金融ニュースを読んでも、「結局お金のことがよく分からない」と感じるのはなぜか。働く世代に必要な金融知識とは? ゴールドマン・サックス出身で金融経済のオンラインサロンを運営する河村真木子氏に、日本の金融リテラシーの課題と、知識を身に付けるために実践してきたニュースの読み解き方を聞いた。


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プロフィール

実業家 河村真木子(かわむら・まきこ)さん


元ゴールドマン・河村真木子氏が教える、金融知識が身に付くニュースの読み解き方
1976年奈良県生まれ。10~15歳をシンガポールで過ごす。大阪府の公立高校からロサンゼルスの高校に編入。卒業後、関西学院大学に入学するも退学し、再び渡米。コミュニティカレッジを経て1997年UCバークレー編入、2000年卒業。 2001年リーマン・ブラザーズ、2008年ゴールドマン・サックス入社。同社最高役職であるマネージングディレクターとして活躍後、2019年退社。2021年オンライン事業「Holland Village Private Community(現Holland Village Members’ Club)」設立。金融経済の情報発信やカフェ運営、美容関連の事業を手掛ける。

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日本の金融リテラシーはなぜ低い?

__日本人の金融リテラシーの現状について、どのような課題感がありますか。


 諸外国と比べて、日本は特に金融リテラシーが低いと感じています。その理由の一つに、家庭内で金融や投資の話をしないことがあると思います。働く上でもやりがいのような価値観が優先されてきました。「お金を稼ぐ」とか「投資でもうける」ことは良くないこと、という美学のようなものが社会的にまん延していたように思います。


 話さないでいると、いつまでたってもその分野の知識は身に付きません。話題にすることで、知識は蓄積されていきますから。家庭でも学校でもお金の話を避けてきたことが、金融リテラシーの低さにつながっているのではないでしょうか。


__海外ではどのようなお金の話がされているのでしょうか。


 私がシンガポールに住んでいた小学生時代、現地で出会った中国人やアメリカ人の家庭では、親戚同士の集まりで、株でもうけた話や、持っている不動産価格が何倍になった、といった話をしていました。あなたの家の家賃いくら? お給料はいくら?といった、日本ではなかなか聞きにくい話題も自然としていたのが印象的です。


インフレ時代、現預金だけでは資産が目減りする

__働く世代に必要な金融リテラシーとは、どのような知識や能力のことを言いますか。


  働く世代の方々の中には、毎月入る賃金をそのまま貯金する、という状態の人が多いように思いますが、それは危険です。


 コロナ以降、日本も海外もインフレが続いているので、貯金(現預金)だけでは自分の資産は明らかに目減りしていきます。

特に、最近は為替の円安が進行していて、ドルもユーロも高いですよね。海外旅行も高いし、子供を留学させたいと思っても費用が高く感じると思います。貯金だけをしていても、同じ額で買えるものは以前より少なくなっていきます。


 そこに早く気付いて、賃金をもらったら株に投資する、もしくは不動産を買ってみる、ゴールドを持ってみるなど、自分の資産を何らかの形で資本市場に絡めていくことがとても大切だと思います。


投資を始めるベストタイミングは

__買うなら安い時に買いたい、と投資の始め時をためらう人もいます。


 いつ安くなっているかを見極めることは、すごく難しいものです。例えば、日経平均株価やS&P500種指数の過去50年間の推移は右肩上がりなので、いつでも一番高く感じてしまいます。安いところで始めようとは考えない方がいいと思います。


 投資は時間が味方になってくれるので、若い時から始めることがとても大切です。でも、50代の方はもう遅いということではなく、基本的には気付いた時が始め時です。誰にとっても、今日が一番若いのです。


元ゴールドマン・河村真木子氏が教える、金融知識が身に付くニュースの読み解き方
「投資は時間が味方になってくれる。気付いた時が始め時」と話す河村さん

__知識面で、投資を始める前に知っておいた方がいいことはありますか。


 闇雲に始めず、ある程度の知識は絶対あった方がいいと思います。

ただ、よく聞かれますが、この本を一冊読めば必要な金融知識が身に付くみたいな魔法はありません。コツコツ勉強することです。


 私がお薦めするのは、時事問題を使った勉強です。主要なメディアの記事を読んで分かるようになること。時間はかかりますが、継続すれば2~3年でそれなりに知識が身に付き、経済に明るくなったと思えるはずです。


