1月14日、国内大手地金商の金(ゴールド)小売価格(税込)が、はじめて2万6,000円台をつけました。トランプ米大統領が各所で不安を振りまいているからだ、という声も聞きます。

今回は、金(ゴールド)相場を取り巻く環境と、ベネズエラとイランで発生している不安感について述べます。


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はじめての2万6,000円、他の貴金属も高い

 以下の通り、国内地金商大手の金(ゴールド)小売価格は、初めて2万6,000円を超えました。2026年1月14日、午前中のことでした。


図:国内大手地金商の金(ゴールド)小売価格(税込)の推移(1973年1月5日~2026年1月16日) 円/グラム
金(ゴールド)価格、最高値更新と「資源の呪い」
出所:国内地金大手のデータをもとに筆者作成

 足元の価格水準は、「有事の金(ゴールド)」「インフレの時は金(ゴールド)」という言葉が広がった1980年前後、そして「株と金(ゴールド)は逆相関」という言葉が生まれた1990年代よりも、格段に高い状態にあります。


 2001年ごろから、徐々に長期視点の価格反発が始まり、2010年ごろから、反発が本格化し、2020年ごろから飛躍的な上昇が生じています。まさに今、過去に例を見ない圧倒的な上昇局面にあるといえます。


 このように考えると、現在の金(ゴールド)価格の動きを、過去にできた金(ゴールド)相場の値動きを説明する言葉だけで説明することはできないといえます。


 以下の表は、世界の指標になり得るドル建ての国際商品(コモディティ)の価格、そして主要国の株価指数の騰落率を示しています。2025年末と2026年1月16日の終値を比較しています。


図:主要銘柄(コモディティはドル建て)の昨年末以来の騰落率(2025年末と2026年1月16日を比較)
金(ゴールド)価格、最高値更新と「資源の呪い」
出所:Investing.comのデータより筆者作成

 ドル建ての金(ゴールド)の騰落率はプラス4.77%でした。日経平均株価のプラス7.14%には及びませんでしたが、金(ゴールド)は、昨年末からの価格上昇が目立つ銘柄の一つです。


 また金(ゴールド)と同じ貴金属に分類される、銀(シルバー)、プラチナ、パラジウムも大きく上昇しています。これらの価格は、昨年末以来、10%を超える上昇を演じています。


 さまざまな投資家の間で、金(ゴールド)が高値圏で推移するのを見て、それに比べて安いプラチナを買ったり、金(ゴールド)に比べて値動きが大きい傾向がある銀を買ったりする動きが、短期的に目立っていると考えられます。


日米金(ゴールド)価格比≒ドル/円相場

 国内大手地金商の金(ゴールド)小売価格と同様、価格の単位が円の「大阪の金(ゴールド)先物」と、価格の単位が米ドルの「ニューヨークの金(ゴールド)先物」の価格推移を確認します。以下はそれぞれを、2024年1月4日を100として指数化したグラフです。


図:大阪金先物とNY金先物の推移(2024年1月4日を100として指数化)
金(ゴールド)価格、最高値更新と「資源の呪い」
出所:楽天証券およびInvesting.comのデータをもとに筆者作成

 ドル建ての金(ゴールド)価格は、世界中の金(ゴールド)価格の指標になり得ます。このため、大阪の金(ゴールド)先物の価格や、日本国内の大手地金商の金(ゴールド)小売価格は、ニューヨークの金(ゴールド)先物をはじめとしたドル建ての金(ゴールド)価格の推移に追随する傾向があります。


 グラフの通り、大阪の金(ゴールド)先物価格も、ニューヨーク金(ゴールド)先物価格も、2024年の年初以降、上昇傾向を維持しています。これは、ニューヨーク金(ゴールド)先物価格の上昇に、大阪の金(ゴールド)先物価格が追随しているために起きている事象、ともいえます。


 ただ、赤い丸印で示した箇所では、大阪の金(ゴールド)先物価格が、ニューヨーク金(ゴールド)先物価格に対して、上振れしています。2024年の年初からの上昇傾向は変わらないものの、短期的に、追随の仕方に強弱が生じることがあります。


 これは、ドル/円相場が大きく動く局面で起きる事象です。以下のグラフは、円建てである大阪の金(ゴールド)先物価格をドル建てであるニューヨーク金(ゴールド)先物価格で割った値と、ドル/円相場の推移を示しています。


 大阪の金(ゴールド)先物価格をニューヨークの金(ゴールド)先物価格で割った値が上昇すれば、大阪の金(ゴールド)先物価格がニューヨークの金(ゴールド)先物価格に対し、強くなっていることを示します。これは先ほどの「上振れ」の状態です。


図:大阪金先物とNY金先物の価格比およびドル/円の日次平均
金(ゴールド)価格、最高値更新と「資源の呪い」
出所:楽天証券およびInvesting.comのデータをもとに筆者作成

 この上振れの状態が発生するタイミングは、ドル/円相場が大きく円安に触れるタイミングとほぼ同じです。つまり円安が、大阪の金(ゴールド)先物価格がニューヨーク金(ゴールド)先物価格に対して上振れする要因の一つに挙げられるといえます。


