2026年のハイテク株投資のテーマは、中国半導体産業、メモリ不足とメモリ価格上昇、生成AI向け設備投資の行方、日米の長短金利の動きの4つと思われる。いずれも投資機会と投資リスクが表裏となっている。

今回は中国半導体産業とメモリ不足とメモリ価格上昇について考える。


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著者の今中 能夫が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 2026年のハイテク株投資-中国半導体産業、メモリ不足とメモリ価格上昇、2026年の注目点とリスクを探る- 」


毎週月曜日午後掲載


本レポートに掲載した銘柄: テンセント・ホールディングス(00700、香港) 、アリババ・グループ・ホールディング( 09988(香港) 、 BABA(NYSE) )、バイドゥ( 09888(香港) 、 BIDU(NASDAQ) )、 SMIC(00981、香港) 、 マイクロン・テクノロジー(MU、NASDAQ) 、 東京エレクトロン(8035、東証プライム) 、 アドバンテスト(6857、東証プライム) 、 ディスコ(6146、東証プライム) 、 レーザーテック(6920、東証プライム) 、 ASMLホールディング(ASML、アムステルダム、NASDAQ)


1.投資機会、投資妙味と投資リスクが表裏となる2026年のハイテク株投資。

 新年あけましておめでとうございます。


 本年もよろしくお願い申し上げます。


 2026年最初の楽天証券投資WEEKLYでは、2026年のハイテク株投資(半導体株投資とIT株投資)を展望したいと思います。


 2026年のハイテク株投資は、投資妙味、投資チャンスと投資リスクが表と裏の関係にあるものになりそうです。


 今年の注目テーマは次の4つです。


(1)中国半導体産業


(2)メモリ不足とメモリ価格上昇


(3)生成AI向け設備投資の行方


(4)日米の政策金利と長期金利の動き


 この各々のテーマに、投資妙味とリスクの両方が含まれていると考えられます。今回は(1)中国半導体産業と、(2)メモリ不足とメモリ価格上昇について取り上げます。

(3)、(4)は次回論じます。


2.何故、中国半導体産業に注目するのか。

 2026年の第1の注目点は、中国の半導体産業です。今後少なくとも2~3年、世界各国の半導体産業の中で中国半導体産業の成長率が最も大きいものになると予想されます。


 中国に注目する理由が表1です。米国が関税政策を導入する前は、自由世界は米国中心に一つの経済圏として認識してよかったと思われます。米国、欧州連合(EU)、日本、アセアンの人口の合計はほぼ中国並であり、名目国内総生産(GDP)の規模と一人当たり名目GDPの水準は中国を圧倒していました。


 ところが、米国が関税政策を導入して世界を分断した結果、一つ一つの国に投資価値が生じることになりましたが、この中で中国の存在感が際立つようになりました。約14億人の人口、一定水準の一人当たりGDPと、米国、台湾、韓国にはかなわないものの、一定水準の先端半導体開発能力と生産能力を持っていることから、今後中国の各産業の中でも半導体(特にAI半導体)とITには大きな成長が期待されます。


表1 世界の主要経済圏
2026年のハイテク株投資-中国半導体産業、メモリ不足とメモリ価格上昇、2026年の注目点とリスクを探る-
出所:IMF、外務省、JETROなどより楽天証券作成。注:名目GDP、1人当たり名目GDPは2024年、IMF。人口は2024年。インドのみ2023年。

3.各国の半導体サプライチェーン

 次に表2は米国、日本、中国、台湾、韓国の半導体産業のサプライチェーンを見たものです。この表を見ると、これら国々の半導体産業のどこに優位性があるかわかります。


表2 各国半導体産業サプライチェーンの主要企業
2026年のハイテク株投資-中国半導体産業、メモリ不足とメモリ価格上昇、2026年の注目点とリスクを探る-
出所:各種資料より楽天証券作成注1:特に注釈がない場合は上場企業。注2:主要な企業のみを掲載。

1)大手ITとAI開発会社

 米国はアマゾン・ドット・コム(以下アマゾン)、マイクロソフト、アルファベットのクラウドサービス大手3社、メタ・プラットフォームズ(以下メタ)、アップル、オラクルなどの大手IT企業が、AI半導体や高性能CPUなどの先端ロジックとDRAM、NAND型フラッシュメモリの大口ユーザーとなっています。


