2026年は国際政治の重要な節目となるでしょう。米国の中間選挙、ウクライナ戦争の行方、そして日本政府の物価高(インフレ)対策。
(1)米国:「ねじれ議会」で政局混乱リスク
現在の米国の政治は、共和党が大統領、そして議会の上院、下院で多数派を占める「トリプルレッド※」です。共和党は、トランプ大統領の意向に沿った予算案や法案を通しやすい立場にあります。
※レッド(赤)は共和党のイメージカラーです。民主党のカラーはブルー(青)です。
2026年11月に予定される米連邦議会中間選挙※で共和党が上院と下院で過半数を維持できれば、トランプ大統領の任期が満了となる2029年1月まで、現政権の基盤は維持されるでしょう。
現在の米連邦議会における二大政党の議席数(カッコ内は全議席数)
共和党 民主党 上院(100) 53 45 下院(435) 220 213 注記:定数に満たない部分は空席や他政党など※米連邦議会中間選挙…4年に1度ある米大統領選の中間の年に行われます。上院は定数の約3分の1、下院は全議席が改選となります。
しかし、中間選挙で上院、下院のいずれかあるいは両方で共和党が過半数を維持できなければ、大統領と議会で多数派の政党が異なる「ねじれ議会」となり、トランプ大統領は掲げた政策を通しにくくなります。
特に民主党が上院、下院の両方で過半数を獲得すれば、トランプ大統領が掲げる重要な政策が覆されたり、民主党がトランプ大統領の弾劾(だんがい)への動きを強めたりするなど、深刻な影響が生じることも予想されます。
2025年1月の大統領就任以降、関税や外交政策などにおいて混乱を招いたと指摘されているトランプ大統領の政策が実現しないことを、ポジティブに捉える向きもあるかもしれません。しかし、筆者はネガティブな面もあると考えています。
一般に、大統領や大統領が属する政党である与党が政策を遂行できない状況は、その国の政治・経済を停滞させる懸念があります。「決められない政治」が続くためです。
また、選挙結果は、米国の脱炭素政策の方向性に影響を与える可能性があります。かねてから、米国では民主党が脱炭素を推進していますが、共和党は原油や天然ガスなどの化石燃料の生産と消費を推進する立場を維持しています。選挙で民主党が優勢となれば、再び脱炭素の流れが加速する可能性もあります。
脱炭素の流れが再び加速すれば、脱炭素関連の政策と関わりが深い テスラ(TSLA) のような電気自動車(EV)関連企業には追い風となるでしょう。ただ一方で、「決められない政治」という米国全体を覆うマイナス面が大きくなれば、全体としてはマイナスの影響が勝る可能性もあります。
こうした重要な中間選挙の選挙戦を有利に進めるため、11月の同選挙に向かって、トランプ大統領は市場の期待を高めるポジティブな政策を相次いで打ち出すことが予想されます。
具体的には、過去に引き上げた関税の一部を引き下げたり、企業・個人への減税を強化したりする、などです。かつてトランプ大統領は、「予防的利下げ」と述べて、金利水準を引き下げること(利下げ)が景気を支える手段になることを示唆しました。
現在の米連邦準備制度理事会(FRB)議長であるパウエル氏は、2026年5月に任期を終えます。次の議長には、トランプ大統領の考え方に近い、利下げ推進派の人物が指名される公算が大きいと報じられ始めています。
トランプ大統領は中間選挙に向けて、FRBの人事に関わったり、FRBに圧力をかけたりして、利下げの思惑を大きくし、市場に期待をもたらす可能性があります。
現時点では、2026年11月の中間選挙以降の米国の政治・経済は不確定要素があるものの、年初から同選挙までは、トランプ大統領が繰り出す期待を高めるさまざまな策によって、株高が演出される可能性が高いと筆者はみています。
(2)ウクライナ:大統領選挙実施で状況打開に向けた一歩も
2022年2月にロシアがウクライナに侵攻して以降、世界のエネルギーや食料の供給が不安定な状態が続いています。2026年も世界のエネルギーや食料の供給事情は、国際政治の主要な焦点であり続けるでしょう。
ウクライナ戦争を巡っては、表面的には和平に向けた動きは見られるものの、領土に関わる議論が平行線をたどっており、今のところ、和平への道のりは険しいと筆者はみています。
ウクライナは2014年にロシアに併合されたクリミア半島を含む全領土の奪還を目指す一方、ロシアはクリミア半島およびウクライナ東部の一部地域の領有を主張しています。この大きな隔たりがある限り、本格的な和平は困難だと筆者はみています。
しかし、2026年には変化の兆しが現れるかもしれません。ウクライナのゼレンスキー大統領は、2024年に大統領の任期を終えていますが、特例的に大統領職にとどまっています。ロシアの侵略に伴う戒厳令下にあるため大統領選挙が行われていないためです。