真木子さん直伝!金融ニュースの読み方「日経新聞だけでは足りない」

__金融ニュースの情報収集について教えてください。


 私は、ブルームバーグ、ロイター、フィナンシャル・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナル、日本経済新聞を課金して読んでいます。ポイントは、日経新聞だけではなく海外のメディアも読むことです。


 日経では国内企業の動きを細かく取り上げていますが、金融市場を学ぶには全体を知ることがとても大切。アメリカや中国、ヨーロッパ、アジアの市場で何が起きたのか、あらゆる角度から読み解くことで、一つのニュースをさまざまな視点で捉えることができます。


 もちろん全ての記事を読む必要はありません。私は毎朝2時間くらいかけてヘッドライン(見出し)をどんどん流し読みし、面白そうな記事だけを深掘りしています。そうやって昨日起こったことを全体的に頭の中に入れています。


__金融ニュースを紹介する「金融コラム」を、オンラインサロンの会員向けに配信して人気を集めています。コラムを始めた狙いは。


 ゴールドマン・サックスにいた時、お客さま向けに送っていたコラムが基になっています。当時、ニューヨークで開発した複雑な金融商品を日本の機関投資家さんに売る営業をしていました。毎日ブルームバーグやロイターを読んで勉強していたのですが、これを読んでも分からない人が多いだろうなと思ったことがきっかけです。


 既存のメディア記事は親切じゃないので、難しい金融用語が多く、前提知識がないと理解しにくいことがありますよね。私が翻訳して、もっと簡単に分かりやすくニュースをお伝えすることができたら、もっと商品が売れるだろう、と思ったんです。


 お客さまである機関投資家さんからは、「河村さんのコラムを読んでおけば、昨日あったことが大体分かるので助かります」と言われ、うれしかったです。


 現在は、運営するオンラインサロンの会員向けに金融コラムを配信しています。金融経済の知識は、頭がいい悪いとは関係なく、触れていなければ知らないことが多いものです。サロン会員は医師や弁護士などいわゆるバリキャリの方が多いのですが、誰でも最初は「とっつきにくい」と苦手意識を持っています。


 それでも、このコラムを読んだり、会員向けに配信している金融ラジオを聴いたりと金融のシャワーを浴びているうちに、どんどん金融経済に詳しくなっていきます。


元ゴールドマン・河村真木子氏が教える、金融知識が身に付くニュースの読み解き方
インスタグラムのサブスク会員になると、月額800円でコラムの一部が読める。

 コラムでは、しつこいぐらい「これなんだっけ?」が出てきます。S&P500なんてもう何回説明したか分かりません。皆さん普段のお仕事でお忙しい中、金融ニュースを読む中で思い出せない用語が出てくることは当然あります。そこで挫折しないように、私がしつこくリマインドします。


元ゴールドマン・河村真木子氏が教える、金融知識が身に付くニュースの読み解き方
ニュースに出てくる専門用語も分かりやすく解説する

YouTubeやSNSでの情報収集、気を付けるポイントは

__YouTubeやSNSでも金融情報の発信が増えています。情報収集の上で気を付けるポイントは。


 誰がどのような発信をしているかは、よく見ると良いと思います。その人のバックグラウンドや経歴を見て、信頼できるかどうか。そういったものが一切なく、何億稼いだという成績だけを全面にアピールしていたとしたら、注意が必要です。


「自分はいくら稼いだから、この通りにやればあなたも同じ成果を得られますよ」というものは、再現性として難しいと思います。最終的には地道にコツコツ勉強して知識を付けるしか、投資に勝てる方法はありません。魔法はないんです。


__有名な個人投資家さんと同じポートフォリオにするのは、どのような問題がありますか。


 お手本にした人が今はそのポートフォリオであっても、株式市場も為替相場も刻々と変わっていくものです。それに合わせて、その人もポートフォリオを入れ替えているはずです。その調整についていけないと、付け焼刃的になってしまいます。最終的には自分の知識が必要ということです。


(佐々木 閑)

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