2月相場入りした先週の日経平均は、米FRB議長人事や「アンソロピック・ショック」で揺らいだAI・半導体関連銘柄の動き、衆議院選挙前の思惑などが絡み、荒い値動きながらも上昇。さらに7日(土)朝に夜間取引を終えた日経225先物取引では、5万6,000円台まで急伸しており、今週は株高期待の中でスタートすることになりそうです。


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波乱含みの中で上昇してきた先週の日経平均

 2月相場入りとなった先週の株式市場ですが、週末6日(金)の日経平均株価は5万4,253円で取引を終えました。前週末終値(5万3,322円)からは931円高(1.75%高)、週間ベースでも3週ぶりの上昇となりました。


 単純な週末終値の比較で見れば、しっかり上昇してきた格好ですが、週間の値動きを振り返ると、前回・前々回のレポートでも指摘してきたように、「値動きの荒さ」が先週も目立つ展開でした。


▼過去のレポート

2026年2月2日: 【日本株】衆院選直前、 週足チャートの「調整の兆し」に要注意
2026年1月26日: 日本株は上昇基調に戻せるか?注目は半導体株決算、米FRB人事


<図1>日経平均の5分足チャート(2026年2月2~6日)
選挙後の日経平均、上値めどは?焦点はソフトバンクG決算
出所:MARKETSPEEDII

 図1は、先週1週間の値動きを示した日経平均の5分足チャートですが、週初2日(月)の日中値幅(高値と安値の差)は1,591円、翌3日(火)が1,475円と、ともに1,000円を超えています。特に、3日(火)の取引は「窓」空けによる上昇スタートとなっているため、前日終値からこの日の高値の値幅は2,000円を超えています。


 値動きが荒くなった要因としては、複数あります。まず、前週末にトランプ米大統領が次期米連邦準備制度理事会(FRB)議長に指名したケビン・ウォーシュ氏が、市場では「タカ派」として認識されており、為替市場でドル高基調が進みました。


 また、日米で本格化している企業決算の内容に反応する動き、別のレポートでも解説した、「アンソロピック・ショック」でソフトウエア関連株が売られ、AI・半導体銘柄のムードが良くなかったこと、そして、8日(日)に控えていた衆議院選挙をめぐる情勢報道など、強弱の材料が入り混じったことが挙げられます。


▼過去のレポート

2026年2月6日: 米国株:アンソロピック・ショックは押し目買いの好機となるか?(土信田雅之)


 その一方で、注目しておきたいのは株価の「反発力」で、その大きさは図1からも読み取れます。相場の割高感や過熱感を背景とした売りポジションの踏み上げが株価上昇の勢いに寄与している面もありそうですが、株式市場全体としては、相場の方向性は上目線に傾いていた印象です。


一気に5万6,000円台に乗せてきた先物取引をどう見る?

 そんな中で迎える今週の日経平均ですが、反発からさらに上値を目指す、一段高でのスタートが見込まれます。


 その理由としては、7日(土)の朝に取引を終えた、株価指数先物取引の夜間取引(ナイトセッション)の終値が5万6,490円と大幅に上昇したことです。


<図2>日経225先物(日足)とMACDの動き(2026年2月7日ナイトセッション終了時)
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出所:MARKETSPEEDII

 図2を見ても分かるように、株価が5万2,000円から5万4,000円の価格帯を上抜けたほか、2025年11月4日と今年1月14日の高値どうしを結んだ上値ラインも超えてきています。さらに、下段のMACDがシグナルを上抜けるクロスが出現しているなど、チャートの形状は上目線を強めています。


 こうした日経225先物取引の価格が急上昇した理由は、週末6日(金)の米国株市場が大きく上昇していたことが影響しています。この日のダウ工業株30種平均は前日比で2.47%高となり、初の5万ドル台に乗せたほか、S&P500種指数は1.96%高、ナスダック総合指数も2.17%高となっていました。


 米国株の上昇には、下落が一服したソフトウエア関連株や、AI・半導体関連銘柄が反発する動きを見せたこと、米経済指標(米2月ミシガン大学消費者態度指数)が米景気の堅調さを示す結果だったことが要因として挙げられます。これにより、景気敏感株やバリュー株への買いが継続して、市場全体が押し上げられました。


 図3でも、米株価指数が週末の6日(金)に大きく反発している様子がうかがえ、目先の底打ちが感じられる状況となっています。


<図3>国内外主要株価指数のパフォーマンス比較(2025年末を100)(2026年2月6日時点)
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出所:MARKETSPEEDIIおよびBloombergデータを基に作成

 こうした先週末の米国株の動きが日経225先物取引にも波及した格好と思われます。


日経平均の上値余地について

 となると、今週の日経平均が「どこまでの上値を目指すことができるのか?」が気になるところです。


 先ほども触れたように、最近の日本株は、「選挙は買い」という相場格言を地で行く展開が目立ち、実際に、与党優勢という報道とそれを元にした思惑が日本株を支えている面があります。図3からも、日本株(日経平均と東証株価指数[TOPIX])のパフォーマンスが他の株価指数を上回っていることが確認できます。


 実は、日経225先物取引のナイトセッションの値動きを見ても、その状況を感じとることができます。


<図4>日経225先物(5分足)チャートの動き(2026年2月7日ナイトセッション終了時)
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出所:MARKETSPEEDII

 週末のナイトセッションは6日(金)の17時にスタートしていますが、米国株市場が始まる前の時間帯ですでに5万5,500円あたりまで上昇していました。これは、衆議院選挙における与党の勝利をかなり織り込んでいる可能性があります。


