米国株市場は主要3指数が最高値圏を維持しながらも、日中の乱高下が目立つ不安定さが続いています。背景には、中間選挙を見据え「庶民派」の顔を見せるトランプ大統領の動きがあります。
最高値圏を維持しながらも荒い値動きの米国株市場
2026年の幕開けから早くも3週間近くが経過しました。米国株市場の状況を確認すると、NYダウ・S&P500・ナスダック総合の主要3指数が揃って最高値圏での推移を続けています。
<図1>米主要株価指数のパフォーマンス比較(2024年末を100)(2026年1月14日時点)
足元で本格化しつつある決算シーズンを前に、表面的には「極めて好調」な状況のようにも見えますが、2025年末の終値から一時は約4,000円を超える上昇を見せている日経平均と比べると、上値の重たさが感じられるほか、日中の値動きを見ても、上昇から下落に転じたり、下落から上昇に切り返したりと、激しい展開が目立っています(下の図2)。
<図2>米S&P500の15分足の動き(2026年1月2日~1月14日)
こうした、米国株市場の「高値圏に位置しながらも不安定な値動き」の背景には、少なからず米トランプ政権の動きが影響しています。
2026年に入ってからの米トランプ政権は、ベネズエラにおける軍事作戦や、グリーンランド領有に向けた交渉、そして、イラン情勢への介入に言及するなど、主に国際社会への関与を強めている動きが目立っていますが、その一方で、トランプ米大統領が国内向けに「庶民派」の顔をのぞかせている点は見逃せません。
「庶民派」の顔を見せ始めたトランプ米大統領
トランプ米大統領がここへ来て「庶民派」としての顔をのぞかせ始めた背景には、今年11月に控える中間選挙の存在があります。政権運営の信任が問われるこの選挙に向け、インフレの再燃や生活コストの高止まりに不満を持つ中間層・低所得者層の支持を集めたいという狙いがあると思われます。
その象徴的な事例として挙げられるのが、1月中旬に浮上した「クレジットカード金利の上限制限」指示です。トランプ米大統領は、現在の米国のクレジットカード金利(平均20%超)について、「銀行が暴利を貪っており、国民が搾取されている」と激しく批判し、1年間の時限措置として、金利上限を一律10%に制限するよう求めました。
この発言を受け、銀行株やクレジット株などの金融セクターの株価が下落するなど、市場はネガティブな反応を示しました。
<図3>主な米金融機関株のパフォーマンス比較(2024年末を100)(2026年1月14日時点)
また、金融業界だけでなく、AIブームの牽引役である米巨大テック企業に対しても、その矛先が向けられています。
「データセンターの膨大な電力消費が、一般家庭の電気代を押し上げている」というロジックで、マイクロソフトなどのクラウド事業者に対し、電力インフラのコスト増分を企業側が負担するよう強要する姿勢を見せています。「AI覇権」という国益よりも、「明日の電気代」を気にする有権者の感情に寄り添う姿勢を鮮明にした形です。
さらに、不動産業界に対する圧力も強まっています。住宅価格の高騰や家賃の上昇が止まらない現状に対し、トランプ米大統領はその理由を「機関投資家による買い占め」とし、機関投資家による一戸建て住宅の購入禁止を示唆したほか、政府系住宅金融機関に対し、不動産担保証券(MBS)の大規模な買い取りや金利引き下げ介入を指示するなどの介入をちらつかせています。
「徳政令」的な政策によるリスク
トランプ米大統領のこうした国内向けの姿勢は、11月の中間選挙に向けて、生活コストに苦しむ有権者の支持を得るための手段としては効果的かもしれません。しかし、「徳政令」のような政策は、米経済の成長エンジンにブレーキをかけ、深刻な副作用をもたらす「劇薬」になってしまう可能性があります。
そのリスクは大きく分けて3つの側面から指摘できます。
第一に、クレジットカード金利への人為的な介入は、「クレジット・クランチ(信用収縮)」を招くリスクです。金融機関が高い金利を設定するのは、貸し倒れリスクの高い借り手に対する保険料(リスクプレミアム)という意味合いがあります。
仮に、トランプ米大統領の指示通りに上限金利が一律10%に制限されれば、貸し手は採算が合わなくなるため、低所得者層やクレジットスコア(信用偏差値)が低い個人への貸し出しを絞らざるを得なくなります。
その結果として、「金利が下がって助かる」どころか、本当に資金を必要としている数百万人の庶民がカードを作れなくなったり、利用停止に追い込まれたりする事態が発生します。
米国経済の約7割を支える個人消費はクレジットカード決済に依存しており、ここが詰まれば、小売売上高の急減や景気後退の引き金を引くことになりかねません。トランプ米大統領もこうしたリスクを把握している故に、1年という時限措置にしていると思われますが、注意しておく必要があります。
第二に、不動産市場の混乱です。機関投資家の購入を制限することで、住宅価格の上昇を抑えるのが狙いですが、実際に機関投資家が保有する米国の戸建て住宅は、市場全体の約3~5%程度のため、効果は限定的にとどまるという見方があるほか、住宅価格高騰の根本的な要因は、約400万戸とも言われる供給不足です。
機関投資家は近年、新築の戸建てを賃貸用に開発しており、住宅の購入側であると同時に供給側の面も有しているため、機関投資家が不動産市場から遠ざけられる状況となれば、新規の賃貸物件の供給が細り、その結果として需給が逼迫して家賃がさらに高騰するという結果を招く可能性があります。
第三に、AI・テック産業への足かせです。 電力コストやインフラ整備費用をテック企業に転嫁させれば、企業の収益を減らすほか、設備投資の意欲が後退することも考えられます。現在、米国株の上昇を牽引しているのはAI関連のイノベーションですが、データセンターなどのインフラ整備が滞ることになれば、米国企業のAI競争力の鈍化につながります。
このように、トランプ米大統領が打ち出す「庶民派政策」は、短期的にはポピュリズムとして歓迎されても、中長期的には市場の歪みを生み、経済全体を停滞させるリスクが潜んでいます。
「何が起こるか分からない」不透明感に注意
もっとも、トランプ米大統領が掲げるこれらの政策を実行するには、議会の承認が必要であるほか、共和党内にも自由市場を重視する勢力は多く、現時点で実現する可能性は低そうです。
また、金融市場でもこれらを選挙向けのパフォーマンスと見做し、「最終的には現実的な落とし所に落ち着く」と見方が優勢となっていて、昨年のような「TACO (Trump Always Chickens Out = トランプは最後にはビビる)」トレードが繰り返されることも考えられます。
とはいえ、政策の成否にかかわらず、トランプ米大統領による突然の「発言」によって、株式市場が揺るがされてしまうという不透明感がくすぶり続けること自体がリスクになり、株価の上値を抑える要因となるほか、中間選挙という政治的な締め切りがある以上、支持率の動向次第では、トランプ米大統領が焦りを感じ、予期せぬ「ちゃぶ台返し」が起きる頻度が増えるかもしれません。
株式市場では、「中間選挙の年は株価が軟調になりやすい」という経験則(アノマリー)がありますが、今回(2026年)も経験則通りになってしまいかねない火種がくすぶっていることは意識しておく必要がありそうです。
(土信田 雅之)

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