日銀は1月金融政策決定会合で政策金利の据え置きを決める公算です。次回利上げはいつになるのか。
日銀は1月の金融政策決定会合で政策金利据え置き~19日にETF売却開始~
日銀は1月22~23日に開催する金融政策決定会合(MPM)で、政策金利を据え置く見通しです。前回のMPMで0.75%への利上げを実施したばかりであることや、昨年9月に決定した上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(REIT)の売却を19日から開始したことから、それらの市場や経済に与える影響をしばらく見極める必要があるからです。
ETFとREITの売却に関しては、市場に大きな影響を及ぼさないよう年間3,300億円程度、月平均275億円という緩やかなペースを想定しているわけですが(図表1)、市場がどういった反応を示すかは、実際に売却をスタートしてみなければ分かりません。そんなタイミングで利上げなどしないのが普通です。
<図表1 日本銀行が2025年9月に決定したETF等の処分方針>
次回利上げの前倒しはあるのか~難しい舵取りを迫られる日銀~
ただし、次回利上げのタイミングについては、市場の見方が少し前倒しとなりつつあります。金利スワップ市場では、4月MPMまでに利上げする確率が約60%まで上昇しています。
確かに、1ドル159円台まで進んだ円安を考えれば(1月13日1ドル159.14円)、早いタイミングでの利上げを市場が想定するのも理解できます。しかし、その一方で長期金利もかなり急ピッチで上昇しています(図表2)。
<図表2 日米10年金利の推移>
高市早苗首相は1月19日に記者会見を行い、23日に衆院を解散することを表明しました。27日公示、2月8日投開票のスケジュールで総選挙が行われる予定です。記者会見では、食品に対する消費税を2年間ゼロにすることも明らかにしました。
20日の市場では財政リスクに対する懸念が膨らみ、10年金利は図表1に示した19日の2.265%よりさらに高い2.3%台となっています。市場では今後も金利上昇が続くとの見方が多く、筆者の推計では年内3%到達も見えてきた状況です。財政リスクをより反映しやすい超長期金利も上昇しており、新発40年債の利回りは初めて4%台をつけました。
速すぎる長期金利の上昇は金融機関が保有する国債の含み損を拡大させ、金融市場ひいては金融システムの脆弱化につながりかねないため、日銀は為替よりはむしろ長期金利に配慮する必要があります。日銀は難しい舵取りを迫られており、円安だから利上げ前倒しと単純に捉えることができない状況です。筆者の次回利上げに対する見方は6月(もしくは7月)で変えていません。
ETFの含み益60兆円、引き続きETFの分配金が日銀の収益を下支え
さて、19日に日銀がETFの売却を始めたこともありますので、久方ぶりとなりますが、日銀の収益状況やそれに対するETFの位置づけなどを簡単に見ることにしましょう。
日銀は2025年度の中間決算で、2025年9月末時点の保有ETFが簿価で37.2兆円、時価で83.2兆円(含み益46兆円)であることを公表しています。筆者の計算によると、現在、時価が約98兆円程度まで膨らみ、含み益は60兆円程度に拡大しています。
この簿価を前提にすると、上述した緩やかなペースでETFを売却した場合、すべて売り切るまでに112年、時価を前提にすると297年かかる計算となります。そのくらいゆっくりとした売却ですので、しばらくはETFから得られる分配金が、日銀の収益を支える構図は変わらないとみています。
図表3は、日銀が保有している国債から得られる「国債利息」と、ETFから得られる「金銭の信託(信託財産指数連動型上場投資信託)運用損益」(簡単に言うと分配金です)の推移を示したグラフです(2025年度は筆者による推計)。
<図表3 日本銀行の収益二本柱(国債利息とETFの運用益)>
図に示したとおり、ETFの運用益は1兆円を上回っており、国債から得られる2兆円超の国債利息とともに、日銀の経常利益を支える二本柱となっています。
日銀の収益構造~保有国債からの「国債利息」が収益の柱~
その日銀の経常利益の推移が図表4になります。
<図表4 日本銀行の経常利益と国庫納付金>
