激動の1月相場を終え、米国の介入否定やタカ派のFRB次期議長候補が要因となり、ドル高に反転。衆院選などの要因もあり2月相場は上下に振れながら円安進行が予想されますが、一方で注意すべき五つのリスクも抱えています。


米国介入否定でドル高反転に。2月相場を動かす円安要因と五つの...の画像はこちら >>

激動の1月相場終了。円安は再燃?注目すべき四つの要因

 1月があっという間に終わりました。年明け早々、トランプ政権によるベネズエラへの電撃攻撃とマドゥロ大統領の拘束、グリーンランド購入検討報道、イランへの軍事介入示唆、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長への刑事捜査、そして日本では1月通常国会召集冒頭の衆議院解散報道と予期せぬ出来事が次々と起こりました。


 これら一連の出来事に対してマーケットは比較的冷静な動きとなっていましたが、2月8日投開票の衆院選挙が決まると与野党の財政拡張路線の公約から日本の長期金利が上昇し、加えてトランプ政権がグリーンランドを巡る領有問題で欧州と対立したことが嫌気され、20日(火)米株式・金融市場はトリプル安となりました。


 この動きを沈静化するためにベッセント財務長官が動き、日米共同歩調の介入警戒感が高まり、ドル/円相場は大変動となりました。


 ベッセント財務長官は、米金利の上昇は日本の長期金利上昇の影響と述べ、日米の国債市場を沈静化するために片山さつき財務相と何らかの合意があったものと推測されます。円安によって長期金利が上昇する構図を断ち切るため、日米当局によるレートチェック(うわさ)によってドル/円は急落し、長期金利上昇も一服しました。


 このまま終われば、円安も長期金利上昇も当面沈静化することが予想されましたが、27日(火)トランプ大統領が足元のドル安進行を「素晴らしい」とドル安を容認したため一段のドル安となったことから、ベッセント財務長官は、今度は火消しに回りました。


 28日(水)CNBCとのインタビューで「米当局はいま円買い介入に動いているのか」との質問に対してベッセント財務長官は「絶対にしていない(Absolutely not)」と介入を否定した上で、「米国は常に強いドル政策を取っている」と発言しました。


 米国による円買い介入は米国がドル売りを支持することになるため、米国離れを助長するようなドル安政策は絶対に否定する必要があったからです。この発言を受けて円売り・ドル買いとなりました。


 ただ、FRBによるレートチェックについても質問されましたが、「我々は『強いドル政策』を採用しているということ以外コメントしない」と述べるにとどめました。

レートチェックを否定しなかったこともあってか、その後も152円台の円高となりましたが、米当局が実弾の為替介入を否定したため海外時間の介入警戒心は弱まることが予想されます。


 また、年始からの地政学的リスクの高まりやトランプ大統領のドル安容認発言から急騰していた金が、30日(金)トランプ大統領が次期FRB議長にウォーシュ元FRB理事を示したことをきっかけに急落したことでドル安もいったん落ち着くと思われます。


 1月の月間レンジは7円35銭(152.10~159.45円 筆者推測)でした。大変動の月となりましたが、2月も上下に振れる相場展開が予想され、再度160円をトライする可能性もありそうです。その要因として下記が考えられます。


(1)与党圧勝の可能性

 2月8日の衆院選挙で与党圧勝の可能性が高まり、選挙前に相場に織り込む形で円安が進むかもしれません。選挙後も財政拡張路線による日本株上昇と財政拡大懸念から円安は続く可能性がありそうです。高市早苗首相も「円安ホクホク」発言でみられるように、後で発言は修正されたものの内心は円安容認、あるいは円安歓迎とみた方がよいのかもしれません。


(2) ベッセント財務長官「強いドル」発言

 ベッセント財務長官がFRBの実弾介入を否定し、「強いドル」を志向すると発言したため海外時間の介入警戒感は後退することが予想されます。また、財務省の為替介入月次ベース(2025年12月29日~2026年1月28日)が実績ゼロと報告されたことから日本での実弾介入への警戒心もやや弱まることが予想されます。


 ただ、金融当局のけん制発言や日本銀行のレートチェックは続くことが予想されるため、市場に介入警戒心は残り、円安は抑制される動きになるかもしれません。しかし、1.の要因の方が勝り、円安抑制効果も一時的で円安は進む可能性がありそうです。


(3) 次期FRB議長候補ウォーシュ氏

FRBは米景気を強いと認識しており、追加利下げに慎重姿勢を維持することや、次期FRB議長候補のウォーシュ氏はタカ派的側面も注目されていることから、大幅利下げ期待が後退し、ドル高が予想されます。


(4)日銀の追加利上げ

日銀は、追加利上げに慎重姿勢を維持し、早くても4月の利上げ、その後も半年に1回程度のペースと予測されるため、利上げ期待が高まると円高にはなりますが、円高の持続性は限定的になるかもしれません。


 また、29日に公表された米財務省の半期に一度の「為替報告書」でも、前回指摘されていた日銀に追加利上げを求める表現が今回は削除されているため、円高要因である米国からの利上げ圧力はなくなることが予想されます。


2月相場:五つのリスク。162円の攻防に移れるか

 ただ、注意したい点もあります。


(1)トランプ大統領がドル安を志向しており、行き過ぎたドル高は相互関税の効果を相殺することになるため、再びドル安容認発言をしてくる可能性が予想されます。


(2)米長期金利が上昇し、米国がトリプル安に見舞われた場合、ベッセント財務長官が再び動く可能性もあるため注意したいと思います。1月のように「円安→日本の長期金利上昇→米金利上昇」と波及する構図で米金利上昇となった場合、市場の沈静化を名目に実弾の為替介入の可能性は排除できないかもしれません。


(3)日本の介入も、1月に159円台に上昇した時、すなわち、160円手前では介入は出ませんでしたが、前回の介入実績のある水準である160~162円では為替介入の警戒が高まることが予想されます。


(4)選挙で与党圧勝、財政拡大懸念から日本の長期金利が急騰した場合、株が急落し、ポジション調整から円も急騰する可能性も予想されるため注意する必要があります。


(5)米為替報告書では、日銀への追加利上げ要求の表現は削除されましたが、円安基調に関して「新政権による拡張的な財政政策」を新たな要因として挙げている点には留意したいと思います。


 日本の財政拡張による日本の長期金利上昇が米国の金利上昇に波及するなど、米国に不利益をもたらすと判断された場合は、財政拡張路線を批判してくることも予想されるため注意する必要があります。


 以上のような円安の要因と注意点が予想されますが、ドル/円相場の主戦場は160円の攻防から162円の攻防に移るかもしれません。162円を完全にブレイクすると160~165円にレンジに移ることが予想されますが、2月8日の選挙結果によって一気に進むのかどうか注目したいと思います。


(ハッサク)

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