2025年のFX市場は「円安が進んだ年」というイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。年末になって急速に円安になったことで、その印象がより強まったこともあると思います。

ところが実際のデータを見るとわかりますが、この認識は半分正しく、半分間違っています。結論から言えば、2025年は「ドル安・円安」が同時進行した年でした。


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主要通貨の2025年レンジ


2025年は「ドル安・円安」が同時進行した年でした
出所:筆者作成

 2025年の主要通貨の中で最も弱かったのは「ドル」です。ドル/円の1月2日の始値(157.26円)と12月24日の終値(155.92円)を比べると、0.85%の「ドル安/円高」です。2025年の終値平均は約149.50円で、2024年の平均151.50円よりも円高です。このことからも、ドル/円は「2025年は円安だった」という一般的なイメージとは異なり、ほぼ横ばい、どちらかといえば「円高」だったことが言えます。


ドル/円以外の通貨では「円安」が鮮明

 ところが、円は、ドル以外の主要通貨に対しては大幅な「円安」となりました。つまり、2025年を振り返るとFX市場のリアルはドルと円の「二人負け」だったのです。


2025年は「ドル安・円安」が同時進行した年でした
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なぜ「円高予想」は外れたのか

 2025年初めは、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げと日本銀行の利上げで日米金利差が加速的に縮小することを根拠に、多くの為替のプロやセミプロは「円高」を予想していました。春から夏にはそうなると期待されていたのですが、実際にはFRBの利下げはようやく9月になって、日銀は1月に利上げした後は12月まで据え置きを続けました。


 とはいえ、中央銀行の多くが利下げを続ける中で日銀だけが利上げモードにある構図は、円に有利に働きました。


円の優位性は消えつつある

 しかし、日銀が利上げパスを連発している間に、欧州中央銀行(ECB)、カナダ中銀、スイス国立銀行(SNB)など欧米の中央銀行は、政策金利が中立金利まで低くなったとして、利下げサイクルをほぼ終了してしまいました。豪準備銀行(RBA)は、2026年からは「利上げサイクル」に入るとの見方もあります。そのため円だけが特別に有利という状況は消えつつあります。


 下の表は、主要中央銀行の2025年の政策金利の推移です。赤色は利下げ、青色は利上げを示しています。


 2025年にFRBとRBAは3回、ECBとイングランド銀行(BOE)は4回利下げしました。一方、日銀の利上げは1月と12月の2回でした。


2025年 政策金利推移


2025年は「ドル安・円安」が同時進行した年でした
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 日銀は利上げして政策金利を1995年9月以来30年ぶりの高水準まで引き上げたのだから、もっと円高になるべきだと考える人もいるかもしれません。たしかに政策金利0.75%は、国内的には絶対的な高金利水準です。しかしFX市場にとっては、30年ぶりの高水準というのは、ほとんど意味がありません。FXは絶対値ではなく相対的金利水準で動くからです。


ドル/円 2026年見通し

 FX相場にとっても最も重要なサインポストは、中央銀行の政策です。


 日銀が金融政策正常化に向けて利上げを継続することは、2026年も引き続き「円高」の要因になります。

しかし、問題はそのスピードです。利上げがマーケットの目に「鈍い」と映るなら、超円安からは多少戻すとしても、歴史的な円安水準にとどまりやすいと考えます。


 FRBは、政策の重点が完全に労働市場に移行したように見えるかもしれませんが、実際のところは、労働市場が全く重視されなかった状態から、インフレと同等のウエートを持つようになっただけです。FRB内部は雇用市場のための利下げ派とインフレ警戒の据え置き派で意見衝突している状況です。今のところマーケットはFRBが2026年も利下げを継続する可能性が高いと予想していますが、1月以降に発表される米経済指標次第で利下げの時期は変わってくるでしょう。


 2026年のドル/円相場はどうなるでしょうか。ここでは基本シナリオ、円高シナリオ、円安シナリオに分けてレンジを予想してみます。


2025年は「ドル安・円安」が同時進行した年でした
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 今の時期はまさに、いろいろな金融機関や金融メディアによる2026年の相場予想が一斉に出そろうタイミングです。これらの相場レポートで貴重なのは、当たった予想ではなく、外れた予想です。予想と現実にギャップが生じることで相場は動きます。外れた原因を探ることが投資チャンスにつながると思います。


(荒地 潤)

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