簡単に日銀の収益構造をおさらいしておきましょう。
通常、中央銀行のバランスシートには、資産側に金融調節を通じて購入した国債などの資産が計上され、負債側には発行銀行券、取引先金融機関の当座預金、政府の預金が計上されます。このうち資産として保有する国債からは利息が得られる一方で、負債側の当座預金には政策金利と同様の付利による利払いが発生します。
その差額として得られた経常収益から経費等の経常費用を差し引いたものが経常利益となり、そこから引当金や法人税などを差し引いた剰余金を、国の会計に組み入れるというのが一般的な中央銀行の姿です。
日本銀行の場合、例えば2024年度を見ると、経常利益が2.79兆円、引当金が0.5兆円、法人税等が0.06兆円で当期剰余金が2.26兆円。そこから法定準備金の積み立てなどを除いた2.15兆円が、「国庫納付金」として政府の一般会計に繰り入れられました。
ここで、2024年度の経常利益が前年度から大幅減となっていることに気付かれた読者が多いのではないでしょうか。以下では、それがなぜか、そして2025年度はその傾向がもっと強くなることを解説しましょう。
保有国債から得られる国債利息と当座預金に対する利払いはすでに逆転
前述したとおり、2024年度の経常利益は2.79兆円と、前年の4.64兆円から39.8%の減益となりました。同じ期の国債利息は2.08兆円で前期から21.3%の増加、ETFの分配金は1.38兆円で11.9%の増加であったにもかかわらず、どうして大幅減益になったのか。
それは当座預金の付利が引き上げられたことによって、その利払い(「補完当座預金制度利息」)が膨らんだことが背景にあります。
日銀は2024年3月にマイナス金利政策を解除し、同年7月と2025年1月に利上げを実施しました。
付利の制度を導入している中央銀行はどこでも同じですが、利上げを行うと付利も引き上げざるを得ないという事情があります。簡単に言えば、短期市場で運用するか、当座預金に積むかで市場の裁定が働くからです。したがって、利上げを行うと、同時に利払いも膨らむことになります。
しかし、保有する国債から得られる利息収入はすぐには拡大しません。利上げに伴って長期金利が上昇したとしても、すべての保有国債がすぐに利回りの高い国債に入れ替わるわけではないからです。その結果、利上げを行うと経費の方が相対的に大きく膨らみ、中央銀行の収益は悪化します。これが2024年度の日銀の収益が大幅に減少した背景です。
実は、昨年11月26日に公表された2025年度上期決算を見ると、収入である「国債利息」を経費である「補完当座預金制度利息」が上回る逆ざやが発生しています(図表5)。日銀の2025年度の経常利益は引き続き減少する可能性が高いと見ています。
<図表5 日本銀行の「国債利息」と「補完当座預金制度利息」>
日銀の収益悪化をどう捉えるか
日銀が今後も利上げを実施して行けば、上で述べた逆ざやがさらにきつくなることが予想されます。
2024年1月10日: 日銀は利上げで債務超過に陥るのか~その試算と問題の本質(愛宕伸康)
利上げによって日本銀行の収益が悪化しても、ETFの分配金が下支えとなって赤字に転落することはないかもしれませんが、万が一赤字になったとしても、それによって中央銀行としての通常業務に影響が及ぶことはありません。通貨発行主体であるためデフォルトはありませんし、将来にわたって得られる運用益がいずれ損失をカバーするからです。
しかし、だからといって日銀の赤字に全くリスクがないかというと、そうではありません。日銀の財務状況が大幅に悪化して、政府との緊張関係が高まったり、金融政策に対する政府の介入が強まれば、市場が日銀の政策遂行能力に疑念を抱き、無秩序な通貨安や長期金利の上昇につながる危険性があります。
中央銀行の財務問題の本質は、赤字になるかどうかではなく、それによって物価安定という責務を遂行する能力に疑念が生じないか、それを市場がどう見るかであると整理することができます。このところの政治の動きや加速する円安、上昇ピッチの速い長期金利を見るにつけ、すでに市場の警鐘が鳴り始めているような気がしてなりません。
(愛宕 伸康)

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