自民党の歴史的圧勝を受けて日本株は連日急騰を続けていました。しかし、株高とは対照的にドル円は一時的な円安から予想外の円高に転じました。

その背景には、円売りポジション解消や「Buy JAPAN」の思惑、米国のドル売り材料が。これから円売りが続くのか、それとも円高に進むのか、注目です。


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自民党圧勝で予想外の円高進行へ。円売りポジションは解消?

 8日投開票の衆議院選で自民党は圧勝し、単独政党の議席数としては戦後最多の316議席を獲得しました。単独の政党が総定数(465)の3分の2(310)以上を獲得するのも戦後初めてとなりました。


 与党は参議院で過半数ではありませんが、衆院で3分の2の議席を持ったということは、参院で法案が否決されても衆院で再可決できることになります。野党の協力を得なくても予算案や法案を通せる環境となったということです。 


 この自民党の歴史的大勝利を受けて、日本株は週明け9日のご祝儀相場だけでなく、連日上昇しました。ところが、株高が進むのと対照的にドル円は、157円台後半の円安に一時動きましたが円売りは続かず、すぐに円高に転じ、翌日には154円台へ、日本の祝日の11日には152円台半ばへと円高となりました。


 ドル円は、1月30日には一時152円台後半でしたが、選挙投開票日直前の2月6日(金)は157円台前半まで円安が進んでいました。8日の選挙投開票前から自民党圧勝への期待が膨らみ、その期待で積み上がった円ショートポジションが解消されるように円高が進行したのは意外な動きでした。


 高市自民党圧勝後の円高の動きは、介入警戒感もあったと思われますが(実際に週明け9日に三村淳財務官による円安けん制発言がありました)、圧倒的勝利による安定政権に対する日本買いと見た方が相場を読みやすいかもしれません。


 市場では、自民党の圧勝により高市早苗首相が野党の要求に配慮する必要が薄れ、結果として財政規律が維持されるとの見方が浮上していますが、予想以上の圧勝で政権は成長戦略も進めやすく、「Buy JAPAN」への思惑から、円売りポジションをまずは解消したのかもしれません。


 円の買い戻しだけでなく、9日にはドル売り材料もありました。中国政府が国内銀行に対し、米国債の保有を制限するよう働きかけているとの報道からドル売りとなりました。また、大統領経済諮問委員長のハセット氏の「雇用者数が低下しても過度に懸念する必要はない」との発言を受け、11日に発表予定の米雇用統計に対する懸念からドル売りが強まりました。


 12日には152円台前半まで円高が進みましたが、この水準は1月19日の日本銀行金融政策決定会合後のレートチェック(のうわさ)で円高へ動いた水準です。この152円台前半の水準をキープしたことから、レートチェック後の円高水準から自民圧勝への期待で積み上げた円売りポジションを解消したということかもしれません。 


ここから円売りが続くのか、それとも新たな円高か

 11日の米雇用統計はまずまずの結果でした。非農業部門雇用者数は前月比+13万人と予想(7万人)を大きく上回りました。失業率は4.3%と前月から0.1%改善しました。この結果を受けて米雇用市場悪化懸念は後退し、ドル高に進みましたがドル高は限定的でした。一方、13日の米1月消費者物価指数(CPI)は前年比+2.4%と前月も予想も下回りましたが、下回ったにもかかわらず、ドル売りも限定的だったことからドル円のポジション調整も一巡したようです。


 ここからは高市政権による財政拡張路線の財政悪化懸念から中期的に円売りが続くのか、それとも安定政権によって財政規律を維持しながら成長戦略を実行し、日本の成長期待から新たな円高に進むのかどうか見極める必要があります。


 16日に発表された日本10-12月期国内総生産(GDP)実質年率は+0.2%と前期のマイナス2.6%からプラス成長に回復しましたが、予想(1.6%)を大きく下回りました。


 プラスに回復したとはいえ、この低成長だと海外投資家は、日本は成長しても緩やかな回復であって、高成長を期待するほどではないかもしれないと思うのか、選挙前の数字として無視し、高市政権の成長戦略への期待の方が勝るのか注目したいと思います。


 ちなみに米国の10-12月期GDPは20日に発表されます。予想は前期4.4%より低下し、2.8%となっていますが、予想通りであれば米国経済は好調であり、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ様子見姿勢を後押しする材料となりそうです。20日には日本の1月CPI、FRBが注目する12月の個人消費支出(PCEコア・デフレーター)も発表されるため注目です。


 予想以上に自民党が圧勝したことから、財政悪化懸念のみを材料にするだけではなく、日本の新たな成長期待も材料視される可能性が浮上してきたため、世界中の投資家や運用者はシナリオの修正に迫られている可能性があります。


 2月18日、特別国会が召集され、同日に高市首相が選出されます。そして20日には高市首相の施政方針演説が行われます。演説に対する代表質問は衆参両院で24~26日に予定されています。


 施政方針演説で「責任ある積極財政」による成長戦略はどのように示されるのか世界は注目しています。演説後に財政拡大懸念の方が勝るのか、成長期待の方が勝るのか注目したいと思います。


 今回の選挙で与野党とも公約に掲げた消費税減税については特に注目されます。

高市首相は、食料品消費税ゼロは特例公債(赤字国債)に頼らず、2年間限定ということですが、財源がどのように明示されるのか世界は注目しています。財源の裏付けが曖昧だと再び円売り圧力が強まる可能性がありそうです。市場はどのように反応するのか注目したいと思います。


 17日、国際通貨基金(IMF)は声明を発表し、日本政府に財政規律を求め、消費税減税を避けるべきと提唱しています。これが日本に対する世界の見方という点には留意しておいた方がよさそうです。


(ハッサク)

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