現在、AIとクラウドサービスの発展によってデータセンターの整備が急がれています。AIの学習と運用には膨大なデータセンターリソースを必要とします。
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著者の茂木 春輝が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 AIブームの裏でJリートに注目が集まる三つの理由! 」
現在、AIとクラウドサービスの発展によってデータセンターの整備が急がれています。AIの学習と運用には膨大なデータセンターリソースを必要とします。今後はJリート(J-REIT:国内の不動産投資信託)によるデータセンターとその冷却設備への投資が拡大すると考えています。理由は以下三点です。
【1】Jリートにおけるデータセンター投資の制度改定
【2】USリートをリードするコロケーションサービス
【3】データセンターへの効率的な投資
それぞれについて解説いたします。
Jリートにおけるデータセンター投資の制度改定
これまでJリートではデータセンターの組み入れは限定的でした。この背景には投資法人が主として特定資産を投資対象とする投資信託法がありました。AIの需要に対応するようなデータセンターは不動産資産の部分より空調や電源設備など動産に分類される設備が高額になりやすく、Jリートでは不動産に分類しての投資が難しくなっていました。
そのため米国のリートが多様なデータセンター特化型リートによって市場をけん引しているのに対し、Jリートでは既存の複合・総合型リートがデータセンターを組み込む形で参入を進めています。
これを受けて2025年6月に、金融庁はデータセンター関連設備の一部をリートの対象に組み入れることを認めました。これによってコンピューターを冷却するのに必要な空調施設や電源設備なども一定の条件を満たせば投資法人の投資対象になるとされました。
USリートをリードするコロケーションサービス
米国のデータセンターリートの大手である Equinix(EQIX) を例にみると売り上げの半分以上をコロケーションサービスが占めています。
コロケーションサービスとは、保有するデータセンター内に顧客が所有するサーバーやネットワーク機器などを設置するスペースを貸し出すサービスのことです。
顧客にとっては冷却のための大規模な空調設備や大容量のネットワークなどの設備が整ったデータセンター内にサーバーを設置できるので自社でサーバーを置く場所を確保する必要がなく、保守管理を専門業者に任せることができるメリットがあります。
Equinixはコロケーションサービスの世界市場で首位のデータセンターリートで、グローバルにポートフォリオを保有し、データセンターおよびネットワークを提供しています。
大手クラウドプロバイダーや通信事業者、金融機関などを主要顧客としてコロケーションサービスを軸にEquinixは旺盛なAIやクラウドサービス向けのデータセンター需要を取り込み売上が拡大しています。
<Equinixのコロケーション部門売上高>
コロケーションサービスは定期的な売上を安定して確保できるため、リートと親和性が高く、Jリートの市場においてもデータセンタービジネスの拡大が期待できると考えます。
データセンターへの効率的な投資
データセンターの需要が急速に高まる中、データセンターのリートとして上場することは開発事業者にとって巨額のデータセンター投資の回収サイクルを早め、さらなるデータセンターへの投資を進める資金源となります。
<リートによるデータセンター投資の回収>
またデータセンターへの投資は、開発と運営において専門性の高い技術が求められます。今後、国内のデータセンター特化型リートによるデータセンター投資が進めば、効率的な投資サイクルによってノウハウを蓄積できるため優位性を確立すると考えます。
Jリートのデータセンター投資の例としては 産業ファンド投資法人(3249) があり、データセンターを一部含み、その他にも物流施設、企業のR&D(研究開発を担う部署や組織)施設、空港、工場の底地(工場を建設するために土地所有者が貸し出す土地)といった、産業不動産に広く投資しています。
データセンターへの投資はポートフォリオに占める割合は小さく、パフォーマンスへの影響は現段階では限定的です。
データセンター投資でさらなる成長を遂げるためには、USリート(米国を対象とした不動産投資信託。米国が発祥の金融商品のため、世界の不動産投資信託市場において約7割のシェアがある)のように、投資資金を効率化し、コロケーションサービスによる専門性と規模の追求をすることが必要だと考えます。
Jリートにとっては特にデータセンターに特化したJリートの組成、あるいは既存のリートがデータセンター部門を大幅に強化し、運用体制を確立することが重要です。
データセンターに必要不可欠な電力供給の安定性や冷却設備を考慮した上で、海外のデータセンターへの展開も視野に入れることで、Jリートはデータセンター投資において、存在感を高めると考えられます。
また、コロケーションサービスのような高密度のデータセンターにおいて設備投資が拡大すれば効率的な冷却設備が求められるため、空調だけでなく 富士通(6702) 、 三菱重工業(7011) 、 三桜工業(6584) が提供する水冷などの冷却設備も需要が拡大していくと考えます。
(茂木 春輝)

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