 中国でもテンセント・ホールディングス、アリババ・グループ・ホールディング、バイドゥなどの大手IT、大手ネット通販会社、大手SNS会社、大手検索会社、大手ゲーム会社が半導体の大口ユーザーです。また、大手IT企業だけでなく、約14億人の人口と様々な業界で大手から中堅中小まで数多くの企業があり、AI開発会社も多いことを背景に、AI等のシステム需要とAI半導体を含む半導体需要が大きいです。


2)半導体デバイス

 米国には、最先端ロジックの開発、設計、販売を行うファブレス半導体メーカー(エヌビディア、AMD、ブロードコムなど)、IDM(生産設備を持つ半導体メーカー、インテルなど)、メモリメーカー(マイクロン・テクノロジー)があります。


 一方で、中国ではAI半導体の株式の新規公開(IPO)ラッシュが起きています。もともと中国のAI半導体市場は、米国の対中国半導体輸出規制が施行される前はエヌビディア製「H100」が多くのシェアを占め、次いでファーウェイ製、「H100」の密輸品などで構成された市場だった模様ですが、米国の対中国半導体輸出規制が施行された後は、質、量ともに米国に対して大きく劣る水準のAI半導体でAIシステムを組まざるを得ない状況になっています。この中で、ファーウェイ製に続き、2020年7月に上海科創板に上場したカンブリコン・テクノロジーズが急成長しました。さらに2025年12月には、ムーア・スレッズ・テクノロジー(上海科創板)、MetaX(上海科創板)、ビレン・テクノロジー(香港)が新規上場し、初値が公開価格を大幅に上回る人気になりました。今年はバイドゥのAI半導体子会社である崑崙芯が香港市場に上場する予定です。


 中国では人口が約14億人と多く会社の数も多く、国土が広大なので、国や企業の運営にはAIが欠かせないものになっています。そのため、AI半導体が恒常的に不足している状態にあると思われます。ファーウェイ、カンブリコン、ムーア・スレッズ、MetaXとAI半導体会社の数が増えているため、今後はユーザーからの選別もあると思われますが、市場全体では高成長が予想されます。


 ちなみに表3は、ビレン・テクノロジーのIPO目論見書に掲載されていた中国AI半導体市場の中期予測です。


 また、参考までにカンブリコン・テクノロジーズの業績表を挙げておきます。2025年12月期2Qから3Qにかけて売上高が横ばいになっていますが、これは競合が増えたためと思われます。研究開発費や各種経費が増えているため、営業利益の伸びも抑えられていますが、これは将来のためです。

カンブリコンはすでに実績を積み重ねているため、今後も高成長が期待できると思われます。株価は割安ではないと思われますが、成長セクターにあるためさらに上昇する可能性があると思われます。


表3 中国AI半導体の市場規模予測
2026年のハイテク株投資-中国半導体産業、メモリ不足とメモリ価格上昇、2026年の注目点とリスクを探る-
単位:億USドル出所:ビレン・テクノロジーIPO目論見書より楽天証券作成注:GPGPUは、画像処理以外のAI等の計算処理に使うGPU。

表4 カンブリコン・テクノロジーズの業績
2026年のハイテク株投資-中国半導体産業、メモリ不足とメモリ価格上昇、2026年の注目点とリスクを探る-
株価 1,355.55元(2025年12月31日)時価総額 567,132百万元(2025年12月31日)発行済株数 418.378百万株(完全希薄化前、Basic)単位:百万ドル、%、倍出所:会社資料より楽天証券作成。注1:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。注2:EPSは完全希薄化後(Diluted)発行済株数で計算。ただし、時価総額は完全希薄化前(Basic)で計算。

3)半導体製造装置

 半導体製造装置メーカーも、米国には前工程メーカー(アプライドマテリアルズ、ラム・リサーチ)とテスターメーカー(テラダイン)があります。日本も製造装置では前工程、後工程とも重要メーカーがあり、市場シェアも高いメーカーが複数あります。ヨーロッパには世界最大の露光装置メーカーであるASMLホールディングがあります。