 円安は金(ゴールド)を含む国際商品の輸入価格を押し上げる要因の一つです。円安時は、同種の商品において、円建ての価格がドル建ての価格に対して割安感が醸成されて投資家が物色する、価値を維持するためにコストが多くかかるため(ドル建てに対して)価格が上振れする、などと説明されることがあります。


 冒頭で述べた国内地金商大手の金小売価格の高値更新の背景には、昨年末以来、短期的に進行している円安も挙げられるといえます。(円高の場合は、円建て金(ゴールド)の価格が、ドル建て金(ゴールド)の価格に対して、下振れすることがあります)


七つのテーマで金(ゴールド)市場を網羅

 先ほど、ドル建ての金(ゴールド)価格は、世界中の金(ゴールド)価格の指標になり得ると述べました。そのドル建ての金(ゴールド)価格の変動のイメージを確認します。


 また、冒頭で述べたとおり、足元の価格水準は、「有事の金(ゴールド)」「インフレの時は金(ゴールド)」という言葉が広がった1980年前後、そして「株と金(ゴールド)は逆相関」という言葉が生まれた1990年代よりも格段に高く、現在の金(ゴールド)価格の動きを、過去の言葉だけで説明することはできないといえます。


 つまり、2000年前半から、飛躍的に上昇し続けている金(ゴールド)価格の変動を説明するためには、現代の言葉が必要なのです。まずはイメージを確認します。


図:ドル建て金(ゴールド)価格の変動イメージ
金(ゴールド)価格、最高値更新と「資源の呪い」
出所:筆者作成

 上の図のとおり、現代の金(ゴールド)相場は、土台の上に成り立っています。土台とは、時間軸が比較的長い要素を持つ「非伝統的材料」に分類される、「中央銀行の金(ゴールド)保有」、そして「非伝統的な有事」です。


 そして、その土台の上に、短期的な時間軸に分類される「伝統的材料」が乗っている、というイメージです。

伝統的材料には、戦争やテロなどの「伝統的な有事」、株との逆相関を意味する「代替資産」、ドルとの逆相関を意味する「代替通貨」があります。このイメージ図から、現在の金(ゴールド)価格の変動は、一つのテーマだけで起きていないことが分かります。


 以下は、今述べた、さまざまなテーマを時間軸ごとに分類した上で、具体的な材料を示した図です。


図:ドル建て金(ゴールド)に関わる七つのテーマ(2026年)
金(ゴールド)価格、最高値更新と「資源の呪い」
出所:筆者作成

  足元、短期的に目立っているテーマに「伝統的な有事」「代替通貨」が挙げられます。


「伝統的な有事」は、ベネズエラやイラン情勢の悪化がきっかけで生じている世界規模の不安心理がもたらす上昇圧力です。「代替通貨」は、米国の金融政策の方向性が緩和的(利下げ方針)であることによる米ドルと金(ゴールド)の対比をきっかけとした上昇圧力です


 土台となり、長期視点で金(ゴールド)相場の上昇トレンドを支えているテーマに「中央銀行の金(ゴールド)保有」「非伝統的な有事」が挙げられます。


「中央銀行の金(ゴールド)保有」については、2010年以降、世界分断や民主主義後退、長期視点のインフレなどをきっかけとした中央銀行全体としての金(ゴールド)買いが続いていることによる上昇圧力です。「非伝統的な有事」は、世界分断や民主主義後退、長期視点のインフレがきっかけで生じている、世界規模の不安心理がもたらす上昇圧力です。


 こうした時間軸ごとに分類した七つのテーマこそが、現在の金(ゴールド)相場を分析するために必要な言葉だといえます。


ベネズエラとイランの原油生産シェア5.4%

 ここからは、「伝統的な有事」に分類される、ベネズエラとイランの情勢について確認します。足元、これらの地域で不安が拡大していることが、短期的に金(ゴールド)価格を押し上げる要因になっていると考えられます。


 以下は、米国のほか、南米大陸の北部に位置するベネズエラ、中東のペルシャ湾の東側に位置するイランを示した図です。ベネズエラには、東西に流れるオリノコ川の北岸にあるオリノコタールと呼ばれる油田地帯があります。

ベネズエラの世界一の原油埋蔵量を支えている地帯です。


図:米国、イラン、ベネズエラの位置など
金(ゴールド)価格、最高値更新と「資源の呪い」
出所:Map Chartをもとに筆者作成 イラストはPIXTA

 イランは、アラビア湾とインド洋を結ぶ世界屈指の海上交通の要衝「ホルムズ海峡」に接しています。過去にもイランがホルムズ海峡封鎖を示唆し、アジアを中心に原油の供給途絶懸念を高めたことがありました。


 このように、ベネズエラもイランも原油に深く関わっている国です。1960年に発足した石油輸出国機構(OPEC)の原加盟国でもあります。


 原油というイメージが浮上しやすい両国ですが、以下のとおり、OPECプラス※に参加している国でありながら協調減産を実施していない、なおかつイランとベネズエラの原油生産シェアの合計がわずか5.4%であることも、事実です。


