生成AIバブルは2026年も続くのでしょうか。AIが相場の最重要テーマとなる中、多くのAI企業に投資をしてきた柴田尚樹氏が実態を掘り下げます。
AIバブルは続くのか?
トウシル編集部(以下、トウシル):生成AI企業の株価は利益に対してかなり割高になっています。どこかで大きな調整局面を迎えるのでしょうか?
柴田尚樹氏(以下、柴田):正確な予測はできませんが、バブル的な側面は確かにあると思います。
柴田尚樹(しばた・なおき)
これは、AIがもたらす結果を信じる投資家が多いが故でしょう。しかし、AIといってもひとくくりにはできないものであり、多様なレイヤーで構成されています。
生成AIビジネスの現状をレイヤーごとに整理します。
おおむね、全てのレイヤーで投資が過熱し、上場企業の株価や未上場株式の評価額が高騰しています。
ただし、2000年前後のドットコムバブルのころに比べると、現在のAI企業は実際に売り上げを出して顧客を獲得している実態のあるビジネスが多い印象です。
バブルが仮に弾けても、ドットコムバブル後のように価値が激減する可能性は低いと私は考えています。
GPU資産の「会計リスク」が浮上
トウシル編集部:AIバブルの崩壊が懸念される中で、投資家として特に注意すべき危険な兆候やポイントはありますか。
柴田:大きく二つの注意点があります。
まず一つは、データセンターやインフラ系の企業です。現在、生成AIの需要拡大に伴い、データセンターの不足が叫ばれ、多くの新しいデータセンターが建設中です。
しかし、ここで会計上の償却ルールと現実の技術進化のスピードに大きな乖離(かいり)が生じる可能性があります。
例えば、GPUなどの償却期間は会計上5~7年とされています。しかし、5年前のGPUが今の最先端のAI開発で使えるかというと、多くの場合、使えないのが実情です。会計上の資産価値と実際の技術的な価値が「大きく乖離している」と指摘する人もいます。
トウシル:なるほど。バランスシート上は資産として残っていても、実際にはすでに陳腐化してしまっているのですね。
柴田:その通りです。あるいは、会計上は5年償却なので3年目でまだバランスシートにアセットが残っていても、実際にはそのGPUはもう誰も使っていない、という状態になりかねません。
そうなると、減価償却費はあと2年間計上され続けるのに、そこからほとんど売り上げが上がらない、という事態に陥る可能性があります。
必ずそうなるわけではありませんが、そうなりかねないため、データセンターやインフラ系の企業に投資する際は、会計上の数字だけでなく、実態までしっかり見極める必要があります。
OpenAI「120兆円」の妥当性
柴田:もう一つは、LLMやアプリケーション系の企業の評価額についてです。
特に、評価額が7,500億ドル(約118兆円)に達したと報じられたOpenAIについては、「評価額が高すぎる」という声が聞かれます。
確かに、売り上げに対する評価倍率(マルチプル)で見れば30倍、40倍のため、「高すぎる」という見方もできます。しかし、これほど速いスピードで成長している企業はほかに類を見ません。
もっと成長スピードが遅い会社が売り上げに対して8倍や10倍の評価を受けていることもあり、私としては大きな違和感はありません。
ただし、今後という視点で見ると、LLMやアプリケーション系の会社全般に言えることですが、高い成長率をどこまで維持できるかが重要です。
前年同期比で売り上げが5倍、10倍といった速いスピードで伸びている間は高い評価を得ますが、その成長率をどこまで維持できるかを見極める必要があります。
2026年期待のAI銘柄は?
トウシル:2026年の生成AI業界で注目の銘柄についてお伺いしてもよろしいでしょうか。
柴田:はい、先ほどの「五つのレイヤー」に沿って見ていきます。
チップのレイヤーでは、現在、NVIDIAが学習用GPU市場をほぼ独占していますが、推論用GPUの市場では異なる動きが見られます。
推論用GPUは、データセンターだけでなく、IoT(モノのインターネット)デバイスやスマートフォンといったエッジコンピューティングでも使われるため、小型化や省電力化が重要になります。
NVIDIAの一強である必要がない領域であり、AMDなどがこの市場でNVIDIAの牙城を崩そうと開発を進めています。2026年にはAMDのような企業の躍進も十分にあり得ます。
インフラ系、ミドルウエア系のレイヤーでは、生成AIの需要をうまく取り込み、ビジネスが再び活況を呈している企業に注目しています。具体的には、米国の上場企業であるスノーフレイク(Snowflake)とモンゴDB(MongoDB)です。両社ともデータベースやデータウエアハウスを提供する企業です。
企業は大きくなると成長率が鈍化しがちですが、この2社は生成AIアプリケーションのデータ保存・分析需要を捉え、直近2四半期ほどで売上高成長率が再び伸び始めています。
これらは上場企業であり、個人投資家でも投資できるため、非常に面白い銘柄だと思います。
特にMongoDBは、生成AIが扱うベクトルのデータ処理に相性の良いデータベース構造を持つことも強みです。
LLMのレイヤーでは、OpenAIやAnthropicが注目されていますが、まだ上場していません。
トウシル:ちなみに、こうしたLLMサービス間での競争はどのようになるとお考えでしょうか?
柴田:LLMモデルに関しては、性能的な大きな差はないと考えています。
少し前まではOpenAIが多少先行していましたが、今では各社が新しいモデルを出すと、他の会社がすぐに追いつく状況です。
もちろん、ベンチマークの結果を見ると、例えばAnthropicのクロード(Claude)はコーディングに強いといった特性はありますが、基本的に大規模なLLMをつくっている会社は、皆、汎用人工知能(AGI)に近づくような知性をつくりたいという共通の目標を持っています。
これは車で言えば、フォーミュラ1で一番速い車を造るという目標に向かって、各メーカーがしのぎを削っているようなものです。
機能面というよりは、今後、各社が顧客にどのようなサービスを提供していくかという点で差別化が図られるでしょう。
「生成AI×SaaS」の注目6社
トウシル:ありがとうございます。他に、生成AIによって伸びそうな企業はありますか?
柴田:注目すべきは、生成AIを自社内で使い倒して、それによってビジネスが好調になっている企業です。特に米国のSaaS系上場企業では成功事例が増えています。
例えば、以下の6社です。
社名/業種 生成AIの効果 サービスナウ(ServiceNow)/ コールセンター 主に営業活動に生成AIを導入し、リード獲得から商談転換の効率が16倍に向上。単純作業の86%を自動化し、新規の年間契約額(ACV)は過去最高に。
これらの企業は、単にAIプロダクトを販売するだけでなく、自社の営業活動などにもAIを導入することで、目に見える形で売上成長を実現しています。このような企業は、競争優位性を保ち、成長を続ける可能性が高いでしょう。
トウシル:なるほど。やはり、実際にAIを使って結果を出している点が重要ということですね。
柴田:単に「AIに取り組んでいます」というだけでなく、具体的な成果が出ている企業を見極めるべきです。特に営業活動へのAI導入は、売り上げという形で明確に結果が出るため、投資判断もしやすいでしょう。
トウシル:営業やマーケティングがパターン化しやすいSaaS領域にAIを導入すれば、効率化が一気に進むということですね。AIバブルの崩壊に注意しつつ、良い投資対象があれば積極的に狙っていきたいです。
本日は生成AIについて貴重なお話をありがとうございました。
柴田:こちらこそ、本日はありがとうございました。
(呉 太淳)

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