 中国は米国の対中国半導体製造装置輸出規制によって10ナノ台から先の先端半導体向けの前工程製造装置を輸入することができません。そのため、ナウラ・テクノロジー・グループ、AMECなどの前工程メーカーが一桁ナノ台を目指して開発を進めており、かなりな成果が出ていると思われます。問題は一桁ナノ台へ適用可能な露光装置の自国生産ができておらず、一世代前のArF液浸露光装置によるマルチパターニングで一桁ナノ台の性能を出している模様です。


 中国でもArF液浸露光装置とEUV露光装置の開発も進めている模様ですが、まだ時間がかかると思われます。ただし、2025年12月の報道によれば、中国はEUV露光装置の試作機を完成させた模様です。そして、2028~2030年までにEUV露光装置を使った先端半導体の量産の可能性があるとしています。これが実現すると中国半導体産業にとって大きな障壁が突破されることになります。


 表5は半導体製造装置の世界シェアです。

主要なカテゴリーでナウラ、AMECなど中国企業の名前が出てきていることがわかります。


 また、参考までに、ナウラ・テクノロジー・グループの業績表を挙げておきます。年率30~40%の売上成長率ですが、これが中国の半導体製造装置の市場成長率と考えてよいと思われます。研究開発費の増加によって営業利益率が抑えられていますが、これは将来のためです。特にナウラは一桁ナノ台の製造装置開発で重要な役割を担っています。ナウラの株価も割安感はありませんが、中長期で期待できると思われます。


表5 半導体製造装置の主要製品市場シェア(2024年)
2026年のハイテク株投資-中国半導体産業、メモリ不足とメモリ価格上昇、2026年の注目点とリスクを探る-
出所:会社資料、報道、ヒアリングより楽天証券作成。一部楽天証券推定。

表6 ナウラ・テクノロジー・グループの業績
2026年のハイテク株投資-中国半導体産業、メモリ不足とメモリ価格上昇、2026年の注目点とリスクを探る-
株価 459.08元(2025年12月31日)時価総額 332,508百万元(2025年12月31日)発行済株数 724.3百万株(完全希薄化前、Basic)単位:百万ドル、%、倍出所:会社資料より楽天証券作成。注1:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。注2:EPSと時価総額は完全希薄化前発行済株数(Basic)で計算。

4)半導体設計システム(EDA)

 半導体設計システム(EDA)で世界的に有名なのが、3大メーカー、シノプシス、ケイデンス・デザイン・システムズ、シーメンスEDA(未上場)です。この3社のいずれかを使わなければまともな半導体、特に先端半導体は設計できないと言われていますが、この3社とも米国籍の会社です。


 中国でもエンピリアン・テクノロジーがファーウェイの支援を受けてEDAのレベルアップに注力中と言われています。


5)半導体素材

 半導体素材について見ると、高品質の先端半導体向けシリコンウェハを始めとした半導体素材では日本の存在感が大きくなっています。中国にも半導体素材メーカーはありますが、品質的には下から中クラスの水準と思われます。また米国とヨーロッパはこの分野では存在感は大きくありません。


6)レアアース

 レアアースでは埋蔵量、生産量ともに中国が圧倒しています。米国は最大手のMPマテリアルズに米国政府が出資しており、国策としてレアアースの探鉱と生産に注力しています。日本では南鳥島沖での海洋試掘が2026年1月から始まります。いずれの動きも中国製レアアースを完全に代替することは難しいと思われますが、補完すること、例えば中国製レアアースの需要の一部を置き換えること、あるいは備蓄として使うことは可能と思われます。


 その場合、中国に対しては一定の交渉力を持つことになると思われますが、中国の優位性は変わらないと思われます。また、中国がレアアースについて心配する必要がないことは、中国の大きな優位性であると思われます。


表7 レアアースの埋蔵量と産出量
2026年のハイテク株投資-中国半導体産業、メモリ不足とメモリ価格上昇、2026年の注目点とリスクを探る-
単位:万トン出所:U.S. Geological Survey, Mineral Commodity Summaries, January 2025より楽天証券作成。

