2026年の日本株の重要なテーマは、AIエージェントとフィジカルAIになると私は予想しています。しかし、「AIエージェント」や「フィジカルAI」と聞いても、よくご存じない方もいるかもしれません。

そこで今回は、これらを深く理解していただくためのクイズをご用意しました。


【クイズ】2026年の日本株を動かす、AIエージェント・フィ...の画像はこちら >>

クイズ

【第1問】


 AIエージェントを直訳すると「AI代理人」です。人間に代わってAIがさまざまな業務をこなすようになりつつありますが、AIエージェントには決してできないことがあります。


 以下【1】~【10】の業務のうち、AIエージェントにできない業務は何でしょう? 一つだけ挙げてください。


【1】コールセンターのチャットボット(問い合わせへの自動応答)
【2】医療画像の診断支援(CTやMRIで撮影した画像から異変などを検知)
【3】自動運転車の制御システム(センサー情報に基づき、車両の走行・操舵(そうだ)・危険回避を制御)
【4】ネット通販の購入アドバイス(店頭で店舗スタッフが顧客からの質問に回答するのと同じようにAIが回答)
【5】翻訳・議事録作成(英語で行われた会議の議事録を日本語で作成)
【6】サイバーセキュリティ脅威検知(ネットワーク上の異常な挙動を監視し、サイバー攻撃を警告)
【7】プログラミング支援(コード生成・修正、テスト、バグ修正、プロジェクト管理、パフォーマンス最適化など全行程を支援し省力化に貢献)
【8】アシスタント業務代行(スケジュール管理・出張手配・プレゼンテーション資料作成などを代行)
【9】コンテンツ生成(与えられた情報に基づき必要なデザインやパンフレット、動画などを作成)
【10】1年後の日経平均株価の情報の伝達(日経平均が1年後にいくらか事前に知らせる)


【第2問】


 フィジカルAIとは、AIによって導き出されたソリューションを物理的に実行する主体で、「ロボット」とも言われます。


 以下【1】~【10】の業務のうち、フィジカルAIにはできない業務は何でしょう? 一つだけ挙げてください。


【1】サービスロボットによる外食業の配膳・下膳(料理を運び、使用済み食器を片付ける)
【2】倉庫内の自動搬送(倉庫内で商品を自動で移動・整理)
【3】自動運転タクシー(乗務員不在のタクシーが自動で乗客を送迎、料金収受)
【4】介護・介助ロボットによる高齢者の見守り・移動支援(高齢者の生活サポート)
【5】トマトなどの自動収穫(トマトの成熟度を識別して自動で収穫)
【6】乳牛の搾乳(個体ごとの搾乳履歴や健康状態を把握、乳牛にとって快適で効率的な搾乳方法を実施)
【7】清掃(オフィス・商業施設・家庭などで床を自動で清掃)
【8】手術支援による精密外科手術(医師の操作を補助、より精密で低侵襲の手術が可能に)
【9】10年熟成ウイスキーを3カ月で製造(熟成ウイスキーの量産を可能に)
【10】太陽光パネルの自動清掃(メガソーラーのパネル表面を定期的に清掃して劣化を防ぐ)


AI関連産業の全体図

 今年、AI関連株が世界中で大きく上昇しました。来年も、AI関連株が株式市場をけん引すると思っています。ただし、今年上昇した同じ銘柄が来年も同様に上がるとは限りません。


 今年上昇したAI関連株は、主にAIを手軽に世界中で使うためのインフラを構築する企業でした。AI半導体を開発製造し、AIデータセンターを造り、AIクラウドサービスを提供する企業群が注目されました。米国のエヌビディア・マイクロソフト・グーグル・アマゾンがその代表です。


 来年は、それに加えて、AIを活用して新たなビジネスを創出する企業群が注目されると考えています。その代表が、AIエージェントとフィジカルAIです。


<AI関連産業・全体像>


【クイズ】2026年の日本株を動かす、AIエージェント・フィジカルAIとは?
出所:筆者作成

 いよいよ、AIエージェントが人間の仕事を奪っていく時代が来ます。翻訳・要約・議事録の作成、プレゼン資料や調査レポートの作成、コールセンター業務やプログラミングなど、AIエージェントが代替する仕事が増えてきます。事務職の仕事のかなりの部分がAIで代替されるようになります。


 AIが「仕事を奪う」というと失職者が増えるように聞こえますが、私はそうはならないと思います。AIに代替される仕事はなくなっていっても、人間にしかできない新たな仕事が増えることによって、構造的な人手不足は解消されないと思われます。


 例えば、翻訳はAIが簡単にこなします。外国語を日本語に変換するだけの翻訳ならば人間がやる必要はありません。それでも能力の高い翻訳者は、仕事は減らず、逆に増えると思います。


 有能な翻訳者は、まず全体を大まかにAIで翻訳した後、技術用語や文学的表現をさらに洗練された言葉に修正する作業に集中するでしょう。AIを使うことで、これまでよりも速く、高品質の翻訳を量産することができるようになるでしょう。


 これはほんの一例です。AIが仕事を奪うのではなく、AIを部下として大量の仕事を効率よくこなす人と、AIを使いきれない人の差が広がる可能性があります。

自分のために仕事してくれるAIエージェントをたくさんつくって、自分にとって使いやすいように教育して、学習させていくノウハウが重要になると思います。


正解

【第1問】 AIエージェントにできないことは【10】です。


【10】1年後の日経平均情報の伝達(日経平均が1年後にいくらか事前に知らせる)


 AIエージェントは、確定した過去の事実や知識に基づいて、さまざまな業務を超人的能力でこなします。ところが、未来のことは分かりません。人間に分からないことは、AIにも分からないのです。


 ただし、1年後の日経平均予想レポート作成ならば、AIエージェントにもできます。いろいろなレポートや情報を学習して、一定のロジックで作り上げます。でも、人間の予想レポートがしばしば外れるのと同じく、AIの日経平均予想もよく外れると思います。


【第2問】 フィジカルAIにできないことは【9】です。


【9】10年熟成ウイスキーを3カ月で製造


 どんなフィジカルAIも、発酵や熟成の代行はできません。


 ウイスキー製造における発酵過程では、微生物が重要な働きをします。熟成は、たるの木材(オーク材)と原酒、そして熟成庫の環境(温度、湿度、空気の循環など)が長期間にわたって相互作用することで起こります。こうした複雑な化学変化と物理変化のプロセスは、ロボットが操作したり、つくり出したりできるものではありません。


 フィジカルAIにできるのは、あくまでも発酵や熟成の環境を管理することです。人間が行う管理の代行をするだけです。従って、10年熟成ウイスキーを3カ月で製造することはできません。


テクニカル・ファンダメンタルズ分析を詳しく勉強したい方へ

 最後に、株式投資を書籍でしっかり勉強したい方に、私の著書を紹介します。ダイヤモンド社より、株価チャートの読み方をトレーニングする「株トレ」(黄色の本)と、決算書の見方などを学ぶ「株トレ ファンダメンタルズ編」(水色の本)が出版されています。どちらも一問一答形式で株式投資の基礎を学ぶ内容です。


「 2000億円超を運用した伝説のファンドマネジャーの株トレ 」


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【クイズ】2026年の日本株を動かす、AIエージェント・フィジカルAIとは?
「株トレ」 シリーズ2点の書影

(窪田 真之)

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