あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の愛宕 伸康が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 2026年1月、日本自動車エンジン始動!~日銀の利上げと長期金利~ 」
新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い申し上げます。
2026年1月の鉱工業生産指数の「予測指数」が前月比8.0%の高い伸び
年始にあたり、少し明るめの話からしたいと思います。取り上げるのは、経済産業省が鉱工業生産指数とともに発表している「製造工業生産予測指数」(以下、予測指数と呼びます)です。
昨年12月26日に発表された11月の鉱工業生産指数は前月比マイナス2.6%と、3カ月ぶりの減少となりました(図表1)。リチウムイオン蓄電池などの出荷減から電気・情報通信機械工業が前月比マイナス10.1%となったほか、輸送機械工業もマイナス6.3%と減少し、全体の足を引っ張りました。
<図表1 鉱工業生産指数>
しかし、同時に発表された予測指数が驚きです。
なお、予測指数には実績より高く出やすいというバイアスがあるため、経済産業省ではそれを取り除いた補正値を1カ月分だけ公表しています。12月の予測指数は前月比1.3%ですが、経産省が推計した補正値はマイナス0.6%であり、図表1にはそれを表記しています。
その数字を使って10-12月期を計算すると、伸び率は前期比0.7%の微増ですが、2026年2月と3月を1月の予測指数から横ばいとして1-3月期を計算すると、前期比は6.6%の大幅増となります。
2026年1月、日本自動車エンジン始動!~鉱工業生産指数と予測指数~
実は、1月の予測指数を押し上げているのは、自動車を含む輸送機械工業です(図表2)。
<図表2 鉱工業生産指数(業種別)>
輸送機械工業の1月予測指数は、「乗用車」や「車体・自動車部品・その他」が伸びるかたちで前月比21.9%の大幅増となり、全体を4.24%ポイント押し上げました。また、図表2で「一般機械」に含めている「生産用機械工業」や、「電子部品・デバイス工業」も大きく伸び、この2業種で全体を1.13%ポイント押し上げています。
前述したとおり、予測指数には高く出やすいというバイアスがあるため、今後下方修正される可能性には留意が必要ですが、伸びをけん引している輸送機械は比較的そのバイアスが小さいことから、下方修正される幅は思ったほど大きくならないかもしれません。
図表3は、予測指数の業種別に、「実現率」と「予測修正率」のそれぞれについて2018年2月調査から2025年12月調査(新型コロナ禍の期間を除く)の平均値を計算し、その絶対値を足した値を「修正率」として比較したものです。
<図表3 製造工業生産予測指数の修正率(業種別)>
改めて「実現率」と「予測修正率」を簡潔に説明すると、「実現率」は1カ月前の予測値と実績値との乖離(かいり)率、つまり1カ月前の予測がどのくらい外れたかを示し、「予測修正率」は2カ月前の予測値が1カ月前の予測値へどのくらい修正されたかを示しています。
従って、図表3は2カ月前の予測値が実績値と比べどのくらい修正されたかを、業種別に比較していることになります。これを見ると、最も修正されない業種が「鉄鋼・非鉄金属工業」、最も修正される業種が「汎用・生産用・業務用機械工業」であり、「輸送機械工業」は2番目に修正されない業種であることが確認できます。
このように、2026年1-3月期の鉱工業生産指数がしっかりとした伸びになれば、統計作成上、5月中旬に発表される同期の実質国内総生産(GDP)も高成長になる可能性があります。
日銀は利上げ継続、中立金利の説明には後ろ向き~12月MPMの「主な意見」~
その日銀ですが、昨年12月29日に「金融政策決定会合における主な意見(2025年12月18、19日開催分)」(以下、「主な意見」)を公表しました。今回の「主な意見」から読み取れるメッセージは、(1)見通しの確度が高まればいつでも利上げを行うつもりであること、(2)中立金利を前面に出した説明には後ろ向きであること、の2点です。