4.マスの目を埋める中国。中国への投資は、ETF、投資信託と個別銘柄の組み合わせで。

 表2を見ると分かりますが、各国の半導体産業、ハイテク産業で、大手IT、AI開発から、各種の半導体デバイス、半導体製造装置、レアアースまでサプライチェーンの全てが高い水準で整備されている国、地域はありません。ただし、中国は米国、日本、台湾、韓国に比べて水準は低いですが、半導体サプライチェーンの「マスの目」を埋めようとしています。これは国を挙げた取り組みですが、これによって中国半導体産業が他国に過度に依存せず、高い成長率を目指すことができると思われます。


 特に大きいのが、約14億人の人口と広大な国土からくる潤沢なAI需要とAI半導体需要です。さらにレアアースの心配をする必要がないことも大きな強みです。

米国が自由世界を分断した今となっては、米国が中国と半導体交渉を行っても、米国が中国に対して「勝つ」ことはなく、良くても引き分けであろうというのが私の見方です。


 一方で、中国株投資には難しさもあります。(玉石混合ではありますが)AI半導体メーカーをはじめとした成長企業が集まっている上海科創板では、外国人投資家は機関投資家も個人投資家も直接売買することができません。同様に成長企業が集まっている深センA株は香港に拠点を置く証券会社からなら外国人でも売買できますが、日本では限られた証券会社しか取り扱っていません(楽天証券では取扱がありません)。


 そのため、中国のハイテク株へ投資する場合は、上場投資信託(ETF)、投資信託と売買できる個別銘柄を組み合わせることを考えたいと思います。


 下に主な中国ETFを列挙します。このうち、黒字部分と個別銘柄が私が注目しているETFと個別銘柄です(カッコ内は上場市場)。


 ETFの中で、「2628 iFreeETF 中国科創板50(STAR50)」(東証)は上海科創板上場の主要50銘柄に投資するものです。上海科創板にはAI半導体関連等の成長企業が上場しているため、注目したいETFです。


 また、「380A GX チャイナテック ETF」(東証)は香港上場の中国の代表的なハイテク企業30社に投資するもの、「02826 GX チャイナ クラウドコンピューティング ETF」(香港)はクラウドコンピューティング関連(主に各種のネット関連)に投資するものです。AI半導体の供給が増えるにつれて、大手IT企業中心に中国ハイテク企業の成長可能性が大きくなると思われます。


 中国株全体に投資するETFとしては、「03040/09040 GX MSCI 中国 ETF (Global X MSCI China ETF)」(香港)、「02801/09801 iシェアーズ・コア MSCI チャイナETF」(香港)があります。いずれも様々なセクターの主要企業500社以上に投資するETFです。また、「FXI iシェアーズ 中国大型株 ETF」(NYSE Arca)は中国の大型株50社に投資するETFです。AIの普及によって事業の拡大やより効率的な企業経営が可能になるため、中国の様々なセクターや企業に恩恵が及ぶ可能性があります。


 楽天証券の取り扱いがないETFでは、「03191 GX China Semiconductor ETF」(香港)、「2807 GX China Robotics & AI ETF」(香港)を挙げました。前者は中国の半導体セクター全体に、後者は中国のロボット関連、自動運転関連、AI関連に投資するETFです。


 中国の個別銘柄では、テンセント・ホールディングス、アリババ・グループ・ホールディング、バイドゥ、SMICの4社を挙げておきます。


 テンセントはITの優良企業であり、幅広く事業を行っており、長期投資に向いていると思われます。アリババ、バイドゥは自社開発のAI半導体をもっており、すでに自社のデータセンターで使っている模様です。バイドゥはAI半導体子会社を香港市場に上場させる計画です。


 SMICは、中国最大のファウンドリ(半導体受託生産事業者)です。トランプ関税による相互関税の影響で中国国内メーカーの国内シェアが各分野で上昇しているため、中国製半導体の需要が増加しており、SMICの業績も順調です。また、通常ファウンドリは顧客名を明かしませんが、ファーウェイ、カンブリコンなどのAI半導体メーカーのAI半導体生産に何らかの形でかかわっていると思われます。


中国ETF(楽天証券取扱あり)

2628 iFreeETF 中国科創板50(STAR50)(東証)