 図4からは、ナイトセッションの値動きが、日中取引(デイセッション)の終値(5万4,410円)から約2,000円上昇していることが読み取れます。

この上昇には、選挙での与党勝利を織り込む動きで1,000円、米国株市場の流れに乗る動きで1,000円上昇していたという印象です。


 8日投開票の衆議院解散総選挙は事前報道の通り、与党が多くの議席を獲得する状況となりました。選挙結果を受けた市場はご祝儀の意味合いも兼ねて、5万7,000円、そして5万8,000円と上値を伸ばす展開も想定されます。


 昨年末終値5万0,339円をベースに図4を見ると、米国株市場が始まる前に日経225先物取引の上昇が一服していた5万5,500円の株価水準は、ほぼ昨年末終値から10%上昇した水準(5万5,372円)です。


 同様に上昇基調が続けば、15%上昇の5万7,889円、20%上昇の6万0,406円が目安になります。しかし、すでに与党勝利が織り込まれていること、国内金利の上昇再開や、為替市場の円安進行と介入警戒なども絡んでくるため、思ったよりも早く株価上昇が失速してしまう展開には注意しておく必要がありそうです。


相場の過熱感は警戒レベルか否か

 また、株価上昇に伴い、相場に対する割高感や過熱感も意識されやすい状況であることに変わりはありません。


 前回のレポートでは、日経平均の週足チャートとRCIの動きから、株価の調整局面入りが近づいている可能性について指摘しました。先週も東京証券取引所が3日(火)に公表した信用取引残高(1月30日週時点)で、買い残高が約20年ぶりの高水準まで積み上がっていたことが話題となりました。


▼過去のレポート

2026年2月2日: 【日本株】衆院選直前、 週足チャートの「調整の兆し」に要注意


<図5>信用買い残高の推移(2市場、制度・一般合計) (2026年1月30日時点)
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出所:取引所データを基に作成

 図5を見ても、2026年1月30日週の買い残高(5兆3,867億円)は、2006年2月10日週の過去最高(5兆9,836億円)に迫っていることが読み取れます。


 買い残高が積み上がっているということは、それだけ相場の先高観を持っている投資家が多いことを意味します。では、過去最高水準近くまで積み上がっている足元の状況は、危険レベルの過熱感かどうかと言えば、「半分正解、半分不正解」といった感じかもしれません。


<図6>信用残高の状況比較
選挙後の日経平均、上値めどは?焦点はソフトバンクG決算
出所:取引所データを基に作成

 実際に、図6で2026年1月30日週と2006年2月10日週の状況を比較してみると、確かに金額ベースの買い残高の規模は同じくらいになっていますが、株数ベースでみると、2026年1月30日週の残高は、2006年2月の約半分となっています。


 これは株価水準の違いによるものです。2006年2月当時の日経平均は1万5,000~1万6,000円台で推移していましたが、先週末は5万4,000円台となっており、同じ株数の取引でも株価上昇に伴って金額が増えていくことになります。そのため、金額ベースでの過去最高の残高に迫っているとはいえ、株価上昇分を考慮する必要があります。


 むしろ、気をつけておきたいのが、信用倍率(買い残÷売り残)の方で、2026年1月30日週の6.11倍は「かなり買いに偏っている」状況と言えます。


 買い残が売り残を大きく上回っている状況は、相場の先高観の強さを意味します。ただ同時に、今後の売り返済となる圧力が高まっていることや、相場の状況が急変した際に、売り残による買い返済というサポートが弱いことも意味します。


 そのため、買い残の積み上がりで注意したいのは、過熱感ではなく、「相場が下落した際に売りが加速する要因」となる可能性の方になります。


今週予定のイベントにも注目

 今週の日本株は、「一段高でスタートした後に、さらに上値を伸ばせるのか、それとも材料出尽くしでいったん売られるのか」が焦点になります。これまで見てきたように、衆議院選挙の結果に対する織り込みはかなり進んでいると思われ、今後の政権運営(政策期待と財政不安)のバランスがカギになりそうです。


 また、今週11日(水)が建国記念の日で休場となります。週の半ばに休場を挟むことで、相場のムードが分断されやすいことや、週末13日(金)が、株価指数先物のmini先物とオプション取引のSQ日でもあり、需給の思惑が働きやすい点には注意が必要かもしれません。


 さらに、その間隙を縫うように、注目イベントも多く予定されています。


 例えば、米国では、注目の経済指標の公表が相次ぎます。10日(火)には米1月小売売上高、11日(水)には延期となっていた米1月雇用統計、そして、週末13日(金)には米1月消費者物価指数(CPI)が公表されます。


 先週末の米国株市場が経済指標(米2月ミシガン大学消費者態度指数)で堅調な景況感が示されたことが株価上昇のきっかけになっただけに、米国の景況感とインフレ動向が相場のムードを左右しそうです。


 このほか、国内の企業決算もピークを迎えます。特に注目されそうなのが12日(木)の ソフトバンクグループ(9984) の決算です。先週の株式市場を揺るがした「アンソロピック・ショック」の余韻が残る中、同社がどのような見解や投資姿勢を示すかが焦点になりそうです。


 先週までに決算を発表した、米国のいわゆる「ハイパースケーラー」は引き続き、AIに巨額の投資を行う見通しを示しています。


 しかし、昨年は活発なAI投資が期待感につながって株価を押し上げてきたのに対し、直近では巨額の投資による財務リスクや、収益性への警戒でネガティブ視されるようになってきています。AI投資に対する市場の受け止め方の変化にも留意する必要がありそうです。


(土信田 雅之)

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