S&P500やオール・カントリーは「最適解」の投資先でした。しかし、「米国一強」だった環境に変化が訪れています。

2026年を迎え、投資家はどのように対応していけばいいのか、市場の転換点やポートフォリオの再構築についてひもといていきます。


「米国一強」のその先へ—2026年、市場の転換点とポートフォ...の画像はこちら >>

はじめに:順風の時代から、選別の時代へ

 過去数年間、私たち日本の投資家にとっての「最適解」は明確でした。「S&P500種指数」や「全世界株式(オール・カントリー)」を選び、円安の追い風に乗る。これだけで、多くの投資家が資産を順調に拡大できたことと思います。


 しかし、2026年を迎え、市場を取り巻く環境は明らかな「転換点」に差し掛かっています。インフレ沈静化に伴う米国の利下げ、日本銀行による金融正常化、そしてトランプ次期政権による地政学的な不確実性。これらが示唆するのは、「円安と株高に依存した一本調子な上昇相場の終焉(しゅうえん)」かもしれません。


 本コラムでは、これまでの成功体験を一度リセットし、2026年に向けてどのような視点でポートフォリオを再構築すべきか、ひもといていきます。


1.マクロ環境の構造変化:金利差縮小と為替リスク

 まず直視すべきは、日米の金融政策が逆方向へ動き出したという事実です。


  • 米国(米連邦準備制度理事会(FRB))

 景気の軟着陸(ソフトランディング)を目指し、利下げサイクルへ移行。


  • 日本(日銀)

 賃金上昇と内需回復を背景に、緩やかながら金利のある世界へ。


 これまで私たちの資産(円ベースでの評価額)を押し上げてきた「円安圧力」は、日米金利差の縮小とともに剥落する可能性があります。米国株が米ドルベースで上昇しても、為替が円高に振れれば、円建てのリターンは相殺、あるいはマイナスになりかねません。


 2026年に向けては、「為替リスクのコントロール」が運用の成否を分ける重要な要素となりそうです。


2.資産クラス別:バリュエーションと役割の再定義

 投資の基本は「価格と価値の乖離(かいり)」を見極めることです。各資産の現状と、今後のポートフォリオにおける役割を整理します。


米国株式・全世界株式:コアとしての継続と警戒

 S&P500をはじめとする米国株は、依然として世界経済の成長エンジンです。しかし、現在の株価収益率(PER)は歴史的な高値圏にあり、市場は「完璧なシナリオ」を織り込んでいます。ここからの期待リターンは過去数年より低下する前提で、インデックス投資信託の「積立投資による時間分散」を徹底し、高値づかみのリスクを抑制する姿勢が求められます。


 また、これまで積み上げてきた資産の一部を「 ニッセイ/サンダース・グローバルバリュー株式ファンド(資産成長型) 」のような相対的に割安な銘柄に選別投資するアクティブ運用のファンドに見直すのもよいでしょう。


日本株式:再評価される「割安」と「ディフェンス力」

 円高局面において、ポートフォリオの安定剤となるのが日本株です。株価純資産倍率(PBR)改革や株主還元の強化により、バリュエーション面での下値不安は米国株より限定的です。日本株に関しては、質の高い運用が期待されるアクティブ運用のファンドが多く存在します。


 例えば、「 フィデリティ・日本バリュー・ファンド 」や「 大和住銀DC国内株式ファンド 」などは、金利上昇の恩恵を受ける金融セクターの組み入れが多く、足元の実績でも長期の実績でも良好な成績をおさめています。


新興国株式:「成長(インド)」と「割安(中国)」の融合

 米国株に代わる「α(アルファ)」として、新興国株式への分散も重要です。ここでは二つの異なる性質を持つ市場を組み合わせる戦略が有効です。


  • インド株(成長)

 PERは高水準ですが、人口ボーナスとインフラ投資による構造的な高成長がそれを正当化します。「順張り」の成長エンジンとして機能します。


  • 中国株(割安)

 不動産不況などのリスクはありますが、歴史的な底値圏(超割安)に放置されています。過度な悲観が修正される局面では、大きなリターンを生む「逆張り」の妙味があります。


 これらを併せ持つ広範な新興国ファンド、あるいはそれぞれを組み合わせることで、「成長力」と「バリュエーション修正」の両取りを狙います。


 例えば、新興国全体に投資するなら投資魅力度の高い銘柄で構成された株価指数に連動する「 iFree 新興国株式インデックス 」。インド株ではインフラ関連と消費関連の二大テーマに投資する「 イーストスプリング・インド・コア株式ファンド 」、中国株では投資魅力度対比で割安な銘柄に投資する「 フィデリティ・チャイナ・フォーカス・オープン 」などが注目です。


J-REIT・ゴールド:分散投資の真価

 金利上昇への警戒感から売り込まれてきた国内の不動産投資信託(J-REIT)ですが、純資産価値(NAV)倍率が1倍割れの銘柄が多く、分配金利回りの魅力は高まっています。


 また、地政学的リスクへの備えとして金(ゴールド)も有効ですが、これからの局面では「為替ヘッジあり」の選択を推奨します。円高による目減りを防ぎつつ、純粋な金価格の上昇を享受するためです。


 J-REITに投資するファンドにも優秀な成績をおさめるアクティブ運用のファンドが存在します。例えば、「 野村Jリートファンド 」と「 フィデリティ・Jリート・アクティブ・ファンド(資産成長型) 」は甲乙つけがたく、抜群の安定感で市場インデックスを上回る成績をおさめています。金価格に連動する為替ヘッジありのファンドでは「 ステート・ストリート・ゴールド・オープン(為替ヘッジあり) 」の信託報酬が最安水準です。


3.実践的戦略:2026年モデル・ポートフォリオ

 以上の分析を踏まえ、中長期投資家が目指すべきポートフォリオの方向性を提案します。キーワードは「全天候型(オール・ウェザー)」へのシフトです。


資産配分の方針

 米国株偏重(80~90%以上)の状態から、以下のような分散構成へ徐々に移行することを検討してみてはいかがでしょうか。


資産クラス 構成比 役割と狙い 全世界株式
(米国株式) 50% 【コア・成長】
引き続きポートフォリオの土台とします。
日本株式
(高配当・バリュー) 20% 【分散・為替リスク抑制】
円高抵抗力を高めつつ、堅実なリターンを狙います。 新興国株式
(インド・中国など) 10% 【積極・α(アルファ)】
インドの「成長」と中国の「割安修正」をミックスし、リスク分散を図りつつリターンを追求します。 ゴールド
(為替ヘッジあり) 10% 【守り・保険】
株式市場の調整や円高進行時のクッション役です。 J-REIT 10% 【インカム】
安定的な分配金により、トータルリターンの底上げを図ります 。

おわりに:変化を恐れず、長く市場に居続けるために

 投資の世界において、永続的に「これだけ買っておけば正解」という資産は存在しません。相場のサイクルが回れば、主役も交代します。


 2026年に向けての再構築は、決して「逃げ」の戦略ではありません。むしろ、米国株一本足のリスクを修正し、日本株や新興国株、リート、ゴールドといった異なる値動き・異なる性質を持つ資産を組み合わせることで、「どのような市場環境でも大崩れせず、着実に資産を増やし続ける」ための前向きな再構築となります。


 ご自身のポートフォリオを今一度点検し、来たるべき新しい相場環境に備えて、「帆の向き」を微調整してみてはいかがでしょうか。その冷静な判断こそが、長期投資の果実を最大化する鍵となるはずです。


(吉井 崇裕)

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