404A GXチャイナテック・トップ10(東証)


380A GX チャイナテック ETF(東証)


03040 / 09040 GX MSCI 中国 ETF (Global X MSCI China ETF)(香港)


02801 / 09801 iシェアーズ・コア MSCI チャイナETF(香港)


02828 ハンセン・チャイナ・エンタープライズ・インデックスETF(Hang Seng China Enterprises Index ETF)(香港)


02826 GX チャイナ クラウドコンピューティング ETF(香港)


02838 ハンセン・FTSE・チャイナ50・インデックスETF(Hang Seng FTSE China 50 Index ETF)(香港)


FXI iシェアーズ 中国大型株 ETF (NYSE Arca)


CXSE ウィズダムツリー中国株ニューエコノミーファンド(NASDAQ)


中国ETF(楽天証券取扱なし)

03191 GX China Semiconductor ETF(香港)


03147 CSOP SZSE ChiNext ETF(香港)


2807 GX China Robotics & AI ETF(香港)


個別銘柄

テンセント・ホールディングス(00700、香港)


アリババ・グループ・ホールディング( 09988(香港) 、BABA(NYSE ))


バイドゥ( 09888(香港) 、 BIDU(NASDAQ) )


SMIC(00981、香港)


5.日本と米国の「中国関連」にも注目したい。

 日本と米国の「中国関連」では、日本ではアドバンテスト、東京エレクトロン、ディスコの半導体製造装置メーカーに注目したいと思います。一桁ナノ台の生産設備を構築する場合でも成熟半導体向けの製造装置は使うので、東京エレクトロンにとって中国は重要な市場であり続けると思われます。アドバンテストにとっては、AI半導体を含む中国の半導体生産が高度化すればテスタも高性能化します。ディスコにとっては、中国の半導体生産、特に先端半導体の生産が増加すればダイサ、グラインダの需要は増えると思われます。また、中国でAI半導体に使うHBMの生産が本格化すれば、HBM用のグラインダの需要が増加すると思われます。


 米国株の中での中国関連としては、私がカバーしていない銘柄ですが、参考銘柄としてMPマテリアルズを挙げました。日本株でも参考銘柄として南鳥島沖の試掘関連として、三井海洋開発、東洋エンジニアリング、古河機械金属、いであの4社を表2の中で挙げました。中国製レアアースを米国産、日本産が代替することは無理と思われますが、自国生産を増やすことで中国を牽制することは可能と思われます。


日本と米国の中国関連

半導体製造装置

アドバンテスト


東京エレクトロン


ディスコ


レアアース関連

MPマテリアルズ


 最後にグラフ1です。2025年の年初からの各国株式指数の動きを見ると、香港ハンセン指数の堅調さがわかります。今年も中国株式市場には昨年同様各国株式市場と比較して良好なパフォーマンスが期待できると思われます。世界経済にある様々なリスクを考えると、特定の国に一極集中的な投資を行うのではなく、米国、日本、中国、その他の国々と、債券、現金も含めた国際分散投資を考えたいと思います。


グラフ1 主要株価指数の2025年年初からの変化
2026年のハイテク株投資-中国半導体産業、メモリ不足とメモリ価格上昇、2026年の注目点とリスクを探る-
2025年1月6日終値を100として指数化。日次、終値。出所:楽天証券作成

6.メモリ不足とメモリ市況上昇

 DRAM価格上昇の動きとその影響については、2025年12月22日付け「決算レポート:マイクロン・テクノロジー(DRAM市況上昇、HBM好調で業績好調)」で分析しましたが、改めてDRAMとNAND型フラッシュメモリの価格の動きとその影響を分析したいと思います。


2025年12月22日: 「決算レポート:マイクロン・テクノロジー(DRAM市況上昇、HBM好調で業績好調)


 今回のDRAM価格上昇は、昨年5月、中国のDRAM大手、CXMTが2026年中旬までに1世代前のDRAM規格、DDR4の生産を段階的に終了し、最新規格であるDDR5とHBMの生産に集中すると報道されたことがきっかけです。DDR4の生産縮小とDDR5とHBMの生産拡大はSKハイニックス、サムスン電子、マイクロンはすでに行っていることですが、新興DRAMメーカーのCXMTも同様の方向になると報道されたのです。この報道があった後、DRAM価格は徐々に上昇し始めて、昨年7月以降はCXMTのDDR4生産縮小によるDRAM需給の逼迫が改めて意識されたことからDRAM価格はDDR4、DDR5ともに急騰しました。


