イラン軍事衝突、AIの台頭、株式市場の混乱…先行きの見通せない時代に突入し、投資の世界で「当たり前」とされていた常識も揺らぎつつあります。私たちは今、何を指針とするべきか。

激動の世界をポジティブに生き抜くヒントをお届けします。


軍事衝突、AIの波、変わる常識…「分散投資」だけでは足りない...の画像はこちら >>

イラン軍事衝突、崩れる「安全神話」

 3月9日の日経平均株価終値は、原油高およびイラン情勢の先行き不透明感により、前週末比2892円(5.2%)安の5万2,728円と大幅に下落しました。前週に引き続き、イラン軍事衝突の影響による株価の激しい動きが続いています。


「大きく相場が変動しても、長期投資が前提であれば、慌てず積み立てを続ければよい。下落した時に安く買うのが積み立てのメリットなのだから、下落した時に辞めるのはもったいない」


 私はいつも投資家の皆さまにそうお伝えしています。そして今もその考えは変わりません。


 しかし、「気にせず続けましょう」「不安になる必要はない」と言い切るのは無責任だと思っています。そこまで言ってしまうと、単なるセールスに過ぎません。


 とりわけ「戦争」となると、正直なところ、私も少し胸がざわつくのが事実です。2022年のロシアによるウクライナ侵攻の時もそうでした。なぜならば、長期資産形成が有効となる前提には、「資本主義が続く限り」というただし書きがつくからです。


 もちろん、今回の件が資本主義を脅かすまで至ると言っているわけではありませんが、戦争というのは基本的にこれまでの秩序を変更する手段です。もしかしたら身の回りのことが何か変わるかもしれない、これまで当たり前だったものがそうではなくなるかもしれない、といろいろな可能性に考えを巡らせます。


 実際に今回、これまでは攻撃対象にならないだろうと思われていたドバイも攻撃され、「安全神話」が崩れています。


 2022年を振り返ると、ロシアがウクライナに侵攻し、エネルギー価格と穀物価格が上昇しました。それが世界的な金利上昇と、その金利差による円安を引き起こし、日本でも一気に2022年以降インフレが進行しました。そして、それは一時的なものではなく今やあらがえない流れとして認識されています。


「いつか下がるだろう」という期待を持っている人はもはや少ないでしょう。日本で30年続いてきた、いわゆる「デフレマインド」という人々の行動や心理自体が、2022年以降すっかり変わってしまったのです。


 このように、戦争は、その影響の大小や国別の影響度は違うにしても、人々の生活や価値観を変えるトリガーとなってきました。もちろん、今回の件でこれから何が起こっていくのか、どう世界が変わっていくのか、といくら考えても、空想の域を出ません。


 本当は何が起こっているのかを知ろうとしたところで、外に出ている情報をいくら収集し分析しても、結局のところ本当の思惑というのは誰にも分かりません。終わった後で、正反対のことが判明することもあります。


 ですから、ここでは「この戦争がいつまで長引くのか」「これによって何が変わるのか」といった予測は避けますが、「今までの『当たり前』がいつか変わるかもしれない」というのは、頭の片隅に入れておいても良いと思うのです。


投資の「当たり前」も変化する可能性

 投資に立ち返ると、未来は予測できないからこそ「分散」が大事とお伝えしてきました。実際、そうするのが最も賢明であると思います。


 冒頭で書いたように、「資本主義が続く限り」、つまり人々が業績向上や株価向上に向けて改善を続ける限り、株式市場は一時的な下落はありつつも長期的に上昇を続けてきました。だからこそ、銘柄やタイミングを分散しながらこの波に長期的に資金を投じることは、現代に生きる私たちにとって非常に合理的な判断です。


 しかし、投資においても、これまで当たり前だったものがそうでなくなるかもしれない、今までの常識が少し変わってきているかもしれない、というのは、時々(本当に時々でよいと思いますが)思いをはせてもよいかもしれません。


