税制改正大綱で未成年を対象とした「こどもNISA」の新設が予定されています。ジュニアNISAが廃止され、子ども用のNISAを求めていた方にはうれしいニュースかもしれませんが、「子どものための資産形成」をする前に知っておきたい注意点があります。


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お悩み

子どものための資産形成はどうしたらいいのだろう?

鈴木 慎一さん(仮名)・会社員・40歳男性(既婚、共働き、子どもは2人)


 鈴木さんは貯蓄が好きで家計をやりくりして、通帳残高が増えていくことを楽しみにしていました。ただ貯金をするだけではなく、資産運用も行っており、着実に資産を増やしていました。


 お金を使わないわけではありませんが、共働きであることや夫婦がともにお金がかかるような趣味もなく、郊外に住んでいるので生活の固定費も低めであることから自然とお金がたまりやすい環境の中で、無駄遣いはしないことを意識していました。


 いずれはこどもたちの将来のために使っていこうと考えていたところ、こどもNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)が新しく始まるという記事をみかけました。ちょうど親から贈与の相談を受けていたので、自分たちよりは子どもたちに渡してもらったほうが税金の面からしてもお得になるかと思っていたので、ちょうどいいタイミングだと興味を持ちました。


 ただ、子どものための資産形成をしたことはなかったのでその点が気になっていました。鈴木さんが子どものための資産形成をする前に知っておくべきことは、どんなことがあるのでしょうか?


自分たちの資産形成が第一ではあるが…

「令和8年度税制改正の大綱」によって未成年を対象とした「こどもNISA」の新設が提言されました。2024年に新しいNISAが始まってから多くの人が資産形成を始めたようですが、お客さまからは「こども用のNISAもあればいいのに…」という声を聞いていました。


 今回新設予定のこどもNISAは、2023年に廃止となった「ジュニアNISA」の代わりとも言えますが、NISAのつみたて投資枠のこども版と呼べる内容になっています。


 内容としては、投資期間は「0歳から17歳までの間」、投資可能額は「年間60万円」、非課税投資上限は「600万円」までとされており、その投資対象はつみたて投資枠の投資可能銘柄のみとなっています。


 またジュニアNISAと同様に引き出しには一定の期間や書類提出などが必要とされていますので計画的な運用が求められます。


図:こどもNISA(設立予定)とNISA(つみたて投資枠分)の比較
こどもNISAが新設されたらどうすればいい?「次世代への資産形成」三つの注意点
こどもNISA(設立予定)とNISA(つみたて投資枠分)の比較

 内容を見ると、ジュニアNISAよりも使いやすくなったという印象はありますが、大前提としてまずは自分の資産形成をすることが先のはずです。同じようにこどもNISAを利用しようとするとその違いによって思わぬ落とし穴にはまってしまう可能性もあります。


 そこで今回は、こどもNISAが新設された時のために子どもの資産形成における注意点をお伝えしたいと思います。


子どもの資産形成の注意点その1:子どもの口座での資産運用は「生前贈与」

 子どもの資産形成の原資ですが、本人が資金を出すということは考えづらいので、親か祖父母からの贈与をもとに運用することになるはずです。親の場合は、先ほど記載した通り、まずは自分たちの資産形成を優先するべきなので、基本的には祖父母からの老後につかわない余裕資金の贈与が主な投資原資となりそうです。


 ここで注意するべきことは、この投資原資は「生前贈与」にあたり、しっかりと贈与としての対応をしておく必要があるという点です。贈与契約書の作成や贈与者から本人の銀行口座への資金移動の履歴を残すなど、適切な対応が求められます。


 子どもへの資産形成というと教育費のためと言われがちですが、学資保険とはこうした違いがあります。また孫への教育費ということで、以前なら「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」を検討する方もいましたが、2026年3月31日をもって廃止される予定です。


 NISA口座の非課税というメリットを使わないともったいないと感じる人がいますが、必ずしも使わないといけないわけではありません。子どもへの贈与の必要性やその労力なども比較しつつ、NISAを使って運用するのか、他の選択の方が目的にあうのかを検討しましょう。


注意点その2:未成年口座は18歳からは成年口座へ

 こどもNISAは17歳までを対象としており、18歳になるとNISAのつみたて投資枠に統合されることになっています。17歳までの未成年口座は親権者が管理することになっていますが、18歳になり成人口座になると口座本人が管理する必要が出てきます。


 ここで問題になるのは、これまで子どもの代わりに運用をしていた親は運用に慣れていたり、ある程度の知識はあったりするはずですが、子どもからするとこれまで親がやってくれていた運用を、急に自分が管理することになります。


 すると、投資経験のない本人が投資判断をどうしたらいいのか分からないという問題や成人になったばかりの子どもに大きな金額をいきなり渡して大丈夫かという問題が懸念されます。また私の経験上だと、大切なお金であっても本人に当事者意識がないことで面倒だと放置してしまうケースもあります。


 金融教育と投資教育の大切さが少しずつ広がっていますが、まだまだ投資資産を管理できるほどの未成年はごくわずかでしょう。

そのためにも本人があまり気にせずともいずれ必要な時がきたら役立つように運用を工夫したり、少しずつお金や投資の知識を伝えていくことが大切になります。


注意点その3:投資は超長期となる可能性も想定しておく

 資産形成は長期分散投資とよく言われますが、子どもへの資産形成ならさらに長い期間での投資を行うことになります。長期分散投資といえば10年、20年という期間を目安に運用をしていきますが、子どもになると本人がまだ小さい頃からとすると20年たってもまだ社会人になっておらず、独立していないケースも考えられます。


 20年たてば成人にはなっていますが、まだ本人が親から引き継いで放置したままにするとさらに5年、10年という期間が過ぎる可能性もあります。結果的には、30年以上の超長期投資になる可能性も十分あります。


 子どもが親からの資産をあてにせずに生活ができているということは喜ばしいことですが、そのぐらいの長期投資でも問題ない投資をしておくことが望ましいでしょう。


 そのためには、基本を忠実に低コスト・分散投資が基本となります。資産は株式投資を中心にして、金額がよほど大きくなければ投資対象を分散する必要はないかもしれませんが、対象とする国は一つに絞らずに分散した方が良いかと思います。


 超長期の投資先をあてようとするのは困難です。そもそも来年、再来年と近い将来すらあてようとすることも難しいので、超長期の投資では相場環境も今とは大きくかわっていても不思議ではありません。あてるのではなく、相場が変化しようともしっかりと世界経済の波にのるという意識で投資をするべきでしょう。


こどもNISAだからといって特別な運用は必要なし

 新しい制度ができると、何が最も利益がだせるかという話や、お得な方法など少しでも良い使い方を探ろうとする話題になりやすいものです。そのこと自体は悪い話ではありませんが、投資期間が長ければ長くなるほど投資の基本に近いシンプルな投資がおすすめです。


 期間が長くなるほど、不確定要素も増えていることになりますので、できるだけ分からないことを減らして安定的な成果を出しやすい方法を選ぶべきです。その時に特別な方法を選ぶよりも、原則的な分かりやすい投資こそが王道といえるでしょう。


 月日がたつにつれていろんなやり方を取り入れたくなるのが心情ではありますが、基本に忠実な投資を続けられることこそが大切だということを忘れないようにしましょう。


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(西崎努)

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