 さらに、11月に入ってオープンAIが大規模AIデータセンター「スターゲート」プロジェクトのために、サムスン電子とSKハイニックスとの間で月90万枚規模のDRAMウェハ供給について協議していると報じられました。報道によれば、この数量は世界のHBM生産量の約2倍に相当するということです。


 グラフ2はDRAM市況、グラフ3はNAND市況を示したものです。日経新聞市況欄から抽出したものですが、2025年8月から12月まで小幅上昇を続けていたDRAM市況(国内大口需要家渡し)が2025年12月第4週に大幅に上昇しました。DDR4の8ギガビット品では2025年5月に1.60~1.80ドルだったものが2025年12月に6.26~6.46ドルになりました。7カ月で3.6~3.9倍になりました。


 NANDは、2025年4月からじり高でしたが、12月第4週に前週比1.4倍になりました。


 この動きはまだ止まっていないと思われます。日本におけるパソコン用メモリとSSDの店頭価格の動きを見ると、12月から1月にかけてさらに上昇しています。パソコン用メモリ(DDR5、16GB、2枚組)では昨年10月に1万1,000円だったものが、1月に7万2,000円台になりました。3カ月で6倍以上になりました。


 SSD(1テラバイト)はDRAMほどではありませんが、10月に1万2,000円台だったものが、1月には2万2,000円台になりました。


 今後、パソコンとスマートフォンにはDRAMとNAND価格の上昇の影響が値上げとなって顕在化すると思われます。フルに価格転嫁が行われると、10万円前後の普及価格帯のパソコンが10万円台後半に値上げになると予想されます。スマートフォンも同様の値上げになると思われます。


 AIサーバーの場合は、大雑把な試算になりますが、B200を8基搭載したメインメモリ1.5テラバイト、SSD7.6テラバイトのAIサーバーの見積もり価格が約7,600万円になります(NTTPCコミュニケーションズのウェブサイトより)。この見積もりでDRAM価格が3倍、SSD価格が1.5倍になり、さらにHBM価格も3倍になったときの価格を推定すると、メインメモリ1.5テラバイトの場合でAIサーバー価格は約30%上昇、メインメモリ8テラバイトの場合は40%以上上昇することになると思われます。


グラフ2 DRAMの市況
2026年のハイテク株投資-中国半導体産業、メモリ不足とメモリ価格上昇、2026年の注目点とリスクを探る-
単位:ドル、国内大口需要家渡し、4ギガビット(2018年6月26日までDDR3、2018年7月3日からDDR4、2021年5月11日からDDR3)、8ギガビット(DDR4)、出所:日経新聞主要相場欄より楽天証券作成

グラフ3 NAND型フラッシュメモリの市況
2026年のハイテク株投資-中国半導体産業、メモリ不足とメモリ価格上昇、2026年の注目点とリスクを探る-
単位:ドル、国内大口需要家渡し、TLC(注:2017年5月30日付で従来の多値品がTLCに変更された)、出所:日経新聞主要相場欄より楽天証券作成

グラフ4 パソコン用メモリの店頭価格
2026年のハイテク株投資-中国半導体産業、メモリ不足とメモリ価格上昇、2026年の注目点とリスクを探る-
(CFD:W5U5600CS-16G [DDR5 PC5-44800 16GB 2枚組])平均価格、単位:円、出所:価格ドットコムの価格推移グラフより楽天証券作成。週初価格を抽出

グラフ5 SSDの店頭価格
2026年のハイテク株投資-中国半導体産業、メモリ不足とメモリ価格上昇、2026年の注目点とリスクを探る-
Sundisk:WD Blue SA510 SATA WDS100T3B0A、1TB、平均価格、単位:円、出所:価格ドットコムの価格推移グラフより楽天証券作成。週初価格を抽出

