前回のコラムでお伝えした年間の重要イベントだけでなく、政策や首相・大統領の行動など相場に影響を与えるリスクを押さえておくことで「想定外の政治リスク」に備えることができます。毎年マーケットが注目しているユーラシア・グループの「世界10大リスク」予測を見ながら2026年のリスクシナリオをみていきます。
「想定外の政治リスク」に備える
1月19日(月)、高市早苗首相は23日召集の通常国会冒頭で衆院を解散する意向を表明しました。衆院選は27日公示、2月8日の投開票の日程で実施するとのことです。「責任ある積極財政」などへ信を問う考えを示し、勝敗ラインを「与党で過半数」と設定し、首相としての進退をかけるとの決意を表明しました。
この会見でドル/円は一時158円台前半に乗せましたが、それ以上の円安には進みませんでした。10年物国債利回りが一時2.275%に上昇し、1999年以来27年ぶりの高水準となった動きと比べると、ドル/円は介入警戒感や22~23日の日本銀行の金融政策決定会合が控えていることから、慎重な動きとなっています。
ドル/円は、1月23日の冒頭解散で円安が進むシナリオを想定していましたが、19日の記者会見予告によって織り込まれたことや立民・公明の新党結成の動きから、一段の円安となるためには2月8日の投開票まで待つこととなりました。
日銀会合では、利上げ見送りとの見方が大勢ですが、多少タカ派の内容となってもポジション調整の域を出ない可能性がありそうです。選挙で「与党で過半数」の結果となった場合には、一段の円安に動意付くことが予想されますが、それまでは様子見相場が続きそうです。
前回のコラムでは2026年の重要日程をお伝えしました。その中で政治イベントは、その結果によって瞬時に相場に影響を与えたり、その時の経済環境も無視して影響を与える場合もあるため、最重要で注目すべき要因だとお話しました。
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2026年の重要イベント:「政治要因と経済要因」から読み解く為替相場シナリオ
日程が決まっている政治イベントは事前に複数の相場シナリオを想定できますが、日程が定まっていない政治リスクも同時に捉えておく必要があります。
日程が定まっていなくても首相や大統領の行動や政策によって政治環境や経済環境に変化を与える可能性があるリスクを押さえておけば、今後の相場シナリオを想定する際のリスクシナリオとして準備しておくことができるからです。
例えば、高市首相の1月の衆院解散表明は、昨年末には予想されていませんでした。
しかし、年が明けると急速に通常国会召集日の冒頭解散シナリオが浮上し、相場も株高、金利上昇、円安に動意付きました。この時点で1月の日米金融政策の日程や予想される選挙日程に留意して相場シナリオを組み直し、準備することができます。
ユーラシア・グループが予測する「世界10大リスク」
今年になって、トランプ政権によるベネズエラへの電撃攻撃とマドゥロ大統領の拘束、日本の急展開する政治情勢だけでなく、グリーンランドを巡る欧米の対立など目まぐるしく世界情勢が動いています。今後も起こる可能性のある政治リスクを捉えておく必要性がますます高まってくる気配です。
このような政治リスクは専門家の見方が参考になります。毎年、年末年始になると、いろいろなシンクタンクや金融機関が「世界の10大リスク」を発表していますが、その中でもマーケットで最も注目されているのが、イアン・ブレマー氏率いるユーラシア・グループ(※)が年初に発表する「世界10大リスク」です。
※ユーラシア・グループは1998年に米国で設立された世界最大規模の政治リスク専門コンサルティング会社。マーケットを動かす可能性のある世界各国・地域の政治リスクを分析し、機関投資家や多国籍企業にアドバイスしている。戦争や政情不安が起きる危険性など、地政学的リスクの分析に定評がある。社長のイアン・ブレマー氏は国際政治学者で、2011年に既に「Gゼロ」の時代が来ると指摘したことで一躍有名になった。
「Gゼロ」とは、世界を動かすのはG7(先進国の7カ国グループ〈日米英独仏伊加〉)でもなく、G2(米中)でもなく、Gゼロ、つまり「リーダーなき世界」を意味する。同氏は、世界はますますGゼロの世界になってきていると分析している。
ユーラシア・グループが予測する「世界10大リスク」とは政治や経済に大きな影響を与えそうな事象のことで、マーケットを大きく動かす可能性があるリスクでもあります。的中することも多く、専門家が2026年の政治リスクをどのように見ているのかを知っておくことは非常に重要です。
このコラムでは、毎年、ユーラシア・グループの「世界10大リスク」を紹介しています。この報告書は有料ですが、数日経つと新聞やネットで概要が公開されます。また、TVニュースでも特集されますので、それらを参考にすることができます。
今年の「世界10大リスク」は図の通りです。参考までに昨年の「世界10大リスク」も併記しました。昨年との対比によってリスクが内在する地域・国の変化や比重を読み取ることができます。
報告書では、2026年は転換点の年と位置付け、地政学的な不確実性が極めて高い年になると予測しています。それは米中対立が起きるのでもなく、米・ロシア間の緊張が制御不能に陥ることでもないとしています。2026年の最大の不確実性要因は米国だと強調しています。
米国は自ら築いた世界の秩序を変えようとしており、それが世界にかつてない不確実性をもたらしていると指摘しています。
2026年は米国が最大のリスクに
2026年の「世界10大リスク」では、米国に関するリスクとして1位、3位、6位、9位の四つのリスクを挙げているのは注目すべき点です。