※OPECに加盟する12カ国、そしてロシアやカザフスタンなどの非加盟の11カ国です。原油の生産シェアはおよそ59%です(2025年10月時点)。


図:イランとベネズエラの原油生産シェア(2025年10月時点)
金(ゴールド)価格、最高値更新と「資源の呪い」
出所:OPECの資料およびライスタッド・エナジーのデータより筆者作成

 原油に関わっている国々で情勢が悪化している、だから原油価格が短期的に反発している、という連想は生じますが、イランとベネズエラはそれほど目先の原油供給に大きな影響を与えない点についても、考慮する必要があるでしょう。


「資源の呪い」にかかった両国の不安継続

 以下の図は、原油の確認埋蔵量(上位5カ国)の推移です。ベネズエラが1位、イランが3位です。(カナダのオイルサンドを除く)。このグラフを見て、「ベネズエラとイランが大量の原油を持っている」と、感じる人は少なくないでしょう。


図:原油の確認埋蔵量 上位5カ国 単位:百万バレル
金(ゴールド)価格、最高値更新と「資源の呪い」
出所:OPECのデータをもとに筆者作成

 ただ、イランとベネズエラの国力は大きく低下しており、サウジアラビアやイラク、アラブ首長国連邦(UAE)など、他の産油国のように機動的に原油生産量を増やすことは難しい、という事情があります。


 その原因の一つに、まさに「原油を大量に持っている」というイメージが関わる、「資源の呪い」が挙げられます。


 資源の呪いとは天然資源を持つ国が、経済発展や民主化の面で、資源を持たない国よりも不利な状況に陥る現象のことです。こうした事象が発生する原因に、自国の資源が莫大(ばくだい)な利益をもたらした成功体験が挙げられます。


 こうした成功体験により、資源からの収入に依存して、他の産業が縮小したり、汚職が発生しやすくなったりします(国内事情)。また、当該資源を求める国から政治的な介入を受けやすくなったり、生産国との連携を強いられたりすることもあります(国外事情)。


 一度、資源の呪いにかかると、自力でそこから脱却することは困難であり、他国に助けを求めても資源目当ての支援が横行する場合もあります。資源を持っていることが大変な「呪い」のきっかけになってしまうのです。


 以下のグラフのとおり、イランもベネズエラも、2000年代前半に輸出額(石油関連を含む合計)が急増し、大きな成功体験を獲得しました。新興国の台頭をきっかけとした世界の石油需要が、強い追い風になったためです。


図:イランとベネズエラの輸出額 単位:10億ドル
金(ゴールド)価格、最高値更新と「資源の呪い」
出所:IMFのデータをもとに筆者作成

 しかし、その後は、リーマンショック(2008年)が発生して世界の石油需要が減少したり、逆オイルショック(2015年前後)発生や、ESG(≒石油否定)(2010年ごろ以降)拡大によって窮地に立たされたりしました。米国などの断続的な政治・経済への介入もマイナスの影響を与えました。


 すでに、2000年代前半の大きな成功体験を獲得した影響で、既得権益層が利益を搾取したり、汚職がまん延したりしていました。国内では大変なインフレ(物価高)が発生し、国民の生活は困窮していました。


 そしてその結果、イランでは大規模な反政府デモが勃発し、ベネズエラでは国民のおよそ4分の1が国外に逃れる事態に至ったのです。


 一度「資源の呪い」にかかると、自国の努力や工夫だけでは、もとの状態に戻ることは困難です。他国の支援があったとしても、資源目当ての支援が横行するリスクも残ります。イランとベネズエラをめぐる混乱は、まだしばらく、続く可能性があります。このことは、金(ゴールド)相場に「伝統的な有事」をきっかけとした上昇圧力が続くことを示唆しています。


 筆者は、ドル建て金(ゴールド)価格は、細かい上下を繰り返しながら、上昇傾向を維持すると考えています。これにつられて、円建て金(ゴールド)も上昇傾向を維持すると考えています。


 引き続き、現在の金(ゴールド)相場を分析するために必要な言葉である「七つテーマ」にそった分析を続けていきたいと思います。


[参考]貴金属関連の具体的な投資商品例

純金積立

純金積立・スポット購入


投資信託

※「楽天・ゴールド・ファンド(為替ヘッジなし/あり)」「楽天・プラチナ・ファンド(為替ヘッジなし)」の当初募集期間は1月13日(火)~1月19日(月)15時まで、運用開始日(設定日)は1月21日(水)。
三菱UFJ 純金ファンド
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)
楽天・ゴールド・ファンド(為替ヘッジなし/あり)
楽天・プラチナ・ファンド(為替ヘッジなし)


中期:


関連ETF

SPDRゴールド・シェア(1326)
NF金価格連動型上場投資信託(1328)
純金上場信託(金の果実)(1540)
NN金先物ダブルブルETN(2036)
NN金先物ベアETN(2037)
GXゴールド(425A)
SPDR ゴールド・ミニシェアーズ・トラスト(GLDM)
ヴァンエック・金鉱株ETF(GDX)


短期:


商品先物

国内商品先物
海外商品先物


CFD

金(ゴールド)、プラチナ、銀、パラジウム


(吉田 哲)

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