲載した銘柄: ブロードコム(AVGO、NASDAQ)
(今中 能夫)

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