 もちろん、資産形成自体が突然意味をなくす、という事態は全く考えていません。一方で、そのやり方については、常に最適解が変わっていく可能性があるのです。


 先ほど2022年の例を挙げましたが、この年はウクライナ侵攻による影響で株価が低迷しました。しかし、実は株式だけでなく、逆相関といわれていた債券や金(ゴールド)も、年間リターンで見ると下落していました。つまり、分散効果が全く働かなかったのです。


 2020年のコロナショックの時期にも、一時的に全ての資産が下落するという状況がありました。このような状況は、それ以前はあまり多くは見られませんでした。これまでの伝統的なセオリーを前提に、逆相関の資産を組み合わせて下落を抑制していたファンドなどは、全くその強みを発揮できませんでした。


 このように、運用のプロであっても、これまで有効に機能していた戦略が、時代の変化とともに通用しなくなってくる、ということは往々にしてあります。


 また、今年に入ってからS&P500種指数は横ばいが続き、これまでのような強い上昇は見られません。何かのきっかけで、強力な勢いを持ってきたグロース株やテック株の割高性が是正され、バリュー株が再評価されたり、米国株式が軟調な時に、新興国株式や日本株式が堅調な動きとなる、といったサイクルは常に存在しています。


 例えば、再度2022年の例を挙げると、2020年のコロナショック以降急速に回復してきた米国株式市場は、2022年のロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに大きく下落しました。


 その際、グロース株は大幅に下落する一方、バリュー株は比較的穏やかな推移となり、相対的にグロース株をアウトパフォームするという事象が起こりました。株価が熱狂的に上昇している時は、「これが永遠に続くだろう」と過信してしまいがちです。


 だからこそ、分散が重要といえます。しかし、先ほどのように分散していても全ての資産が下がる時もあります。それでも、少し待てばまた世界経済は強さを取り戻してきた…というのがこれまでの「常識」です。


激動の時代を生き抜くヒント

 この「常識」が永遠に続くのか。一つだけ言えるのは、永遠ということはないということです。


 未来から過去を振り返って、「あの時がターニングポイントだった」「18XX年から●●時代になった」と言うことはできても、最初からそこに線が引かれているわけではありません。


 100年前が全く現代の様子とは違うように、長期的に見れば、今やっていることが全く意味を成さなくなる可能性もあります。

それがより短期になれば、10年スパンで続いてきたことはより簡単に変わってしまいます。それは投資の世界でも同じことです。


 さらに、AIという巨大な波が押し寄せています。人間の働き方、生き方、何に価値を置くか、が180度変わる可能性があります。もしかすると、AIによって、それこそ資本主義の在り方が変わるかもしれません。


 人間が仕事を頑張ったところで、もはやあまり意味がなくなるかもしれないからです。先ほど、将来の予測はしないと書きましたが、今は大きな転換点のさなかなのかもしれない、と私個人的には肌で感じています。


 だからといって投資を辞めるわけではないですし、私自身もとにかく淡々と積み立てを続けています。将来のために必要な備えは、絶対にしておくべきです。


 しかし、投資以外でも、仕事や人生において、無理してやっていたり、くだらないと思いながら我慢していることがあったりするとしたら、その当たり前を見直してもいいのかもしれない、と思っています。常識が大きく動き始めている今だからこそ、「本当は、自分はこういうことをやるのが好きだったんだよな」ということに立ち返ってもよいかもしれないのです。


 そして、今この激動の時代に、そこにフォーカスすることが現代の私たちにとって、とても重要な価値になってくるのではないかと思います。


 もし今、軍事衝突の話題や、株式市場の動き、AIの台頭による仕事の変化に、不安を抱いている方がいれば、「そうであるならば、いっそのこと、自分が好きだったこと、いつかやりたいと思っていたことをしよう」と思ってみると、少しポジティブな方向に自分の人生を転換させていくことができるかもしれません。


 自分自身の未来に向けたチャレンジにお金を投資することも、立派な投資です。それが結果的に、人生トータルで見た豊かさにつながっていくかもしれません。激動の時代を、一緒にポジティブに生き抜いていきましょう!
 


(山口 佳子)

編集部おすすめ