まず、(1)に関しては、経済情勢に関する意見で、「米国の通商政策については、先行きの下振れリスクもひと頃と比べると低下した」「成長ペースの一時的な伸び悩みもある程度解消されるかもしれない」など前向きな意見が増えたことに加え、金融政策運営に関する意見でも(図表4)、利上げ継続を望む意見が多く掲載されていることが確認できます。
<図表4 12月の「主な意見」に掲載された追加利上げに関する意見>
(2)の中立金利に関しては、その水準を事前に特定するのは難しく、経済・物価への影響を点検しながら見定めるしかないといった趣旨の意見が複数見られており(図表5)、中立金利の水準を前面に出した説明には後ろ向きである印象を受けます。
<図表5 12月の「主な意見」に掲載された中立金利に関する意見>
今後は、中立金利の水準が何%かといった話題を日銀から積極的に行うことはないかもしれません。そうであっても、あるいは中立金利が何%であったとしても、実際のデータを注意深く観察しながら利上げの是非を判断するという日銀の所作が変わることはありません。
日本の長期金利(10年)の2種類の推計結果
さて、日銀の利上げ継続を前提に、今年の長期金利(10年国債利回り)がどうなるか、改めて推計してみましょう。
ベースになる関数形は、これまでこのレポートで紹介してきたものと基本的に同じです。説明変数には、政策金利(コールレート・オーバーナイト物)、景気動向指数、消費者物価上昇率、日銀の国債買入額、日銀の長期国債保有残高などを採用し、推計期間をアップデートしました。
今回は、これに「民間主体の長期国債保有残高」を説明変数に加えた関数も作成し、国債市場の需給バランスが悪化した影響を加味するとどうなるか、確認することにしました。
具体的には、世の中に存在する長期国債の総額である「国債現存額」から、日銀の長期国債保有残高を差し引いた額を民間主体の長期国債保有残高と定義し、それに上限があると仮定します。そしてその上限額から民間主体の長期国債保有残高の差を2乗するかたちで説明変数を設定しました。
そうすることにより、民間主体の長期国債保有残高が上限を超えると需給バランスが悪化し、長期金利が上昇するという現象が描写できます。
結果は図表6のとおりです(ベースケースが「民間主体の需給を考慮しないケース」、需給バランスを加味したものが「民間主体の需給を考慮したケース」です)。
<図表6 日本の10年金利の推計結果>
日本の長期金利(10年)は国債需給が悪化すれば2%台後半へ
この推計結果を利用し、景気が緩やかな回復傾向を続け、消費者物価上昇率が縮小していき、政策金利が2026年6月と12月に0.25%ずつ引き上げられると想定した上で、10年金利の先行きを試算したものが、図表7(国債市場の需給悪化を考慮しないケース)と図表8(国債市場の需給悪化を考慮したケース)になります。
<図表7 2026年の10年金利(民間主体の需給を考慮しないケース)>
<図表8 2026年の10年金利(民間主体の需給を考慮したケース)>
結果を簡単にまとめると、国債市場の需給悪化を考慮しないケース(図表7)では、10年金利は2%台前半から半ばで推移し、需給悪化を考慮したケース(図表8)では、2026年の後半にかけて2%台後半に上昇していくことが想定されます。
なお、こうした推計は、説明変数に対する10年金利の過去の平均的な反応パターンを先行きに描写したにすぎず、結果がモデレート(穏健)なものになるという欠点がつきものです。つまり、前提が同じであっても図表7の結果より現実はもっと高くなるかもしれませんし、市場で国債の需給悪化が意識されれば、図表8の結果よりもっと激しく上昇するかもしれません。
いずれにせよ、今回の推計結果を現時点での基準にしつつ、環境が変わるたびに、すなわち説明変数のデータがアップデートされるたびに、長期金利の足もとの水準を評価し、必要に応じて推計をリバイスしていこうと思っています。
(愛宕 伸康)

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