2026年最大のリスクとして1位に、トランプ氏が大統領権限を強めていく「米国の政治革命」を挙げています。「トランプ氏自身への権力の歯止めを解体し、政府機構を掌握し、敵に対し武器として利用しようとしている」として、「第1次トランプ政権までは持ちこたえていた安全装置はいまや崩れつつある」と指摘しています。
さらに11月の中間選挙で民主党が下院で多数政党になる見込みだとして、「レガシー(功績)を定着させようと、リスク回避的になるどころか、よりリスクをとるようになる」と指摘しています。
3位には、ベネズエラのマドゥロ大統領拘束につながった、米国が南北アメリカ大陸を自らの勢力圏と主張する「ドンロー主義(トランプ版モンロー主義)」が選出されました。ただ、中国が中南米への影響力を強める中で、米国の強引な圧力にさらされれば中南米各国の中国依存がさらに高まる可能性があると言及しています。
そのほか6位には、政府が民間企業の経営に介入する「米国式国家資本主義」が選ばれ、9位に「USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)のゾンビ化」を挙げています。USMCAは、発効6年目(2026年7月)に協定の見直しを行うことを定めていますが、3カ国の見直しはまとまらないだろうと予測しています。企業や政府は予測不可能な状況に陥るだろうと指摘しています。
このように「世界10大リスク」の内、米国に関する四つのリスクが挙げられており、2026年は「米国が最大のリスク」ということがよく分かります。
中国については二つのリスクを挙げています。2位のリスク「『電気国家』中国」では、中国が電気自動車(EV)やドローンなどに欠かせないバッテリーやモーターなどで世界をリードしていることを挙げ、「米国はドローンやAI、ロボットなど先端技術の覇権を中国に譲り渡しつつある」と指摘しています。
そして7位に「中国のデフレ」を挙げています。中国はデフレ・スパイラルから抜け出せず、その余波が世界に波及するリスクを予測しています。
また、「中国のデフレ」は日本にとって最大のリスクだとしています。中国国内では、日本企業の現地ビジネスや対中輸出で厳しい競争になることや、中国のデフレ輸出によって東南アジアなどでは日本製品にとって収益圧迫になると指摘しています。
欧州については、4位に「包囲される欧州」として、英独仏の三大国で政治が空洞化し、政府が機能不全に陥るリスクを挙げています。欧州統合の求心力が低下し、経済的・外交的な停滞が予想されるとしています。グリーンランド問題で米欧が対立していますが、欧州や北大西洋条約機構(NATO)が分裂するシナリオも想定しておいた方がよいかもしれません。
21日、トランプ大統領はスイスのダボス会議で欧州主要国とグリーンランドに関して協議する予定とのことですが、どのような結果になるのか注目です。
ロシアのリスクとして、5位に「ロシアの第2の戦線」を挙げています。
以上のように今年もさまざまな政治リスクが想定されます。ここに挙げられたリスクは目新しいものではありません。既にメディアで報道されているものですが、政治リスクの専門家がどのリスクに重点を置き、そのリスクが今後どの程度の大きさで世界に影響を及ぼすのかを知ることができます。
政治リスクは突然起こる場合は避けようがありませんが、どの地域にどのようなリスクがあるかを把握しておけば、為替の想定シナリオにそのリスクシナリオも加えておくことができます。また、事前にリスクの兆候がみられ、そのリスクが高まってくる場合はそのリスクに対応する準備ができます。
心構えとしてそのリスクシナリオを加えておくのとおかないのとでは大きな違いがあるため、事前に準備しておくことが肝要となります。
今年の為替相場の最大注目要因は日米の金融政策ですが、これに加えて日本の積極財政に対する懸念が円売り材料として注目されています。さらに政治リスクとして米国の不確実要因が加わります。11月の米中間選挙を控えてトランプ大統領の行動が波乱材料になることが増え、相場が一層翻弄(ほんろう)されることが予想されるため注意する必要があります。
また、米国の不確実性が今以上に高まると、米国を嫌気して米金融市場から米国離れが起きる可能性にも留意しておく必要があります。20日、「デンマークの年金基金アカデミカーペンションが米国債から撤退」との報道で一時トリプル安(株安、債券安〈金利上昇〉、ドル安)となりました。
同基金は欧州で最も厳しい倫理的投資基準の一部を適用していることで知られており、「トランプ米大統領の下で高まる信用リスクを理由に、月末までに米国債からの撤退を計画している」と表明し、「米財政はもはや持続不可能である」と述べ、財政規律の弱さ、ドル安、トランプ氏のグリーンランドに関する発言を撤退理由として指摘しました。
今回は市場の反応は限定的でしたが、このような動きが今後も出てくるのかどうか注意する必要があります。政治リスクは経済リスクとは別の大きな流れの中で為替の動きを見ていく必要があります。
日本の政局は、立民・公明の新党結成によって高市政権解散は失敗するとの見方もありますが、「世界10大リスク」が示唆するように世界情勢が急変してきており、有権者も強いリーダーを求める可能性もあるため、選挙はふたを開けてみないと分かりません。
2月8日に高市政権が与党過半数を取れば、相場付きは変わることが予想されます。財政がさらに拡大するとの懸念から日本売り(株安、債券売り〈金利上昇〉、円安)になるのか、積極財政による成長戦略に期待して、株高、金利上昇、円安になるのか注目です。
この場合、日銀が景気の好循環を反映した利上げペースによっては円安は抑制的な動きになりそうです(日銀会合は2月は開催されず、3月18~19日が選挙後初となる開催日)。
「世界10大リスク」には日本の政局は挙げられていませんが、しばらくは日本の政治材料が円相場をけん引することが予想されます。
(ハッサク)

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