税制優遇を受けながら資産形成することができる「NISA」と「iDeCo」。iDeCoは拠出限度額の引き上げ、NISAは18歳未満にも対象を広げるなど、制度が拡充される方針です。

実現すれば、大きな転換点となります。「拡充されるから始める」のではなく「何のために、どの枠を、どのくらい活用していくか」を考えることが大切です。


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iDeCoとNISAは「制度拡充の過渡期」

「iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)」と「NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)」は、国が個人の資産形成を後押しする目的で創設されました。どちらも、税制優遇を受けながら資産形成ができる強力な制度ですが、今後は、単に「やるか、やらないか」だけでなく、制度の拡充を味方にし、どの枠をどれだけ使うかを設計することがより重要になるでしょう。


 というのも、2027年1月にはiDeCoの掛金上限額が大幅に引き上げられる見込みです。また、このほど与党が決定した税制改正大綱では、「つみたて投資枠」を18歳未満にも解禁することが盛り込まれました。これらの制度拡充が実現すれば、家庭単位で資産形成を考えることが一段と重要になってきます。


50代でも遅くない!iDeCoを「始めるべきか」よりも「いくら積み立てるか」

 現在は資産形成の第一歩として、2024年に大幅にリニューアルされたNISAを活用する方が多いと思います。


 一方で、iDeCoは、「60歳まで引き出せない」「積み立てられる期間が短いとメリットが小さい」などの理由から、後回しになりがちです。しかし、2027年以降に予定している制度拡充が進めば、iDeCoのイメージは従来と大きく変わる可能性があります。


 そもそもiDeCoは、掛金が全額所得控除の対象となり、運用益も非課税となる制度です。この「積み立てそのものに節税効果がある」という点は、保有資産を売却したり、配当・分配金を受け取ったりして初めて非課税の恩恵を受けられるNISAとは大きく異なる特徴といえます。


 こうした仕組みに加え、2027年1月からは次のような拡充が予定されています。


  • 会社員(第2号被保険者)…掛金の上限が月6.2万円へ(現行:月2.3万円)
  • 自営業者(第1号被保険者)…掛金の上限が月7.5万円へ(現行:月6.8万円)
  • 加入可能年齢が70歳未満まで延長(現行:60~65歳)

 拠出できる金額が大きくなれば、それに比例して、毎年所得控除で恩恵を受けられる金額も増えます。

従って、今後は、「iDeCoを使うべきか」よりも、「どれだけの金額をiDeCoで積み立てるか」が重要な検討ポイントとなるでしょう。


 なお、この制度拡充は、50代以降の方にとっても無視できません。iDeCoは「若い人向け」と思われがちですが、2027年1月以降は加入可能年齢が70歳未満まで延長されます。50歳で始めても、公的年金に加入している間(原則69歳まで)は拠出が可能です。


 さらに、掛金が全額所得控除になるため、税率が高くなりやすい世代ほど節税効果が大きいという特徴もあります。老後資金の運用を「短期勝負」で捉えるのではなく、節税と運用を組み合わせた長期戦略として考える転換点になるかもしれません。


 ここまで見ると、iDeCoとNISAは「どちらが有利か」を比較するものではなく、それぞれの役割が異なる制度であることが分かります。では、家庭単位での資産形成を考える際に、どの制度をどのように活用すべきなのでしょうか。


 次に、2026年度税制改正大綱に盛り込まれた「こどもNISA(仮称)」も踏まえながら、制度の使い分けについて考えてみたいと思います。


18歳未満向け「こどもNISA」の開始前にやっておくべきこと

 政府はこのほど、2026年度税制改正大綱に、NISAの拡充を盛り込みました。投資信託を積み立てる「つみたて投資枠」の対象年齢を、現行の「18歳以上」から「0歳以上」に拡充する方針です(仮称:こどもNISA)。口座保有者である子どもが0~17歳の場合、1人当たりの年間投資枠は60万円、非課税保有限度額は600万円。18歳になったら通常の制度に移行します。


 iDeCoが老後資金の形成に適した制度である一方で、「こどもNISA」は子どもが早いうちから将来に備えるために役立ちそうです。


 未成年向けの制度では、かつて「ジュニアNISA」が存在しましたが、払い出し制限などの使いづらさから利用が伸び悩み、2023年に終了しました。


 ジュニアNISA終了後も、教育費や子どもが成人した後の資産形成を長期で準備したいというニーズは根強く、政府内で再整備が議論されてきました。


 制度の詳細は今後決定する見込みですが、子どもの名義で非課税投資できる枠が再び設けられれば、家庭全体の資産形成における選択肢は大きく広がります。親の老後資金だけではなく、子どもの将来資産を含めて「家庭単位での長期投資」を設計できる時代になる可能性があります。


 その意味では、制度が始まってから考えるのではなく、制度が整う前に準備しておくことがポイントになります。特に2026年は、制度の方向性を見ながら、「家計の中でどれだけ投資に回せるか」を把握する年と位置づけることが有効です。


「いつ、何のために使うお金か」を逆算して考える

 制度の拡充が進むこれからは、どれか一つの制度を選ぶのではなく、目的に応じて複数の制度を使い分ける視点が重要になります。まずは「何のために資産をつくるのか」を明確にし、その目的に合わせて制度を選び、年間でどれだけ投資するかを考えることが効果的です。例えば、


  • 老後資金は、節税効果を生かせる「iDeCo」
  • 流動性を残したい資産は、売却が自由にできる「NISA」
  • 子どもの将来資金は、制度創設が検討されている「こどもNISA」

と、このように役割を分けて考えることで、非課税のメリットを最大限に生かしながら、無理のない範囲で資産形成を進めることができます。


 重要なのは、制度が整ってから行動するのではなく、2026年のうちに「投資に回せる金額」を整理しておくことです。年間の投資額をあらかじめ把握しておけば、制度がスタートした時点でスムーズに活用でき、長期のメリットをより受け取りやすくなります。

従って、2026年は、焦って投資額を増やす必要はないでしょう。


 そもそも資産運用とは、「お金を今使うか、それとも将来使うために取っておくか」という選択の違いでしかありません。将来のために取っておくと決めたお金を、ただ現金のまま置いておくのか、それとも時間を味方につけて運用しながら備えるのか。その「取っておく」過程にあるのが、資産運用です。


 iDeCoやNISAはあくまでも、その過程を後押しするための制度です。制度活用そのものを目的にするのではなく、「いつ、何のためにお金を使いたいのか」という視点から逆算して、どの制度をどれだけ使うかを考える。その姿勢こそが、制度拡充期における資産形成の軸になるでしょう。


(篠田 尚子)

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