こうした状況について、ロシアからの批判やトランプ米大統領からの指摘があり、ゼレンスキー大統領は大統領選挙を実施する意向を示し始めています。
選挙が行われてウクライナで大統領が交代すれば、このことをきっかけに、膠着(こうちゃく)状態にある領土を巡る問題に進展が見られる可能性があります。そうなれば、和平交渉が大きく前進する可能性もあるでしょう。
ただし、ウクライナを支援する西側諸国、特に一部の欧州諸国はロシアへの領土割譲を望んでおらず、新しい大統領が就任したとしても、領土を巡る問題の根本的な解決には時間を要するかもしれません。一部の欧州諸国はロシアの領土拡大を強く懸念しているためです。
また、ウクライナ戦争が終結すれば、エネルギーや食料、一部の金属といったコモディティ(国際商品)の需給が緩和し、価格が下落する可能性がありますが、下落の規模は限定的だと筆者はみています。西側諸国を中心に存在する現代社会の大きな潮流である「ESG(環境・社会・ガバナンス)」が存在するためです。
ロシアによるウクライナ侵攻は、国際社会に大きな衝撃を与えました。侵攻直後、多くの西側諸国の企業がロシア関連のビジネスから撤退しました。ESGのS(社会)を重視しているためです。
このため、たとえ和平が実現したとしても、「かつてあのような行為をしたロシアから資源を購入するのか」という問いが根強く続き、侵攻前のような規模でロシア産の資源が世界に出回ることはないと、考えられます。
西側諸国、特に一部の欧州諸国ではESGへの意識が強く、ロシア産資源の購入を避ける動きが続く可能性があります。これにより、想定ほど需給バランスは緩まず、コモディティ価格の下落幅は限定的になることが予想されます。
(3)日本:物価高の「根本的な解決策」
2025年も引き続き、日本は記録的な物価高に見舞われました。食料品やエネルギーの価格高騰が家計を直撃しています。
こうした補助金や減税による物価高対策は、対症療法であり、根本的な解決策ではないと筆者は考えています。
日本は資源の多くを輸入に頼る国であるため、輸入物価の変動が国内の物価動向(インフレ動向)に直結します。輸入物価はコモディティ(国際商品)相場と為替レート(ドル/円相場)の掛け合わせで決まるため、物価高への根本的な対策には、これら二つの要因への働きかけが不可欠です。
では、具体的に何をすれば良いのでしょうか。筆者は以下の二点を挙げたいと思います。
(1)円高への誘導(為替レートへの働きかけ):「利上げ」が有効な手段です。ドル/円相場が円高方向に動くことにより、輸入コストが減少する可能性が高まります。日本政府と日本銀行がコミュニケーションを図り、日本銀行が断続的に利上げを実施すれば円高が進み、その結果、日本国内の物価高が抑えられる可能性があります。
筆者は、ドル/円相場が140円台、あるいは130円台まで円高が進めば、輸入物価は大きく下がると考えています。2026年、日本銀行の利上げは、物価高対策としても非常に重要な意味を持ちます。
(2)資源国との関係構築(コモディティ(国際商品)相場への働きかけ):資源を持つ非西側諸国との外交を活発化させることが望まれます。
特に、輸送や素材など幅広い分野で用いられている原油については、OPECプラス※に属する国々との交渉が欠かせません。現在、OPECプラスは原油の減産を続けています。外交を通じて彼らに減産を緩和してもらうことができれば、原油価格の下落、物価高の鎮静化が期待できます。
※OPECプラス…石油輸出国機構(OPEC)の加盟国と一部の非加盟国で構成する産油国のグループです。現在、合計23カ国で構成され、原油生産シェアはおよそ60%です。サウジアラビアやロシアなどが属しています(2025年10月現在)。
現実的には、2010年ごろから世界的な民主主義後退※と分断深化が続いていることを考えると、産油国だけでなく資源(金属や食品を含む)を持つ非西側諸国との対話が難しくなっていることは否定できません。ましてや、資源を持つ国が望む国際価格の上昇を否定する外交交渉には、大きな困難を伴うことが予想されます。
※2010年ごろからの世界の民主主義後退…V-Dem研究所(スウェーデン)が算出・公表する自由民主主義指数の世界平均が、2010年ごろから明確に低下傾向を示しています。この指数は、同所が選挙制度や法整備、言論、メディアなどの民主主義に関する多数の要素を踏まえ算出しています。世界大戦や冷戦期に低下したり、世界大戦や冷戦が終結すると上昇したりするなど、世界の民主主義の大局観を示しています。
根本的な物価高対策という視点から、日本政府は産油国などの資源を持つ非西側諸国と、粘り強く外交交渉を続けていくことが求められています。
(呉 太淳)

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