米FOMCは3会合連続利下げも、雇用統計の複雑な解釈が続く。来年の12月雇用統計や18日CPIが1月利下げ期待を左右する。

一方、日銀は短観好感で12月利上げは確実視。植田総裁は追加利上げなどにどう言及するか注目です。


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FOMCは3会合連続利下げ!18日のCPIが示す1月の利下げ期待の行方

 12月9~10日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では予想通り0.25%の利下げとなりました(政策金利3.50~3.75%)。利下げは9月、10月に続き3会合連続で、短期国債買い入れを12日から開始することも決定しました(月400億ドル)。短期国債購入開始は、パウエル議長は技術的な決定であると説明しましたが、市場はサプライズの決定であり、ハト派的と捉えました。


 ただ、追加利下げについては、パウエル議長は、直近3回の会合による計0.75%の利下げによって、「政策金利の追加調整の程度や時期を適切に判断できる体制が整った」と述べ、慎重姿勢を示したことや、来年の金利見通しも前回と同じ年1回だったため、市場では1月利下げは見送りとの見方が増えました。


 しかし、パウエル議長は物価上昇を警戒しているものの、トランプ関税による物価への影響は「比較的短期間で、実質的には一時的な変動にとどまる」とやや楽観的な見方を示したことから、物価の上振れリスクよりも、労働市場の下振れリスクをより警戒している印象でした。


 16日、米政府機関の閉鎖で公表が遅れていた10月分、11月分の米雇用統計が発表されました。11月の非農業部門雇用者数(NFP)は予想+5万人に対して+6.4万となりました。しかし、失業率は予想4.5%を上回る4.6%に悪化し、4年ぶりの高い水準になりました。


 平均賃金(前年比)は予想3.6%を下回る3.5%になりました。NFPは予想を上回りましたが、失業率が悪化し、平均賃金が低下したため、ドル/円は一時154.40円近辺まで円高に行きました。


 10月分の失業率は発表されませんでしたが、NFPは予想マイナス2.5万人を大きく下回るマイナス10.5万人でした。

政府閉鎖の影響で15万人を超える連邦職員が離職したことが背景で、失業率は必要なデータがそろわず発表されませんでした。


 10月、11月雇用統計は政府機関閉鎖の一時的な影響が大きいようです。11月の失業率の上昇は一時的に離職した連邦職員が失業者として認定されたことや、家計調査の回答率が低かったことの影響との見方があります。また、政府機関閉鎖が解除されると離職した職員は復職するので12月分の雇用統計は改善されるとの見方があります。


 これらの見方からドル/円は円高に動いた後、米金利上昇もあって円安に行き、雇用統計発表前の水準に戻して推移しています。政府機関閉鎖の一時的な要因を除けば早期利下げを期待させる内容ではないとの見方のようです。


 ただ、8月と9月分のNFPは2カ月合計でマイナス3.3万人の下方修正となっています。この結果1~9月分の平均は約7万人と昨年のNFPの水準と比べると半分以下となっています。低下傾向は鮮明になっていることから、来年1月9日発表の12月雇用統計の結果次第では再び早期利下げ観測が高まるかもしれません。


 それまでには12月18日に米11月消費者物価指数(CPI)が発表されます。FOMC内の意見が分かれていることから、CPIがそれほど強くなければ、インフレリスクを警戒して利下げを反対している委員たちに影響を与えることも予想され、1月利下げ期待が高まるかもしれません。


日銀短観が12月利上げを後押し!植田総裁は「追加利上げ」に踏み込むか

 18~19日の日本銀行金融政策決定会合では0.25%の利上げの見方が大勢となっています。

そして15日に発表された日銀短観は利上げを後押しするような内容でした。最近の企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、「大企業製造業」で+15となり、前回9月調査から1ポイント改善しました。改善は3四半期連続となり、4年ぶりの高水準となりました。


 また、雇用人員判断(DI)は、「全規模・全産業」で。9月調査より2ポイント低下のマイナス38となりました。1991年8月以来、34年ぶりの人手不足感となっています。トランプ関税の悪影響が小さく、人手不足感が強まり、12月利上げの決め手となる内容でした。


 この結果、12月利上げはほぼ織り込まれたようですが、市場はその後の追加利上げに注目しています。従って、植田和男総裁が記者会見で再び慎重姿勢に戻るような発言をすると、円安に動くことが予想されます。


 また、現在の経済を熱しも冷ましもしない中立金利(1.0~2.5%)の下限引き上げについては記者から質問されることが予想されますが、下限は追加利上げの阻害要因ではないと踏み込んだ発言をするかどうかに注目しています。もし、踏み込んだ発言をすると、市場は来年以降も、1.0%を超える利上げの余地があると捉え、ドル/円は円高に動くことが予想されます。


 12月に0.25%の利上げをすれば、35年ぶりの年間の利上げ幅となります。

12月に入ってから植田総裁の発言はタカ派色がにじみ出てきましたが、会合後の記者会見でも来年にも続くようなタカ派色がにじむかどうか注目したいと思います。


(ハッサク)

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