表8 DRAMのメーカー別売上高と市場シェア
2026年のハイテク株投資-中国半導体産業、メモリ不足とメモリ価格上昇、2026年の注目点とリスクを探る-
単位:100万ドル出所:TRENDFORCEプレスリリースより楽天証券作成

表9 NAND型フラッシュメモリのメーカー別売上高と市場シェア
2026年のハイテク株投資-中国半導体産業、メモリ不足とメモリ価格上昇、2026年の注目点とリスクを探る-
単位:100万ドル出所:TRENDFORCEプレスリリースより楽天証券作成

7.DRAM、NAND価格上昇のAIを含む情報システムとハイテク産業への影響に注意したい。

 DRAM価格、NAND価格の上昇は、いずれパソコン、スマートフォンの販売価格に転嫁されると思われます。今後のパソコン、スマートフォンの価格と販売動向に注意する必要があります。
また、DRAM、NANDだけでなく、SSDが品不足になってきたため、HDDの需要が増加して店頭価格も上昇しています。DRAM、NANDに対してNOR型フラッシュメモリが代替できる場合もあるため、NOR型の需要が増えています。要するに、メモリ全般の需要と価格が上昇しているのです。このことがハイテク産業全体に与える影響に注意したいと思います。


 AIサーバーに対しては、まずメインメモリ(DRAM)、SSD(NAND)の価格上昇を通じてAIサーバー価格も上昇すると思われます。HBMの価格は顧客に対して年1回価格と数量を決めるやり方であり、2026年分の価格と数量はすでに決まっています。しかし、足元のDRAM(DDR5)の価格上昇は十分反映されていないと思われるため、再交渉の余地があると思われます。AI半導体メーカー側が再交渉に応じない場合は、2027年価格が大幅に引き上げられるか、HBMの生産調整もありうると思われます(マイクロンでは現在、大口顧客との間でDRAM、NAND、HBMを含む複数年のパッケージ契約を交渉中です)。これはすでに足元で通常型DRAMのほうがHBMよりも儲かる製品になっていると思われるからです。


 AIへの設備投資にDRAM、NANDの価格上昇がどのように影響するのか、注意したいと思います。


8.メモリ関連銘柄

 メモリ関連銘柄としては、DRAM、NANDメーカーと半導体製造装置メーカーです(カッコ内の銘柄は楽天証券でカバーしていないもの)。


DRAM、NANDメーカー:マイクロン・テクノロジー、(サムスン電子)、(SKハイニックス)
NAND専業:(キオクシア)


メモリ設備投資:東京エレクトロン、アドバンテスト、ディスコ、レーザーテック、ASMLホールディング


 メモリ設備投資については、大手DRAMメーカー(サムスン電子、SKハイニックス、マイクロン・テクノロジー)も、キオクシアも必ずしも大型投資に熱心ではないようですが、メモリ関連の設備投資は着実に増加すると思われます。前工程では、東京エレクトロン、後工程のテスタではアドバンテスト、切削機械ではディスコが重要です。


 また、DRAMが高性能化(高速、大容量化)し、HBMも高速大容量化するにつれて、EUV露光装置を使う工程が増えてきました。大手DRAMメーカー3社とも次世代型のEUV露光装置、High-NA型をすでに発注している模様です。ASMLホールディングのメモリ比率も高くなっています(EUV露光装置だけでなく1世代前のArF液浸露光装置でメモリ向けが多くなっている)。そのため、ASMLホールディングとEUV向けフォトマスク欠陥検査装置を独占しているレーザーテックにも注目したいと思います。


本レポートに掲載した銘柄: テンセント・ホールディングス(00700、香港) 、アリババ・グループ・ホールディング( 09988(香港) 、 BABA(NYSE) )、バイドゥ( 09888(香港) 、 BIDU(NASDAQ) )、 SMIC(00981、香港) 、 マイクロン・テクノロジー(MU、NASDAQ) 、 東京エレクトロン(8035、東証プライム) 、 アドバンテスト(6857、東証プライム) 、 ディスコ(6146、東証プライム) 、 レーザーテック(6920、東証プライム) 、 ASMLホールディング(ASML、アムステルダム、NASDAQ)


(今中 能夫)

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